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93話 幹部会議 その5 グレート・マインド・ハック計画①

第1回 女神教 幹部会議


開催場所、参加メンバー等については、89話、まえがきを参照のこと

「グレート・マインド・ファック計画?」


 yourtuberのジカキンが素っ頓狂なことを言う。


「馬鹿者め!! グレート・マインド・()()()計画だ。私が立案した、かつてない規模の、人心掌握計画だ。茶化すんじゃない!!」


 雷通の高塚局長が、怒り狂って訂正する。


「そのグレート・マインド・ハック計画の概要を教えていただけますか?」


 俺は、高塚局長の発言をうながす。


「グレート・マインド・ハック計画には、大きく4つの柱があります。こちらをご覧ください」


 高塚局長が言うと、局長の隣に座っていた、雷通の黒羽洋介(くろはようすけ)がノートパソコンを操作して、ちょうど、俺の後ろにあるホワイトボードにパワーポイントの資料を映し出した。


 ちなみに黒羽だが、高塚局長の指名で、俺が最近、洗脳した男である。


 黒羽洋介、年齢は28歳。三鷹芸術大学を卒業をして、雷通に就職したCМディレクターだ。オシャレな黒い丸メガネをかけて、灰色のポンチョみたいな、ナチュラルな感じの服を着ている。芸術家風の男である。


 パワーポイントには、先ほど高塚局長が言っていた、4本の柱が箇条書きで記されていた。


①質・量、両面におけるメディアの買い占め。徹底した繰り返しによる刷り込み。

②ビッグデータを活用した、個人の嗜好にあわせた思考誘導。

③世界人口80億を見すえた世界伝道。

④魔法能力者が奇跡を実演することによる“本物”であることの証明。


「ちなみに、黒羽が今、使っているノートパソコンは古い型で、ネットワークには、つながっていないので、ご安心ください」


 そう言いながら、高塚局長が説明を始めた。


「まず、一つ目の柱は、メディアの買い占めであります。例えば、テレビで言えば、総放送時間に占める、CМ枠の長さは、全体の18%までと決められております。その枠を、女神教で可能な限り、買い占めます。1週間の放送時間を、ざっくり1日24時間として計算すると、60万4,800秒となります。そのうち、CМ枠はマックスで10万8,864秒、もちろん実際に全てを買い占めることはできませんが、仮に全て買い占めることができれば、15秒CМで7,257回、30秒CMで3,528回、週に流すことができます」


 ううむ、とにかく金にモノを言わせてCM枠を買うということだろうか。


「ここにいる皆さんは、『ゼイリブ』という映画をご存じですか?」


 会議の参加者には20代の若者も多いので、知っているという感じで、うなずいたのは参加者の半分程度だった。


 俺は『ゼイリブ』を知っている。幼少期にテレビの洋画劇場で見た記憶がある。


 アメリカが舞台の作品で、映画の中では、この世界は、既に、人間に擬態したエイリアンによって支配されており、普通の人間は、アンテナから発信される信号によって洗脳されている。主人公は、入手した、信号を解除する特殊なサングラスをかけることで、人間に擬態したエイリアンの本当の姿や、屋外の広告やテレビCМで発信されている真のメッセージが見えるようになるという話だった。


 反応を確認してから、高塚局長が話を続ける。


「私は広告マンということもあって、あの映画が好きでね。女神教がメッセージを発信するとすれば、『クソみたいな、今の世界は、間もなく終わりを迎える。ノアの方舟に乗り遅れるな』みたいなメッセージになるかな。あの映画のように、テレビでメッセージを送って、大衆に刷り込むわけです。『OBEY(従え)、OBEY(従え)』と、何度も何度も刷り込むわけですな」


 心なしか、高塚局長がウキウキし始めているように見える。


「このCМ枠買い取り作戦を、NHKを除く、民放の全系列の、全国のテレビ局で行います。ここまではテレビの話ですが、もちろん、今回のグレード・マインド・ハック計画は、テレビにとどまりません。屋外広告、電車やバスの中吊り広告、そして、ネットの広告枠も買い占めます。yourtubeや、yafooのトップページ、7chの広告スペースに、これでもかという程、女神教からの広告を表示させます。私がyourtubeで、よく見かける、内容詐欺のスマホゲーアプリのCM以上に、人々は、女神教のCМを目にすることになるでしょう」


 しかし、枠だけ買い占めても、内容がなければ、人々は入信してくれないのではないだろうか。


「ここまでは『量』の話をしてきましたが、『質』の面でも、メディアの買い占めを行います。人々は、インフルエンサーの影響を受けるものです。例えば、元7chの管理人の『たかゆき』などは、今はyourtuberやテレビのコメンテーターとして活躍していますが、彼のことを『頭が良い』と思っていて、彼の言うことなら妄信する人間が一定数います。仮に、彼に、それなりの納得できそうな理屈をつけて、女神教について説明させたうえで『女神教という宗教は、優秀で、入信しとかないと絶対に損です。ぼくも入信してます』みたいなことを言わせれば、それに釣られて入信するチョロイ奴が結構いることでしょう。そこまで極端な例ではなくても、彼の発信する情報をもとに、女神教について考えてみる人間は多いはずです。この手のインフルエンサーや、テレビや雑誌で情報発信している評論家・コメンテーターのリストを作成し、彼らを買収するか、あるいは直接、洗脳することによって、女神教に有利な情報発信を行わせます。これが『質』におけるメディアの買い占めです」


 なるほど、『たかゆき』か。確かに『たかゆき』は頭良さそうだよな。人狼ゲームが得意そうだし。俺も、雑誌の記事で『たかゆき』が「携帯電話で大手キャリアを使っていて、МVNOに切り替えない奴は馬鹿」みたいなことを言っていたのに影響を受けて、МVNОの会社に乗り換えたっけ。まぁ、あれは単純にお金の節約になるからやったのだけど。


 『たかゆき』みたいな情報発信者を、多数、女神教側に引き込むことで、信者数を増やせるかもしれないな。

 

 そう言えば、高塚局長の話を聞いていて、ひとつ気になることがあったのだ。


 俺は質問してみることにした。


「高塚局長、話を戻して、申し訳ないのですが、テレビで流すCМについて教えてください。メッセージ内容については、先ほど、局長が言っていたようなモノになると思うのですが、出演者は誰にするんですか? キムタカあたりですか?」


 こういう時に、キムラタカヤの名前を出すあたり、俺は、昭和の人間なのだなと思う。


 高塚局長が答えた。


「何をおっしゃっているのです、教祖様。CМに出演されるのは、教祖様、あなた、ご自身ですよ」


 えっ、俺なのか?

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