1.四人の勇者と巻き込まれた俺
なろうにおける新作、書いてみました。
ちなみに、これは完全なる趣味の産物なので、これで何かを成し遂げようとしている訳ではありません。
(浅山 藤四郎視点)
「よく来た、異世界の勇者達よ。」
「「「「「えっ?」」」」」
俺……否、俺達は知らない部屋で王様っぽい格好をした威厳ある外国人風中年男に話しかけられた。
……とはいえ、俺達と言っても俺以外で知ってる人物は1人だけ。
後は3人ほど知らない男が居るが、今はそれどころではないので後回しだ。
「……おい、これはどういう……」
ーごつん!
「いてっ!……茜、いきなり何すんだよ!?」
王みたいな格好の男に現状を聞こうとしたところ、横に居た妹の茜に頭をぶん殴られた。
「それはこっちの台詞だよ!……あの王様っぽい人、明らかに偉い人なのにお兄ちゃんったらタメ口で聞こうとするから……」
「いやでも……」
「良いから黙ってて!」
「チッ、分かったよ……」
……まあ、ここは茜に任せて俺は現状の把握に務めるとしよう。
まず、俺の名前は浅山 藤四郎で、妹の名前は浅山 茜。
ついでに俺は高卒就職1年目の19歳で、茜は高校3年生の17歳だったっけ……
……で、確かあの時は2人で買い物に出かけてて……気付いたらここに居た。
つまり、どういう事だ?
「……異世界の勇者達よ。混乱しておる所悪いが、そろそろ話を進めさせて貰うぞ。」
「は、はい!」
「うむ、理由を聞かせて欲しいね。」
「ってか、これ流行りの異世界転移じゃね!?」
王様っぽい中年男の言葉に、俺と茜を除く3人の男が反応した。
1人目は気弱そうな眼鏡をかけた黒髪の青年。
2人目は尊大不遜そうな白髪のイケメン。
そして3人目は軽薄そうな金髪のチャラ男。
3人とも年齢は高校生辺りか?
……にしても、チャラ男の言った"異世界転移"という言葉が引っかかる。
本当にそうなのか?
あんなの、フィクションの産物だろ?
そんな疑問が頭を支配した。
しかし、現実はそうも行かなかった。
「そうです。……あなた方5人は私達が異世界より呼び寄せた勇者……の筈なのです。」
突然、王様っぽい人の後ろから綺麗な外国人風の美女が現れ、俺達を異世界から呼び寄せたと語りだした。
「ゆ、勇者だなんて……僕には無理ですよ~!」
「ほう、勇者か……このボクに相応しい肩書きだね。」
「お、やっぱそんな感じ!?そしたら俺チャン、チート能力貰えちゃうパターン!?」
黒髪の青年は叫び、白髪のイケメンは静かに頷き、金髪のチャラ男はチートだ何だとはしゃいでいた。
いや、マジで異世界転移したのか!?
「おっと、まだ名を名乗っておらんかったな。儂の名はグルセル・ズンダルク・レブラトラ。ここ、ズンダルク王国の国王だ。」
「そして、私はズンダルク王国第一王女のミリセリア・ズンダルク・レブラトラです。」
国王っぽい外国人風中年男と綺麗な外国人風美女はそう言った。
それが意味する事は、中年男の方は一国の国王で、美女はその娘って事か……
「さて、それでは本題に入ろうかのう。……ミリセリア、例の物を。」
「はい、お父様。」
ミリセリア、そう名乗った女はグルセルと名乗った男の指示に従うように、俺達に対して水晶玉を掲げた。
「ミリセリア、今回召喚した異世界の勇者達……彼等が授かったスキルは何だ?」
「はい。……眼鏡をかけた御方は【図書館】、白髪の御方は【絶世の美】、金髪の御方は【意識改変】、そして兄妹の妹と思われる御方は【戦乙女】、兄と思われる御方は……スキルこそありますが、勇者のスキルではありません!」
「……どういう事だ?」
「【補助全般】……確かに凄いスキルではあるのですが、これはこの世界の者でも獲得できるスキルです……」
……この流れ、どうも俺は外れだったらしい。
しかもただの外れじゃない。
スキル自体は凄いが、異世界の勇者のみが得られるものではなく、この世界の者でも獲得できるスキルという微妙なラインのスキルだ。
「ミリセリア、何故だか分かるか?」
「恐らく、この御方は勇者ではありません。……推察するに、【戦乙女】を獲得した妹の召喚に引っ張られて共に召喚されてしまっただけの者のようです。一応、それでもスキル獲得の恩恵は得られたようですが……勇者の器ではないため、このようなスキルになったのだと……」
「何という事だ……」
つまり何だ?
