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85話 教祖の精液

「教祖よ、生きた魔法使いの体を、ご提供いただけたら、私は必ずや、魔法発生のメカニズムを解き明かし、教団に貢献して見せますぞ!! 期待は裏切りませぬ!!」


 西園寺(さいおんじ)院長が興奮しながら、力説している。


 なんと、暑苦しいのだろう。


「その魔法発生のメカニズムにも関係する話なのですが、俺が、ナギと性行為を行ったら、ナギが魔法を使えるようになったように思われるのですが、これについては、どう思われますか?」


 よく、30歳まで童貞だったら、魔法使いになれる、なんて冗談で言うけれど、現実は真逆だ。


 俺は、院長に質問してみた。


「うーむ、そうですな。もしかしたら、教祖の精液の中に、魔法能力の覚醒をうながす成分が含まれているのかもしれませぬ。ただ、これについては実例が天宮ナギ嬢しかいないので、まだ何とも言えませぬな。もしかしたら、元から天宮ナギ嬢に何らかの魔法の素養があったのかもしれませんし……。“交配実験”を繰り返しませんことには……」


 今夜、西園寺クリニックに来た目的の一つが、まさに、その“交配実験”なのである。


「院長先生、居住スペースの貸し出しをお願いしたときに、連絡していると思うのですが……、ここに来たのは……」


「おお、そうでしたな!! 教祖よ、射精した時に、精液の一部を採取して、これに入れていただけませんかな?」


 そう言って、キャップがついた、直径8センチくらいの、透明で細長い容器を渡された。


「わかりました。採取しておきます」


 この際だから、色々、気になっていることも、院長にぶつけてみよう。


「院長先生、俺は正直、女性信者だけでなく、男性信者の魔法使いも、人材として獲得していきたいと思っています。古い考えの人間なのかもしれませんが、男性信者の方が、女性信者より感情にムラがなく、性質的に、命令に忠実なように思えるからです……」


「ほほお……」


 院長先生が、包帯越しに、目を細めながら、俺の話を聞いている。


「言っておきますが、男色の趣味があるとか、そういう話ではないですよ。ただ、肛門や口から、俺の精液を摂取させることによって、男性信者にも、魔法能力を覚醒させることはできないかと考えているだけです」


「確かに、それは気になるところですな。教祖のおっしゃるように、精液自体に魔法の覚醒をうながす効果があるのであれば、性別関係なく、大勢の者に飲ませれば良いわけです。逆に、精子が卵子に到達し、受精して、新たな生命が発生するメカニズムに類する何かによって、魔法能力が“授かっている”のだとすれば、男性信者の覚醒は望めないでしょうな……。わかりました、それについても私の方で調べてみましょう」


 院長の方で調べてもらえるようで良かった。


 院長に話さないといけなかったことは、これくらいかな。


 ああ、そうだ、あれを忘れていた。


 俺は、女神様から課された、新しいミッションが、山菱会(さんりょうかい)の会長、岡田龍雄(おかだたつお)の洗脳であること、そして、岡田龍雄が『異世界ミニゲート』という魔法の使い手であることを、院長に伝えた。


「院長先生、どうです? 異世界ゲートをくぐることができれば、そこには、見たこともない、自然や生き物が存在する世界が広がっているんですよ。ワクワクしませんか? 研究し放題ですよ」


 院長なら、わかってくれるはずだ。


「確かに、ワクワクしますな!! なんだか……、教祖は少しだけ、“あの方”に似ていますな」


 最近はギラギラしていることが多い院長にしては珍しく、老人が過去を懐かしむ時、特有の、ほっこりした様子で話す。


「“あの方”とは、誰のことですか?」


「私の恩師、是名修一(ぜなしゅういち)少将閣下です」


 是名修一という人物については、洗脳する時に、院長の記憶の中で見たことがある。


 院長を、日本軍の研究機関にスカウトし、マッドサイエンティストへの道に誘い込んだ張本人だ。


 そんなに似ているだろうか。


「そう言えば、教祖よ。異世界の名前は“ニルランディア”と言うのでしたな……」


「そうですが……」


「どこかで聞いたことがあるような……」


 どこで“ニルランディア”の名前を聞いたのだろう?


 院長の90年超の記憶を探れば、どこで聞いたのか判明するかもしれない。しかし、なかなかに手間がかかりそうだ。


 それに、院長は、年齢が年齢なだけに、耄碌(もうろく)している可能性もある。


 結局、俺は、いつ、どこで“ニルランディア”の名前を聞いたのかを調べることはしなかった。


 院長との用事は済んだので、今度は、晴海忠(はるみただし)が入院している病室へと向かう。



 晴海忠は、外垣道重(そとがきみちしげ)を銃撃した際に、右の肩、脇腹、左脚の太ももを負傷していた。


 中でも左脚の太ももの傷がひどく、全治までに3週間程かかるというのが西園寺院長の見立てだった。


 そのため、今は患者服を着て、病室のベッドで横になっていた。


「これは教祖様、お見舞いに来てくださったのですか?」


 晴海忠が、俺の姿を見て、上半身を起こす。


 年齢は、たしか43歳だったか。


 はじめて会った時は、ホームレスのような恰好をしていたので、老けて見えていたが、ひげを剃り、清潔な恰好をしていると、年相応に見える。


「実は晴海忠さん、あなたにお願いしたいことがあって来たのです……」

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