表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

94/96

94話 幹部会議 その6 グレート・マインド・ハック計画②

第1回 女神教 幹部会議


開催場所、参加メンバー等については、89話、まえがきを参照のこと



グレート・マインド・ハック計画 4本柱

①質・量、両面におけるメディアの買い占め。徹底した繰り返しによる刷り込み。

②ビッグデータを活用した、個人の嗜好にあわせた思考誘導。

③世界人口80億を見すえた世界伝道。

④魔法能力者が奇跡を実演することによる“本物”であることの証明。

 テレビやネット、全ての媒体を合わせれば、おそらく週に何万回と流されるであろうCМに、俺が出演するのか? 本当に俺で良いのだろうか?


「ちょっと、待ってください、高塚局長。多くの人間の目に止まるのならば、それこそ、さっき言ったキムタカみたいなイケメンの方が良くないですか? 立っているだけでカッコイイと感じさせるような人間の方が……」


 俺の発言に、高塚局長が反応する。


「何をおっしゃるのです、教祖様!! この世に、教祖様に並ぶほどのカッコイイ人間などおりません!!」 


「大ちゃん教祖様は、キムタカの数億倍、カッコイイっちば!!」


「そうですわ。教祖様が世界一ですわ」


 ナギ、レイカと言った、会議に参加している女連中も追従する。


 やばい。これは、明らかに洗脳による弊害だ。


 こいつらは、俺の外見に対する評価が、客観的にできなくなっているのだ。


「あの……、よろしいですか?」


 雷通のCМディレクターの黒羽が、おそるおそる挙手する。


「なんですか? 黒羽さん、自由に発言してもらって良いですよ」


 俺は一応、黒羽の発言を許可する。


「ぼくの感性からすると、教祖様は確かに、少し、あか抜けないというか、スタイリッシュとは言えないようなところがあります……」


 高塚局長が、鬼のような剣幕で、黒羽を睨みつける。


「黒羽!! 貴様、教祖様に何と失礼なことを!!」


 俺があわてて、高塚局長を制する。


「いや、高塚局長、良いんです。俺は、客観的な、忌憚のない意見をもらいたい。黒羽さん、続けてください」


「確かに、教祖様には、あか抜けていないところがあるように感じます。しかし、ぼくが、こんな言い方をするのも、おこがましくて、お許しいただきたいのですが、他の誰よりも光るモノを持っておられると思うのです」


 ああ、黒羽も、ダメだったか。


「ぼくの目には、教祖様が、自分の外見に自信を持っておられないように見えます。そうではないですか?」


 確かに、黒羽の言うとおりだ。


 しかし、この会議の場で、それを素直に認めるべきかどうかが、悩ましい。俺は即答しなかった。


 押し黙っている俺の様子を見て、高塚局長が発言した。


「教祖様、もし本当に黒羽の言うように、ご自分の外見に自信をお持ちでないようでしたら、我々を信じてはいただけませんか? 教祖様がそれに該当するという意味では、決してありませんが、我々は、本来、あまり価値がない商品でも、様々な撮影技術を使って、美しく見せたり、カッコよく見せたりして、売り込むプロなのです。素材が教祖様であれば、それこそ、他のどんな商品よりもうまく売り込んで見せます!!」


 さらに黒羽も続ける。


「それに教祖様、『新しいカッコイイ』はつくられるものなのです。たとえ、今までの基準で言えば、あまりカッコよくない外見の人間でも、ザイオンス効果と言うのですが、繰り返し何度も、目にして、人柄に触れるうちに、視聴者は、その人間を好きになってくるものなのです。ぼくたちなら、教祖様を3カ月以内に、抱かれたい男ランキングの1位にする自信があります!!」


 俺なんかが、抱かれたい男ランキングの1位に!!


 抱かれたい男ランキングの集計って、年に1回くらいのペースでしか、やってなかったのではなかったか、という野暮なツッコミは一旦、脇に置いておく。


 確かに、教団の責任者は俺なわけだし、団体の意志を代表して、俺がオモテに出るのが筋なのかも知れないな。


「ちょっと、よろしいですか……」


 俺の気持ちがCМ出演に傾きかけたところで、あらたに挙手する者が現れた。


 挙手したのは、日輪くんだった。


 日輪憲明(にちりんのりあき)、20歳。東大理Ⅲを中退して、今はニートをしているらしい。


 おかっぱ頭に、空色のフレームの丸メガネをかけた、身長150cmくらいの小柄な若者だ。


 体が小さいせいか、中学生の少年のように見せる。


 俺が、彼をこの会議の参加者に選んだのは、ステータスの知力値が88と、全信者中でトップだったからである。


 女神様の知力のステータス設定だが、なかなか渋めに設定されていると俺は思っている。


 東大理Ⅲに合格した人間でも、88ということは、90台後半の知力値を持つ人間など、今の、この世に存在しているのだろうか。


 それこそ、フォン・ノイマン並みの、人類史上トップクラスの天才でないと、98とか99といった高い知力値は叩きだせないのではないかと思う。

 

「日輪くん、どうぞ」


 日輪くんが、右手で、クイッとメガネを持ち上げてから発言する。


「確かに、女神教の存在を売り込むことは必要でしょう。しかし、そのために教祖様に、前面に立っていただくのは危険ではありませんか? 顔が知られれば、暗殺されるリスクも高まるわけですし……。ボクたち、女神教が、目的を達成するためには、教祖様の能力が必要不可欠なのです。教祖様を、宣伝目的のためだけに、危険な矢面に立たせるべきではないと、ボクは愚考します」

 

 ううむ、確かに、そうなんだよな。日輪くんの言うことも一理ある。


「私も、日輪くんの意見に賛成です」


 そう言ったのは、公安調査官の日陰洋二(ひかげようじ)だ。


「さきほど、高塚局長が、おっしゃったような一大PRを行い、世間に認知されれば、必ず、女神教がどういう団体で、どこからお金が出ているのか、トップをはじめとした組織を運営している人間たちが、どういう人間で、どんな考えを持っているのか、ということは調査されます。その際、教祖様が矢面に立っていなければ、ダミーを立てて、うまく隠れきることができる可能性があります」

 

 俺が今後、活動していくことを考えた場合、2パターンの露出方法の選択肢がある。


 女神教の指導者として、オモテに立ち、自分の顔を売っていくか。


 それとも、俺自身はオモテには立たず、陰で人を操ることで、黒幕に徹しきるか。


 ううむ、俺はどちらの選択肢を選ぶべきなのだろうか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