73話 種馬の如く
俺と性行為をしたことにより、天宮ナギは、魔法の力に目覚めたものと思われる。
ナギのステータスを見た後、俺は、自分のステータスも確認した。
魔力値の減少が気になったからだ。
右手で、対象の頭に魔力を注ぎ込んで洗脳する場合、通常2くらい、俺の魔力値が減る。
今回の行為によって、もしかしたら、ナギの増加した190pt分、俺の魔力値の方が減っているかもしれないと思ったのだ。
しかし、それは杞憂であった。
包丁ババアを洗脳した時点での、信者数は102人。
自分を除外すると、累計で101人、洗脳してきたことになるが、俺の現時点での魔力値は9万9,796ptで、ちょうど1人2pt使って、洗脳してきた計算になる。それ以上の特殊な減少はない。
ちなみに、ナギのステータスは、性行為によって、身体能力が上昇していたが、俺自身の身体能力値は上がっていなかった。
残念だ……。
上位の存在と、性行為をすれば、能力値が上がるということなのだろうか?
だとすれば、女神様と、そういうことをすればワンチャン……。
一瞬、豊満な体をよじらせながら、「アアン♡、畑大悟」と悶絶する女神様の姿を想像した。
いかん、いかん。
今のところ、何の罰も受けていないところから、リアルタイムでは、思考をトレースされてはいないようだが、後で、こんなことを妄想していたと知られれば、女神様に殺されかねない。
話題を変えよう。
そうだ、ナギの魔法だ
ナギが、使えるようになったのは、半径10m以内の“異性”を虜にするという、誘惑の魔法である。
女神様からもらったスマホで、ステータスを確認したところ、この誘惑の魔法には、色々と効果が発動するための条件があるようなので、ナギに説明してやることにした。
「すごーい!! ナギ……、女王様みたいっちば……」
説明を受けたナギが、感嘆の言葉をもらす。
確かに、ナギと、誘惑された者との関係は、少しだけ、女王バチと働きバチの関係を、彷彿とさせるものがある。
ただし、働きバチはメスだけどな……。
竹ぼうき使いの管理人は、既に洗脳しているので、あとひとり、洗脳しないといけない人間がいることを俺は思い出した。
ナギを襲撃してきた包丁ババアである。
このまま放置しておいて、今後も付きまとわれたら厄介だ。
管理人から傷害をうけたと言って、警察に駆け込まれる危険性もある。
洗脳してしまおう。
しゃがみこんで、気を失って倒れている、包丁ババアの頭に、右手を押し当てる。
記憶を読んだところ、包丁ババアの名前は、奥崎千咲というらしい。
千咲さん……、息子さんを亡くされて、哀しかったですね……。
でも、もう大丈夫ですよ。
目覚めた頃には、息子さんを失ったことに対する哀しみも、喪失感も、全てキレイサッパリなくなっています。
あなたの心にポッカリ空いた穴は、女神教が埋めて差し上げます。
これからは心安く生きていけますよ……。
俺は、心の中で、包丁ババアに語り掛ける。
そして、包丁ババアの頭から右手を離した。
「なぁ、ナギ……。お前、何人の人間を騙してきたんだ?」
ナギの記憶を見たことがあるので、おおよその想像はつくのだが、ナギを責めるためにも、あえて質問してみた。
「ナギ、人を騙してなんていないよ……。お客さんが勝手に勘違いしただけっちば……」
ナギは自分の非を認めようとしない。まぁ、そういう奴だ。
責任を負いたくない気持ち、罪を認めたくない気持ちと、自己正当化が重なって、主観が歪んでいるのだ。
「ふーん、そうか……。ただ、今回のようなことが、また発生する可能性はゼロじゃないよな……」
「それは……」
ナギが言葉に詰まる。
「引っ越しを考えないといけないかもな……」
また、処理しなければならない課題がひとつ増えた。
結構、やらないといけないことが溜まってきてるんだよな。
一度、記憶を頼りに、タスクを書き出して、リストをつくり、進捗状況をチェックしないといけないな……。
とりあえず、今はメイド女学院へ向かうことにしよう。
目を覚ました、管理人さんと、包丁ババアを帰してから、俺とナギは、メイド女学院へ向けて、歩き始めた。