俺は巻き込まれただけで勇者じゃないってか?
というか待て、これ帰れるのか?
「グルセル陛下……これ、俺や茜は帰れるのでしょうか?」
「うむ、それなのだが……」
「帰れますよ。……ただし、魔王を倒していただく必要がありますけど……」
「……お兄ちゃん、ミリセリア王女殿下は嘘ついてるっぽいよ。」
「やっぱりか……」
魔王を倒すとかいう、お約束みたいな事を言い出したが、普通に考えて国がやった勇者召喚と魔王討伐の関連性が意味不明だ。
一応、魔王を倒すまで帰さない、という意味なら通じるが、これは恐らく……
「お兄ちゃんも気付いちゃった?……これ、一方通行の召喚だね。」
「えっ!?……そんな~!」
「ほう……」
「ま、別に俺チャンはそれで構わねぇよ?」
茜が出した結論に、その他3人が反応した。
眼鏡の青年は狼狽し、白髪のイケメンは深刻そうに側頭部を抱え、金髪のチャラ男は特に気にしていない様子であった。
ちなみに、俺は今すぐ泣きたかった。
父さんと母さんにはもう会えねぇし、気になってた漫画や小説の続きも読めねぇ!
恋人や友人が居なかったのが少しでも救いになるとか、夢であって欲しいレベルの悪夢だよ!現実だけど!
「……バレてしまいましたか……」
「……本当に戻れねぇのか?」
「ええ……一応、この世界の何処かには異世界へと戻る方法が記された魔導書が有るとか無いとか言われておりますが……」
「……もう良い。話すだけ無駄だ。取り敢えず俺達を解放しろ。」
「分かりました。……では、軽く皆様のスキルの説明と、魔王討伐の依頼を……」
「嫌だ、って言っても拒否権無いんだろうな。分かったよ、聞いてやる。」
俺は自暴自棄になってたんだろう。
ミリセリアという、この国の第一王女に平気でタメ口で喋っていた。
「ありがとうございます。……ではまず、【図書館】からお話しします。」
「は、はい!」
ミリセリア第一王女殿下の言葉に、眼鏡の青年は返事をする。
「【図書館】は、この世界のありとあらゆる知識が詰まったスキルです。【図書館】と告げてから、知りたい知識について考えると、その情報が書かれた書物が出現します。なお、返却と唱えると消滅します。」
「わ、分かりました……」
……【図書館】はまあ、本当にそのまんまなスキルだった。
戦闘は無理でも、裏方や後方支援では使えそうな能力だな。
「次に【絶世の美】ですが、こちらは【魅了】の完全上位互換です。このスキルに当てられた者はスキル所持者に屈服してしまうという強力なスキルですね。使用の際はスキル名と何をして欲しいか言ってください。」
「ふむ、ボクらしいスキルと言えるね。」
……【絶世の美】はかなりヤバめのスキルだった。
いや、何それとしか言えねぇよ……
「そして【意識改変】ですが、分かりやすく言えば超強力な催眠術です。使用の際はスキル名と何をして欲しいか言ってください。」
「お、分かりやすくて助かる~!俺チャン、チート街道まっしぐらっしょ!」
……【意識改変】もなかなかにヤバいな……というかこれ、本当に大丈夫か?
この男が悪用しないという保証は無いぞ?
「最後に【戦乙女】ですが、攻撃関連なら何でも出来ます。その代わり、体力消費が激しいですが……」
「そっか~。でも、何でもは強すぎるね。」
「ちなみに【補助全般】はその名の通り、補助スキル全般が使えます。」
「ああ、そうか。」
こうして一通りスキル名を聞き終えた俺達。
だが、1つ忘れていた事がある。
「なあ、俺達まだ名乗ってないよな?」
「あ、確かに!」
「ふむ、それもそうだね。」
「じゃ、俺チャン達順番に名乗ってく?」
「じゃ、じゃあ僕から……僕は青谷 兼人っていいます……」
「ふむ……次はボクか。ボクの名は扇羽 司だよ。」
「俺チャンは金村 正義!……キラキラネームなのはご愛敬っしょ!」
「私は浅山 茜っていうの。で、お兄ちゃんが……」
「浅山 藤四郎だ。……宜しく頼む。」
……そうして俺達5人は自己紹介を済ませた。
だが、この時俺は知らなかった。
この5人が後に、『救国の5勇者』と呼ばれる事になるなんて……
ご読了ありがとうございます。
……本当に、こういう作品を難なく書けてる方って色んな意味で凄いですよね……
気が向いたらいいね、ブックマーク登録してくれるとありがたいですが、あくまでも気が向いたらで大丈夫です。
後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。