◆◇◇第五段階 補完◇◇◆
下書きが終わった次の段階です。
あまりまとまった執筆の時間が取れないため、日常生活の合間に補完(妄想)をしています。
仕事帰りの疲れている時などは頭が回らないため、あまり感情のこもった物語になりません。そんなときは設定を考えます。どんな武器を使っているか、科学技術はどのくらいか、主人公は独身か。とりとめもなく考えます。
巨大な飛行船や大ぶりな銃など、出てくるものはどうやら巨大なダンゴムシが出てくる某超有名なアニメ映画のガジェットに似ているようでした。
また、頭の中で何度も細部を確認するために再生すると飽きてくるので、そんなときはいったん引きます。カメラをひいて、登場人物からフォーカスを外し、世界感で遊びます。空が見え、台地が見え、鳥が飛んでいて人々が生活をしています。
『魔女のいなくなった世界』の舞台は地球にややよった世界観で、特に魔王が出てきたりドラマがあったりするわけではなく、地上に住む人々がそれぞれの欲望のままにあくせくと働いているような世界。そこに突如魔女が現れた感じです。
この段階でもう一度頭でストーリーを流してみました。
その時点では魔女の脅威を思い描くのを忘れていました。タイトルにある魔女がキーワードであり、魔女ルインは最初は平凡な女性として書かれている必要があるので、彼女とは別に魔女がいるような感じのする描写が必要です。下書きにはさらっと書いてありましたが、もう少し強調したいところです。
とはいえ魔女のやらかし自体には自分はあまり興味がないので、直接的な大暴れを描くのではなく、魔女によって迷惑を被っている側の描写で行こうと考えました。また、ニムトが魔女を同行させるのにちょうどいい理由が必要なので、『独身だと魔女狩部隊に入れられる。彼女になってくれ』とのセリフが浮かびました。ちょうどルイン側でそのセリフを言われたとなると、ちょっとした恋愛展開を予感させるので都合がよかったです。
◇魔女を退治する方法
順不同で状況を思いつくので展開的には先の話ですが、設定としてはニムトの世界は魔法がなさそうなのでどのように魔女を退治するか考える必要がありました。突然魔法で攻撃され、その対策をするには科学でどうにかするしかありませんが、最凶の魔女に対して、数年前にできた魔法省の技術では太刀打ちできるとも思えません。
ちょうど魔女が落ちてきた穴があるようなので、そこに落とすのが手っ取り早いだろうと考えました。もう物理的にどうにかするのが妥当かなと。そこで魔法省に抜擢されるのは、物理学やらなんやらの専門課程を履修した大学院上がりの若手省庁職員たち。若手たちをかき集めて突貫工事で省を作って、他のお偉方に押し付けられたイメージがわきました。
『今まで何を専門にしていたんだ?』『物理です』
『魔女を突き落とすって、それは魔法……なのか?』『物理です』
物理を強調したかったので、これを言わせてみたかったがためにこの若手君は出来上がりました。感想としてはあまりうまくいっていません。
◇ニムトのライバル
軍の本部にもニムトを邪魔する存在が欲しくて出来上がりました。
また、ニムトがルインを突き落とす時にそこまで命を懸ける動機が必要でした。『愛する家族のため』というのがわかりやすいのですが、最終的にルインに『おかえり』と出迎えてもらうためにはニムトに独り身で会ってもらう必要がありました。バツイチ設定でもいいですが、ルインと恋愛をにおわせたかったので彼女もいない設定です。
そこで、好きだった人が結婚してしまった設定にしました。しかもその相手がニムトのライバル。元カノが(正当に)奪われた形です。
ライバル君はニムトが完全に嫌いというよりかは、彼女を取ってしまった罪悪感、自分より優秀なニムトへの嫉妬心、ニムトが時折見せる自暴自棄に対する心配、妻の元カレという微妙な存在、そんなニムトに対して複雑な感情を持っています。
ニムト側は案外吹っ切れていて、ライバル君含めて幸せになって欲しいと素直に思っています。自暴自棄なのは自分の才能のなさにがっかりしているためです。