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第四十話 義母からの挑戦状

 

「ようこそ、お世辞が上手な小さい人。歓迎するわ」

「おおお、お、お義母様……」

「まぁまぁ。いくらお姉さんと言いたいからってそんなに噛まなくていいのよ?」


 思ってない。思ってはないが。


(え、待って。好きだと自覚したばかりなのにいきなり親子公認に!? いやいやいやちょっと早すぎるっていうかもうちょっと段階踏みたいっていうか! いやお義母様と直接お話するとか緊張しすぎて吐きそう……)


 既に国どころか種族間公認の間柄なのだが、混乱したエリィは目をぐるぐる回す。


「マザー。エリィはマザーがあまりに若々しいからいつ我を産んだのか気になってるのだ」

「あらあらまぁまぁ! 可愛いところあるじゃない、小さい人!」

「いや違いますけど……え、本当に親子なんですの?」

「違うぞ」

「違うんかーい!!」


 エリィはずっこけた。

 後ろに転びそうになったエリィの背中をふくよかな胸が受け止める。

 夜色の目が呆れ混じりにエリィを見下ろした。


「何してんのよあんたは」

「ろ、ロクちゃん……ありがとう」

「別にいいけど」


 耳を赤くしてそっぽ向くロクサーナ。

 彼女はエリィを支えながら囁いた。


「マザーはリグネ様を育てたのよ。そういう意味での母ね」

「そ、そうなんだ……」


 大きな紫紺の瞳がロクサーナを捉える。


「ロクサーナ。あなた何か変わった?」

「は? ワタシの美しさは不変ですけど?」

「ふぅん」


 マザーはロクサーナをじろじろ見た。


「……それで、あなたはなぜここに居るの?」

「そ、そりゃあ……ちが居るからだし……」

「え?」

「うっさいわね! 四大魔侯として王女を見張るためよ! 悪い!?」

「ふぅん。そっちの……子鬼ちゃんも一緒かしら?」

「わたしは主様(マスター)の護衛将軍なので」

「なるほど」


 マザーは満足げに頷いた。


「どうやら只者ではないようね、小さい人」

「こ、光栄ですわ」


 ただのメイドである。




 ◆




 場所を変えて、揺籃都市の最奥。

 魔王や四大魔侯など賓客を迎える場所にエリィたちは案内された。

 荷物などは既に部屋へと運ばれ、一同は食堂に集まる。


「あの。みんなでご飯を食べるの構わないんですけれど、あなたの体は……」

「うふふ。心配してくれなくても大丈夫よ、小さい人」


 マザーは巨大な扉をくぐってするすると食堂の中に入っていく。どうやら食堂にはマザー用の堀があり、そこに尻尾を収めて堀から上半身を出しているという状態だった。絵面がすごい。テーブルもマザーが食べるのに支障のない大きさになっており、椅子によじ登るのが一苦労だった。


「さて、早速だけど祭儀を始めましょうか」

「え。もう?」

「もちろん。さっさと終わらせるに限るわ。あとでたっぷりお話ししましょ」

「ちなみに、あの、祭儀っていうのは危ないこととか……」

「うふふ。まさか、危ないことなんてないわ」


 人のいい笑顔を浮かべてマザーは言った。


「小さい人。今からあなたには坊やを甘やかしてもらいます」

「甘やかす?」

「えぇ」


 マザー曰く。

 魔女将とは魔族全体を甘やかすママ的な存在なのだという。

 魔族最強の存在を甘やかすことができれば魔族全員を甘やかせるというわけだ。


「つまり、私が魔女将に求めるのは包容力……いわゆるバフみというやつよ!!」

「バフみ……!」


 エリィは自分の身体を見下ろし眉を顰める。

 色気を子宮に置き忘れてしまったような、子供みたいな身体。

 この身体のどこにバフみがあるというのだろう。


(え? 割とピンチでは?)


 頬に冷や汗を流したエリィは顔を上げて、


「あの、ちなみに合格できなかったら……」

「その時は、綺麗さっぱり坊やと別れてもらいます」

「……っ」

「判定は私が行いますから、そのつもりで。さぁ始めてちょうだい」


 それは、宣戦布告。

 愛する息子を人族如きにやってたまるかというマザーの敵意。

 エリィの覚悟を問う、母の祭儀が今、始まろうとしていた。


(バフみって……どうしたらいいの!?)



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