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95話 幹部会議 その7 グレート・マインド・ハック計画③



第1回 女神教 幹部会議



開催場所、参加メンバー等については、89話、まえがきを参照のこと



グレート・マインド・ハック計画 4本柱

①質・量、両面におけるメディアの買い占め。徹底した繰り返しによる刷り込み。

②ビッグデータを活用した、個人の嗜好にあわせた思考誘導。

③世界人口80億を見すえた世界伝道。

④魔法能力者が奇跡を実演することによる“本物”であることの証明。

 女神教の存在を刷り込むため、毎日、何度も繰り返し、流されるCМに、俺本人が出演するべきか、それとも、ドラ〇エのバラモスやムドーのように、オモテに立つ代役を用意し、自分は黒幕に徹するべきか、実に悩ましいところである。


 どちらにも長所と短所がある。


 黒幕に徹する場合、自分の安全性は保たれるが、何らかのアクションを起こす際に、オモテに出ている人間を介せねばならず、まどろっこしく感じることがあるかもしれない。時間もかかる。


 それに対して、自分が直接、顔を出す場合、暗殺等、何らかの形で危害を加えられるリスクは高まるが、黒幕のような回りくどさはない。


 ううむ、どちらが良いのだろう。


 個人的には、CMに出演するかどうかは別として、組織の代表者である自分は、いずれ顔を出して、意見を表明すべきだと思っている。なので、顔出し賛成寄りの意見を持っている。


「あの、ちょっと良いだろうか?」


 挙手したのは、西園寺院長だった。


「私なら、教祖の影武者を用意することができるぞ。教祖と同じくらいの年齢・身長・体型の男性信者を用意してもらえれば、そいつの顔を教祖そっくりの顔に整形してみせる」


 西園寺院長、整形手術もできるのか。何でもありだな。


 日輪くんが、あごに手を当てて、考えを巡らしながら、院長の意見に反応する。


「確かに……、影武者を何人か用意すれば、暗殺のリスクは幾分か、軽減されますね。しかし、顔出しする限りは、やはり、過去については掘り下げられますよ。どんな家族構成で、どこの出身なのか、学生時代の様子や、働いていた時の様子などは、調べられるでしょうね。人質をとられる危険性もあります」


「ちなみに教祖様は、ご両親はご健在なのですか?」


 この質問をしてきたのは、高輪警察署の警備課の係長、井出圭介(いでけいすけ)だ。


「父親は、俺が大学生の時に死んだ。母親は、俺の出身地である、大阪府のT市で、今もひとりで暮らしていると思う……。兄弟姉妹はいない」


「ええっ!! 大ちゃん教祖様、関西人だったちば? 関東の人だと思ってたっちば」


 確かに、関西人らしくないとは、よく言われる。


 再び、井出が発言する。


「それではお母様をこちらに呼び寄せて、保護しなければなりませんね」


 ううむ、母さんを呼び寄せるのか……。


 大学で関東に出てきて、就職活動に失敗、日雇いの仕事やアルバイトをいくつか転々とした。最終的に12年前、コンビニの仕事に落ち着いた。


 大学時代、就職活動がうまく行かなくなったあたりから、母親との関係は悪化している。大ゲンカをしたことも何度もあった。


 電話がかかってきたり、手紙が送られてくるのを避けるため、逃げるように引っ越しもした。


 だから、かれこれ15年以上は、母親とは連絡をとっていない。


 俺は誇大妄想狂なのだ。


 母親は、人生を諦めて、小さくまとまって、安全に生きることを俺に求めてくる。


「アンタには無理やわ。だから~にしとき」


 「アンタには無理やわ」が、母親のよく使う言葉だった。大体、後に続くのは、より安全で、手堅く、無難で、つまらない選択肢だった。


 アンタは、小さくまとまっていれば良い、と言われているような気がした。


 親としては、子の安全を願うのは、ある程度、仕方がないことなのかもしれない。


 しかし、俺にとって、母親とは『枠』を設けて、そこに自分を閉じ込めようとする存在のように見えた。


 そこらへんも関係が悪化して、音信不通になった原因のひとつのように思える。


 多分、信者を引き連れて、母親の元へ行き、宗教団体の教祖になったと話したら、保守的で、変わったことを嫌う母親のことだから、顔をしかめて、何かしらの否定的なことを言うだろう。


「俺の母親の保護は、まだしなくて良いよ。CМが流れる日程も、まだ決まっていないことだし、そんなに焦らなくていい」


 俺がCМに出演すると決まったわけでもないのに、話がそっち方向に進んでいるような気がする。


 まぁ、自分としては、CМ出演する方向で気持ちが傾いているので、一向にかまわないのだが……。


「あと言っておくが、俺には友達はいない。小中高と、たまに遊んでいたやつはいるが、大学で関東に出てからは、もう、ほとんど連絡をとることもなくなった。いわゆる、キャンパスぼっちだったので大学時代の友達もいない。俺は、こっちに来てからは、ずっと、ひとりなんだ」


「教祖様……」


 レイカが憐れむような目で俺を見る。


 いや、別に、同情してもらわなくても良い。


 昔から、人とかかわるのが苦手だった。だから、親友が欲しいと思ったことも、今までの人生で、全くと言っていいほど、なかった。俺は、もっと別のことで人生を大きく後悔している。


「いや、そんな目で見ないでくれ。俺が何を言いたいかと言うと、俺は半分、失うものは何もない、『無敵の人』みたいなものなんだよ。だから、いくら、過去を掘り下げられても、一向にかまわない」


「つまり……、教祖様は、しかるべき安全対策を講じたうえで、CMに出演される、ということで良いのですね?」


 黒羽がおそるおそる確認する。


「ああ、俺がオモテに出て、メッセージを伝えるよ」

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