10.男装女子とチャラ男
……第1章の山場まで話を稼がなくてはならないのに、全然良い展開が思いつきません……
(浅山 藤四郎視点)
「今日も大漁大漁~!私達の懐もホックホク~。」
「そ、そうだな……」
「そ、そうですニャンね……」
あのゴブリンメイジやゴブリンソルジャーとの戦いから元の世界換算で更に1週間後、今日も今日とて俺達はゴブリン退治に精を出していた。
そして、その帰り道……
「も~、2人とも相変わらず気まずそうだよね~。何なの?時々気まずくなったり平気になったり、本当に面倒臭いんだけど!」
「……茜、だいぶイライラしてるな……」
「まあ、アカネ様曰く"えろがぞう"?とやらが足りないとかおっしゃってましたからニャン……」
「あ~、なるほど……」
……健全な男子なら、1度はスマホやパソコンにエロ画像を保存した覚えはあるだろう。
ぶっちゃけ、俺もスマホにエロ画像を保存してた。
……だが、茜は恐らく俺の倍以上は美女のエロ画像を所有していたと断言出来る。
「……そもそも、茜が同性愛者って知ったのは茜が小学生高学年の頃、河原の橋下に捨てられてたエロ本を一緒に見たのが理由だからな。……しかも茜の奴、俺より必死に女の裸体を眺めてやがった。」
「……よく分かりませんが、十中八九いかがわしい話なのは分かりましたニャン……」
「まあ、その認識で良いぞ。……だからこそ、徹底的にエロが制限されて2週間程度経過した今はそろそろヤバいって訳だ。」
「ん?……つまり、アカネ様がヤバいという話ですニャンか?」
「ああ、ヤバい……」
「ん~?誰がヤバいって~?」
昔、甘やかす両親に代わって俺が茜にテスト勉強させるため、徹底的にエロを抜かせた事がある。
……そうして俺が進めた茜のエロ断ちが巻き起こしたのは地獄そのものだった。
「茜、お前だよ。……例の"地獄のテスト勉強"を思い出してたんだよ。」
「あ~……悲しい事件だったね。」
「エロ断ちが限界に達したお前が、理性を失って暴れただけの話だろ?……まあ、それで俺は1ヶ月入院する大怪我を負う羽目になったんだがな……」
「……いや、何があったんですニャン!?」
あの事件は思い出したくもねぇ。
……何せ、入院したせいで俺の成績が落ちたからな。
「……ナフリーちゃん、世の中には知らない方が幸せな事もあるんだよ?」
「わ、分かりましたニャン……」
世の中には知らねぇ方が幸せな事もある。
茜関連は全部これだな。
と、ここで……
「お、そこに居るのは茜チャンに藤四郎チャンじゃね?奇遇っしょ!」
「ん?……ああ、本当に茜君と藤四郎君じゃないか……久しぶりだね。」
「え?……あ、司ちゃんに正義君!久しぶり~。」
「お、司に正義か……って、何でお前等ドブ掃除してんの?」
俺達は、ドブ掃除をしている司と正義に出会った。
……とはいえ、何故か司は全く汚れていなかったが。
「……えっと……誰ですかニャン?」
「ああ、ナフリーは会うの初めてだったな。……まあ同郷の顔見知りとでも思ってくれたら良い。」
「あ、承知しましたニャン。」
当然ナフリーは知らないだろうが、あまり深く紹介する気もねぇのでこれぐらいの認識で良いだろう。
「で、話の続きなんだが……何でお前等がドブ掃除してるんだ?」
「ふふ、別におかしい事ではないだろう?ボク達はボク達なりに精進してるってだけの話さ。」
「そ~ゆう事。……俺チャン達は勇者なんだから、困ってる人を助けるのは当然っしょ!」
「……いや、でもよりにもよってお前等2人がやってると意外でしかねぇんだよな……」
てっきり、司も正義も女侍らせて好き勝手してると思っていた。
なのに、堅実にドブ掃除とか……
「ハァ……お兄ちゃんは人を色眼鏡で見過ぎだよ。」
「なっ……」
色眼鏡、か……
確かに尊大なイケメンと軽薄なチャラ男を見て、こいつ等は駄目だろうなとか思いはしたが……
「それより司ちゃん、良ければ私と夜の一時を……」
「……茜、熱でもあんのか?」
「いや、何でそんな反応されなきゃいけないの!?」
「だって、同性愛者のお前が男を口説くとかあり得ねぇだろ!?」
俺が色眼鏡に関して悩んでいると、茜が急に司を口説き始めたので急いで止めた。
……もしかして、司が【絶世の美】でも使ったか?……と思っていたのだが……
「……もしかしてお兄ちゃん、気付いてない感じ?」
「何にだ?」
「司ちゃんが女の子だって事に。」
「……ハァ?」
司が……女性!?
