69話 晴海忠のステータス
女神様からのダメ出しの電話が終わったので、俺は一旦、稲田さんの運転するハイエースに乗って、寝所にしているナギのマンションに帰ることにした。
途中、西園寺内科クリニックに立ち寄り、西園寺院長に、晴海忠の治療をお願いした。
晴海忠が、魔法使いであることを伝えると、院長は俄然、興味を持ち始め、例によって、どういうメカニズムで魔法が発生しているのか、解剖して調べさせて欲しいと言ってきた。
俺は、初めて獲得した魔法使いの信者であるし、絶対に解剖は許さないと、院長に厳しく言っておいた。
西園寺クリニックを出て、ナギのマンションに向かう車中で、俺は女神スマホを使って、晴海忠のステータスを確認してみた。
晴海忠のステータスは以下の通りであった。
信者No.00000100
名前:晴海 忠
年齢:43
職業:ヒットマン、大日本正忠団の元副団長、ホームレス
知力:61
体力:72
腕力:70
耐久力:75
俊敏性:70
外見:48
人間的魅力:60
経済力:収入なし、貯金0円(無一文)
魔力:130pt
魔法:ステルス(隠密)
体と所持品が透明化し、音や体臭も消える。触覚以外では存在を知覚することが不可能になる。
特技:狙撃、ステルス魔法を使った盗み
大きな目標として、信者の魔力値の総合計1,000万ptを目指さなければならない。
女神様の話によると、一般的な人間の魔力値が5~10ptらしい。
一般人だけで、目標を達成しようと思ったら、100万~200万人の信者が必要になる。
そのため、俺は魔法使いの魔力値に期待していた。
女神様から分けてもらった、俺の魔力値が約10万ptである。
俺ほどではないにしても、仮に、俺の魔力値の10分の1である、1万ptでも、晴海忠が魔力値として持っていれば、約1,000人、魔法使いを、かき集めれば、目標を達成できることになる。
随分と、目標達成へのハードルがさがるのだ。
しかし、俺の期待は裏切られた。
晴海忠の魔力値は130ptだった。
一般人の13倍~26倍くらいの魔力しか持っていなかった。
これには、ガッカリさせられた。
あと、晴海忠は、腕力・体力・俊敏性・耐久力の能力値が、いずれも70台で、そこそこ高いようである。
一般人よりは、腕っぷしも強く、体力や、体の耐久力もあるが、プロの格闘家や軍人には劣るという感じだろうか。
曹操のような人材コレクターを、目指したい俺としては、今後は、ステータス値が、80や90を超えるような、レアな有能武将をもっと増やしていきたいところである。
「教祖様、ナギちゃんのマンションに到着しました」
運転席の稲田さんが、俺に声をかける。
晴海忠のステータスを評価しているうちに、どうやら、車が目的地に着いたようである。
「稲田さん、ありがとうございました」
ハイエースからおりて、ナギの部屋に向かう。
マンションの真ん前で降ろされたので、あとはロビーから部屋までの移動だけである。
移動距離が短いとはいえ、今の俺は、たったひとりで行動しており、とても無防備な状態だ。
護衛をつけるべきなのだろうか。
なんか、それも目立ちそうな気がするが……。
ナギからもらったスペアキーを使い、部屋のドアを開ける。
「大ちゃん教祖様、お帰りなさいっち♡」
そこにいたのは、丈の短いスカートの、黒いメイド服に身を包んだナギだった。
頭には、猫耳もつけている。
ああ、そう言えば、これが、ムチムチ猫耳メイド女学院で、サービスを行う時の正装だったな。
例によって「なんでメイド服?」と言いそうになったが、俺がメイド服で迎えるように命令したのだった。
ナギは相変わらず、元気で明るい。今は、もう深夜の1時台なのだが……。
「ああ、帰ったよ……」
俺の声には疲れが滲んでいた。
身体的な疲れより、精神的な負担が大きい。
人間爆弾にされたことは、あまり考えないようにしようと思っている。
しかし、それでも、ふとした瞬間には思い出すし、その度に、気持ちが重くなる。
さらに深く考えると、心臓をギュッと掴まれるような感覚に襲われる
プロジェクトを成功させれば、爆死は免れるのだ。
失敗したら、どうなるかということを想像するのは時間の無駄でしかない。
それはわかっているのだが……。
「大ちゃん教祖様、どうしたと? 元気なさそうっちば」
ナギが心配して聞いてくる。
俺は黙って、ナギを抱き寄せた。
ナギの背中に手を回し、ギュッと抱きしめる。
ああ、柔らかい。そして、肌のキメが細かく、良い匂いがする。
「大ちゃん教祖様……?」
「なぁ、ナギちん……、今はとにかく、俺を慰めてくれよ……」
ナギのことを「ナギちん」などと、呼んだのは初めてのことだ。
俺は何を求めているのだろうか。
癒し? 安心感?
それとも、気持ち良さ?




