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61話 生存者の正体

 サイコロステーキ殺人鬼は、建物の中にいた、ほぼ全員を殺害して、外道会館(げどうかいかん)を去っていった。


 建物の外側には、晴海忠(はるみただし)を見張るために、外道会館に付けていた信者と、あと1人、午前にサイコロステーキ殺人鬼を見失ったと、報告してきた信者が合流していて、合計2人が待機しているはずだ。


 一度、失敗した人間ではあるのだが、午前に報告してきた信者に、引き続き、サイコロステーキ殺人鬼の見張りを続けるように命令する。


 サイコロステーキ殺人鬼が、どういう条件で、殺す人間を判断しているのかはわからないが、この信者には、かなり危険な任務を与えてしまっているな、と思う。


 俺の想像が正しいなら、外道会館の敷地内は、地獄絵図となっているはずだ。


 残った、晴海忠を担当する信者に、なるべく現場を荒らさないように注意しながら、外道会館内の様子を報告するよう指示する。


 晴海忠の見張りを担当している信者は、後藤(ごとう)という名前の、今日が非番の男性警官だ。年齢は35歳、職業柄、ある程度は悲惨な状況を目にする覚悟ができているずなのだが、それでも立ちすくんでしまったようだ。


「きょ、教祖様……、あたり一面、血の海です。あと、細切れにされた人間の死体が、あちこちに落ちています……」


 後藤の声は震え、緊張していた。


 後藤はゲートをくぐって、外道会館の敷地内に足を踏み入れようとしたが、そこで邪魔が入った。


 魔力探知MAP上で、5つの光点の集まりが2グループ、急スピードで外道会館の方に近付いてくるのが見えたのだ。


 5人乗りの車が2台、接近してきている。


 外道会(げどうかい)の構成員が、殺される前に、警察か、もしくは親組織である山菱会(さんりょうかい)に連絡したのだろう。


 おそらく、後者だろうな。


 後藤が見つかって拉致でもされたら、厄介なことになる。


 俺は、急いで、後藤にゲートから離れるように伝えた。


 そのうえで、気づかれないくらい離れた場所まで行き、そこから、外道会館に来る奴らの様子を注意深く観察するように指示した。


 やがて、2グループの光点が、ゲートの真ん前で止まった。


 車から降りたと思わしき、10個の光点は、少しだけゲートのあたりで立ち止まっていた。


 しかし、すぐに気を取り直したらしく、3人・3人・4人の、3グループに分かれて、外道会館の中を調べ始めた。


 4人組のグループは、例の生存者がいる、厨房らしきスペースへと入っていった。


 4人組は、すぐに生存者を見つけると、とり囲んで、車まで連行していった。


 一方、残りの2グループは、5分くらいかけて、駆け足で、会館内の部屋をチェックして回った。


 全ての部屋をチェックし終えると、2グループも車に戻っていった。


 車が到着してから去るまで、合計で5、6分くらいの出来事だった。


 2台の車は、再び、来た時と同じくらいのスピードで、外道会館を離れていった。


 俺は、車で走り去って行った奴らが、これからどこに移動するのかを知りたいと思ったので、魔力探知MAPで、10人のうちの1人の光点に“山菱会のヤクザ?”というメモを、連行された生存者らしき光点に“外道会館の生存者”というメモを書き入れた。


 そして、電話で後藤に報告をもとめた。


「後藤さん、さっき外道会館に来た奴らは、どんな外見をしていて、どんな様子でしたか? あと、連行されて車に乗せられた人がいると思いますが、その人の特徴も教えてください」


「見るからにガラの悪い、ヤクザみたいな連中でした。かなり殺気立っているようでしたね。山菱会の人間だと考えて間違えないでしょう。あと、奴らに連行されたのは、血まみれのコックでした」


「血まみれのコック?」


「はい、コックの服装をしていました。あと、日本人ではなさそうでしたね。メキシコとか、中南米系の人間のように見えました。メキシコ系アメリカ人の可能性もありますが……」


 中南米系のコックか。なぜ、彼はサイコロステーキ殺人鬼に殺されなかったのだろうか。


 ここにサイコロステーキ殺人鬼と戦う際のヒントがあるのだろうか。


 うーん、考えてもわからない。


「あの、教祖様……。奴らが乗ってきた、車の車種や、ナンバープレートの番号を覚えたのですが、お伝えしても良いですか?」


 警官の信者だけあって、こういうところはキッチリしている。


「ありがとうございます。車のカラー、車種、ナンバープレートについては、あとでメッセンジャーアプリで送ってください」


「かしこまりました」


 ヤクザたちも立ち去ったことだし、後藤さんには、このまま惨劇の起こった会館に立ち入ってもらおうかと思ったが、またもや、邪魔が入った。


 今度は、車2台では済まない。


 様々な方向から、何台もの車が外道会館の方に近付いてきていた。


 後藤と会話をしている電話越しにも、サイレンの音が聞こえる。


 どうやら外道会の構成員は、パトカーや救急車も呼んでいたようだ。


 後藤さんには、晴海忠の回収をお願いしたかったのだが、この様子だと、難しそうだな。


 透明人間を背負って、歩いている人間がいたら、明らかに怪しいものな。


 後藤さんは、非番の警察官なので、たまたま、その場に居合わせたという体裁にして、紛れ込ませることも考えたが、悪い意味で目立ちそうなので、やめておいた。


 急いで、その場から離れてもらうことにする。





 それから2時間後、ずっと停止していて、気を失っていると思われた、晴海忠の光点が動き出した。動きが止まる直前と変わらず、移動速度はおそい。おそらく負傷していてヘロヘロなのだろう。


 これは晴海忠を洗脳するチャンスだと思った。

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