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80話 封門委員会 その4

「この……、東京にじゃ……」


 封門委員会(ふうもんいいんかい)(おさ)大城戸老師(おおきどろうし)の話によると、この世界の侵略を(たくら)んでいる、異世界の『邪神の使徒』とやらが、この東京に送り込まれているらしい。


「老師、それで、詳しい居場所まで、特定しておられるのですか?」


 魔力や呪術が、どの程度、危険なモノなのかはわからない。しかし、居場所さえわかっているのであれば、自衛隊もしくは警察の特殊部隊を送り込んで、始末してしまえば良いのではないか?


 『邪神の使徒』と言っていたが、見た目は人間なのだろうか。もし、人外の見た目をしているのなら容赦なく射殺してしまっても構わんだろう。


 しかし、自衛隊を出動させるとなると、防衛出動になるのか? 事後にせよ、国会の承認が必要になるな。面倒なことになりそうだ。やはり、警視庁のSATとかで対応する方が良いのか。いずれにしろ、封門委員会が、この内閣総理大臣、式田丈雄(しきだたけお)の助力を求めるのであれば、それに応えることはできる。


 いや、待てよ。


 万が一、始末に失敗した場合、どうなる? 今度は、この私が、この内閣総理大臣の式田丈雄が、『邪神の使徒』とかいう、怪しい輩に命を狙われることになってしまうのではないか? それで、もし命を落としてしまうようなことがあったら、せっかく手に入れた総理の椅子が……、やはり、ここは慎重に検討をすべきでは……。


 思考の迷宮に入り込んでしまった私をよそに、老師は質問にこたえた。


「それが残念ながら、東京のどこかに強力な魔力を持った存在がいる、くらいのことしか、今の時点では、わからんのじゃ。90年代後半に、ワシらの探知専門の人間に、大幅な欠員が生じてしまってのう。というか、根絶やしにされたんじゃが……。それ以来、ワシらの索敵能力の精度は、著しく低下しておる。今は、畑違いの人間が、魔道具の力を頼りながら、なんとか索敵を行っているような状態なのじゃ。それでも、警察からの情報提供はあるし、この20年超は、比較的、平和な時代が続いておったので何とかなったのじゃが……」


 官房副長官の木田が、しみじみとした顔で、老師の話にうなづいている。


 90年代の後半に、何らかの激しい戦闘があったようだ。ノストラダムスの大予言にある、恐怖の大王でも襲来したか?


 そんな話を聞いてしまうと、ますます、失敗した時に、この私が報復に遭う可能性が高いように思えてくる。


「しかし、手掛かりはある……。総理閣下は、2日前の夜に発生した、外道会館(げどうかいかん)の大虐殺は、もちろん、ご存じですな?」


 それは、もちろん、ご存じである。


 自分たちに関係する事件を担当していた警察官や裁判官、および、その家族を、残酷な方法で殺害してきた、外道会(げどうかい)という過激なヤクザ組織の幹部たちが、東京本部の建物内で、サイコロステーキ状に切断され、皆殺しにされた事件である。幹部の護衛、本部詰めの組員、拉致されていた民間人も含めて、合計で約170人が殺害されている。


 報道管制も敷いていないので、テレビや新聞では、大々的に、この事件が報じられている。


 メディアでは、外道会に敵対する組織が、最近、(ちまた)を騒がしている『サイコロステーキ殺人鬼』を殺し屋として雇って、組織を壊滅させたのではないか、という説が有力になっているようである。


 そもそも、外道会については、会長の外垣道重(そとがきみちしげ)および、それを支持する武闘派の幹部を、電撃的に逮捕して、一網打尽にする計画の準備が、水面下で進められていた。


 そのために、警察は、親組織である山菱会(さんりょうかい)の会長、岡田龍雄(おかだたつお)とも話をつけていて、外垣逮捕後は、岡田の息のかかった、若頭の正田(しょうだ)が組織を継承し、穏健派の組織に移行する予定であった。


 狡兎死(こうとし)して走狗烹(そうくに)らる、とでも言おうか、全国制覇を達成するまでは、原動力として、超過激派の外垣が必要だったが、全国制覇が見えてきた今となっては、警察に敵対するうえ、制御が難しく、血を求めて暴走しかねない外垣のことを、会長の岡田は内心、疎ましく思っていたようである。


 ただ、この計画には、いくつか難しいところがあって、まず外道会は、本部事務所を要塞化していたうえに、武器庫にはサブマシンガン、ロケットランチャー、手りゅう弾が蓄えられていた。食料備蓄もあったようなので、無防備な一瞬を突いて、逮捕することに失敗した場合、籠城されて、ちょっとした戦争になる可能性があった。


 また、万が一、外垣を取り逃がした場合、警察庁長官、次長、警視総監といった警察上層部はもちろんのこと、陰で今回の計画を主導していた警察ОBである官房副長官の木田、そして、総理である、この私さえも命を狙われかねなかった。ここらへんは、もう、アイツラが考えることは、自分たちに敵対する大統領候補や現役の法務大臣を暗殺した、昔のコロンビアの麻薬カルテルと変わらないのだ。


 そのため、慎重にGOサインを出すタイミングを図っていたのだが、(くだん)の大虐殺によって、外垣、正田を含めた幹部は皆殺しにされてしまった。


 ちゃぶ台返しによって、お膳立ては全て無駄に終わってしまったわけである。


 まぁ、正田も含めて、外道会の構成員なんて、その名の通りの、外道な悪党でしかないので、この世から大量にいなくなってくれて良かったわけだが……。


 とにかく、何のリスクもなく、外道会は壊滅したわけで、私の慎重な待ちの姿勢が正解だったことが、期せずとも証明されたわけだ。 


「総理閣下? ワシの話を聞いておられますかな?」


「ハッ、老師、申し訳ありません。外道会のことを思い出しておりました……」


「その外道会が壊滅した、外道会館の大虐殺に、邪神の使徒が関与しておる可能性が高いのじゃ……」


 老師は言った。


 待てよ、老師の言葉を真に受けるならば、サイコロステーキ殺人鬼=邪神の使徒、ということになるのか……?

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