「教祖様、お帰りなさいませ」
相変わらず、吉松店長が、メイドのような口調で俺を迎えてくれる。
そのまま、店長、ナギと一緒に奥の事務所スペースに入る。
俺は、店長にすすめられるがまま、OAイスに腰かけた。
改めて、事務所の様子を眺めまわしてみると、色々と気になってくるところがある。
組織が大きくなってきたら、この事務所だけでは狭すぎるよな。会議できる人数も限られているし……。
できれば大きな会議室も欲しいし、自分の執務室も持ちたい。
これも、ToDoリストに追加しておかないとな……。
「吉松店長、実は重要な発見があったんですよ」
「えっ、重要な発見ですかい? それはどんな……」
吉松店長が、興味津々といった態度で質問してくれる。
「実はナギが、魔法を使えるようになったんです。どうやら、俺と、性行為をすると魔法の能力が開花するようなんです……」
「本当ですかい、教祖様!! そいつは、すげえや!!」
「なので、ムチムチ猫耳メイド女学院の他の女の子達でも、同じことが起こるか試してみたいんです……」
「それもそうですね!! さっそく手配しましょう!!」
すぐに動き出そうとしてくれたが、その前に、色々と伝えておかなければいけないことがある。
「あっ、店長、待ってください。人数ですが、朝に2人、夜に2人で、セッティングをお願いします」
洗脳した、メイド女学院のデリヘル嬢は、ナギを含めて25人だ。
1日2人だと、12日間も、かかることになる。
俺には、切実なタイムリミットがあるのだ。それでは遅すぎる。
新しい魔法使いの戦力が手に入るのならば、少しでも早い方が良い。
「えっ、教祖様……、1日にそんなに相手にして、大丈夫なんですかい? 他に、教祖としてのお仕事もあるのに……」
「正直、20代の性欲がみなぎっていた頃なら、まだしも、この年のおっさんになってから、1日4人はきついです」
「それなら、教祖様……」
「吉松店長……、これは『魔法使いガチャ』なんですよ。少しでも早く、多くのガチャを回したい。もしスーパーレアで、超優良な魔法使いが出たら、一気に、今後の展開が変わってしまうんです……」
例えば……、言葉を発したら、その言葉が現実になる魔法使いとかがいたら、それだけで全てのミッションがクリアできてしまう。まぁ、そんな魔法使いはいないと思うし、いたら、そいつは神に近しい存在だと思うが……。
「ちょっと、専門用語が多すぎて、教祖様のおっしゃっていることが、細かいところまでは正確にわかりませんが、おおよその内容は理解いたしました」
「これからは女性信者の獲得も考えなければいけませんね。正直、好みのタイプではない女性と、そういうことをするのは苦痛なので、できれば好みのタイプの女性を拉致してきていただきたいです。どんな女性がタイプなのかは、後で伝えますので……」
我ながら、見下げ果てたクズになったものだなと思う。
「あと、スケジューリングや、女の子のセッティングは、宦官のセイヤにやらせてください。そういうのは宦官の役目だと思いますから……」
こんなに早く宦官の出番が回ってくるとは思わなかった。
「わかりました。それもすぐ手配いたします!!」
吉松店長がテキパキと答える。しかし、その直後、おずおずと質問をしてきた。
「あの……、教祖様、ひとつ質問をさせていただいて良いですか? 宦官のセイヤですが、あいつのアソコを切り取る必要って、あったんですかい? 女神教の信者は皆、教祖様に心服しておりやす。アイツのあそこを切り取って、宦官などという役職を設けずとも、他の信者で十分にその役目を果たせると思うのですが……」
バレたか……。そうなんだよな。信者は絶対服従なので、女に手を出す信者のことなど、最初から心配する必要なんてないのだ。
本音を言うと、聖哉のアソコが大きくて、切り取ったら面白そうだと思ったから、切っただけなんだよな。
聖哉、クズだし……、酷い目に合わせたかっただけなのだ。
そこは、女神様からダメ出しされたポイントでもある。
俺は苦笑いをするしかなかった。