確かに顔も中性的で、声も低い声の女性と言われたら納得出来る高さだが……
"いやいや、そんな訳ないだろ"と俺が言おうとしたその時……
「ふむ。茜君の言う通り、ボクは女さ。」
「……マジなのか?」
司本人が、自分は女だと白状しやがった。
「ボクはこう見えても、元の世界では"100年に1人の男装女子"と呼ばれていたものさ。」
「……マジなんだな。」
俺の質問と返答が噛み合っていない気がするが、少なくとも司が女性という事は分かった。
あくまでも本人と茜の言葉を信じるなら、だが。
「さて、茜君の誘いに関してだけど、これは断らせて貰うよ。」
「えぇ~!?」
「生憎、ボクは男装趣味があるだけで、恋愛対象自体は普通に男性なのさ。」
「……なら仕方ないか~……」
茜から司への夜の誘いは、司の恋愛対象が男性だというのもあって一蹴された。
「……それじゃあ話も一通り終わった事だし、そろそろドブ掃除の続きを始めようか。」
「……ん?そういえば司、ドブ掃除してるって割にどうして全然汚れてねぇんだ?」
「ああ、これかい?……これはボクのスキル、【絶世の美】を基にした派生スキルの効果だね。」
「……ハァ?」
確か、【絶世の美】ってスキルは【魅了】ってスキルの上位互換版って話だったよな?
それがどうしたら汚れねぇって話になるんだ?
「ふむ、不思議に感じるのも無理はないだろうが、これがこの2週間でボクが辿り着いた境地だ。……名付けて【汚れ無き世界】。」
「【汚れ無き世界】?」
「そうさ。……もっとも、種明かしをすればボクに対して汚れが付かないってだけの派生スキルだけどね。」
「そ、そんな事が出来るのか……」
「……というより、ボクが"美しい"と思った事ならある程度融通が効くらしい。……他にもボクが美しいと思った軌道で相手に襲いかかる【美しき神弓】だったり、ひたすら神々しい炎を放つ【美しき神炎】という派生スキルだってあるくらいさ。」
「……もはや何でもありだな……」
……となると、もしかして俺の【補助全般】も拡張性があるのだろうか?
試してねぇから何とも言えねぇな。
「ちなみに、俺チャンの【意識改変】もなかなかに拡張性が……」
「いや、そっちはあんまり興味ねぇ。」
「ファッ!?そりゃないっしょ!」
……俺としては、この2人がなかなかヤバいスキルを持ってて不安だったが……多分、こいつ等悪用しねぇな。
それどころか、正しい事に使いそうだ。
「……それよりさっきから気になっていたのだけど……2人と一緒に居る獣人族のお嬢さんは誰かな?」
「確かに、俺チャンも気になってわ。」
……そういやナフリーについて、2人に何も説明してなかったな。
「ああ……この娘はナフリー。……俺の奴隷で、パーティーの前衛を担当してくれてるんだ。」
「前衛?……茜君も攻撃系のスキルだった筈だが?」
「茜の場合、ドロップ品も破壊しちまうから普段の金策では使えねぇんだよ。」
「そういう事~。」
「……ですニャン。」
「……そう考えたらスキルって万能じゃなくね?」
「その通りだな。」
そうして俺達は数分ほど司や正義と会話した後、解散した。
だが、俺達の再会は意外とすぐに来るのであった……
ご読了ありがとうございます。
司が女性というのは最初から考えていて、名前も中性的なものにしました。……念のために言っておくと、主人公とはくっ付きません。
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後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。