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71話 包丁ババアvs竹ぼうき管理人

「大丈夫ですか? ナギ様……」


 牛刀包丁を持った、中年女に襲われているナギを助けたのは、マンションの管理人だった。


 管理人は、中年女の牛刀包丁を、竹ぼうきで受け止めつつ、ナギに心配の視線を送る。


「何だよ、お前は!! 私は息子の仇を討つんだよ!! 邪魔をすんじゃねぇぞ、クソジジイが!!」


 そう叫んでいる中年女も、髪が白いクソババアなのだが……。


 そんなツッコミを入れたら、矛先がこっちに向きかねないので、黙っておくことにした。


「良いから、死ねっ!!」


 そう叫びながら、中年女は、尻もちをついているナギを目がけて、何度も何度も、逆手に持った牛刀包丁を、振り下ろそうとする。


 しかし、そのことごとくが、管理人の巧みな竹ぼうき(さば)きによって、防がれてしまう。


 即席のアイテムで対応するところが、ちょっとだけ、ジャッキーチェンっぽい。


 だんだん、管理人が格好良く、見えてきた。


「畜生!! 何で邪魔すんだよ!! 私のやっていることは正しいのに!! 正義なのに!! 私に、そのクソ女を殺させろよ!!」


「な、ナギは……、何も悪くないっちば……」


 尻もちをついたまま、ナギが、怯えた表情で言う。


 ナギを洗脳する時に、その時点までの記憶を見ている。


 ナギは、家族が重い病気にかかって、多額の手術代がいるとか言って、何人かの客から、お金を搾り上げていた。


 確か、中には、生命保険を解約させられたり、親から借金させられた客もいたはずだ……。


 彼らは、お金がなくなったら、用済みとばかりにポイッと捨てられていたっけ……。


 包丁ババアが言う“ゆずるちゃん”というのは、おそらく包丁ババアの息子であり、骨の髄まで、ナギにしゃぶりつくされた客のひとりだろう。


 ババアの発言から推測するに、自殺でもしたのだろうな。


 のぼせあがった“ゆずる”とかいう男も悪いが、恋愛経験のない、モテナイ男の弱みにつけこんで、金を巻き上げた、ナギも大概、悪人だと思う。「悪くないっちば」も何もないものだ……。


「何も悪くないだとぉぉ!! ふざけるなぁぁ!!」

 

 ただでさえ、鬼の形相をしていた包丁ババアは、沸騰して、顔が真っ赤になり、今にも爆発しそうだ。


 これ、血圧が上がりすぎて、ババア、卒倒するんじゃないか?


 冷静に考えたら、いくら息子がバカだったとはいえ、ババア本人は、大事な息子を失った、かわいそうな被害者なんだよな……。


 心情的に、ちょっとだけババアの肩を持っている俺がいた。


「うおおおおおおおおおおおおお!!」


 包丁ババアは、もう自分の怒りをどう処理すれば良いのか、わからなくなってしまったのだろう。


 勢いに任せて、大声を出しながら、体全体で、ナギに覆いかぶさろうとしてきた。


 しかし、その瞬間、管理人が、素早く腰をかがめて、まるで大きなスコップで、土を掘る時のような動作で、竹ぼうきを振るった。


 一旦、穂先を下に向けたうえで、その反動を利用して、包丁ババアのみぞおちに、強烈な竹ぼうきによるアッパーカットをくらわしたのだ。


 強烈な一突きをくらって、包丁ババアの体は宙に浮き、後方3mのところまで吹っ飛んだ。


 そのまま、地面に頭を打ち、気を失う。


 大丈夫か、包丁ババア? 死んでないか?


 管理人が、いまだ尻もちをついたままのナギに、やさしく手を差し伸べる。


「大丈夫ですか、ナギ様? お怪我はありませんか?」


「あ、ありがとうっちば……」


 ナギが答えながら、管理人の手をとって、起き上がる。


「なぁ、ナギ、お前、そんなに、管理人さんと仲が良かったっけ?」


 俺は、率直な疑問を口にした。


「そんなことないっちば……」


 ナギが、ふくれた、不満そうな顔で返事をする。


「どうしたんだよ? そんな顔して……。何か腹が立つことでも、あるのか?」


(だい)ちゃん教祖様は、ナギが殺されそうだったのに、何もしてくれなかったちば……」


 ナギが腹を立てるのも、無理はないか。


「うーん、すまない、ナギ。俺は、過去にお前がどんなことをしてきたのかを知ってるから、助けようという気になれなかった……」


 素直に答えることにした。


「ひ、ひどいっちば……、ナギ、何も悪くないのに……、あんな、怖い想いまでしたのに……」


 ナギが、両手で顔を隠して、オロオロと嗚咽しはじめた。


 おお、おお、なんかウソ泣きが始まったぞ。


 怖かったとか言っている割には、途中まで、冷静に包丁ババアの攻撃を回避していたけどな……。


「貴様!! ナギ様を泣かせるとは……、許せん!!」


 そう言って、管理人は、竹ぼうきを、地面に捨てて、両手で、俺の胸倉をつかみかかってきた。


「か、管理人さん、待って欲しいっちば……、そこまでしなくて良いっちば……」


 ナギが、慌てて、取りなそうとする。


 さっきから疑問に思っていたのだけど、なぜ、この管理人は、ここまでナギに肩入れするのだろうか。


 怒りに駆られた、管理人の顔を眺めているうちに、俺は、あることに気付いた。


 管理人の両方の黒目に、まるで加工写真のような、♡マークが入っていたのだ……。

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