51話 外垣道重、登場
午後3時、外道会館の中から、わらわらと100名近くの外道会の構成員が出てきた。
どうやら、会長である外垣道重の、出迎えを行うようだ。
100名程度の構成員たちは、まるで卒業式の花道のように、建物の入り口付近の、外垣が通るであろうルートの左右、両サイドに分かれて待機している。
3次団体の組長の車の往来があったりして、騒がしかったゲート付近は、今や、水を打ったように静まり返り、張り詰めた緊張感が、その場を支配していた。
やがて、開かれた鉄製のゲートを通って、外垣の車列が、外道会館の敷地内に入ってきた。
5台の車が、建物の入口近くに横付けされる。
レクサスだろうか、特殊な防弾装甲がほどこされているであろう高級車が3台、その3台をはさむように護衛を乗せているであろうベンツが前後に1台ずつの、合計5台の車が並んでいる。
スモークフィルムが貼られているので、3台の防弾装甲の車のうち、どの車両に外垣が乗っているのかは、降りてくる瞬間までわからない。
今回は、3台のうち、ど真ん中の車両に乗っていたようだ。
運転手が降りてきて、後部座席の分厚いドアを、うやうやしく開ける。
待機していた約100人の構成員が一斉に、頭を下げた。
中から、年齢は40代後半くらい、身長が2mもあろうかという、両腕の筋肉が盛り上がり、逆三角形の体型をした巨人がおりてきた。
外道会会長、外垣道重だ。
服装は、上に“VERY HAPPY”と、書かれた薄ピンク色のランニングTシャツ、下は傷の入ったデニムの長ズボンという、極めてラフな格好をしている。
両腕には、それぞれ3つ4つ、ドクロの入れ墨が入っていた。
四角形のごつごつした顔をしており、顔の右半分、眉毛の上から目の下にかけて、入れ墨の模様が入っている。
目は、ギョロっとしていて大きく、迫力がある。
口は、加工しているのか、先端がとがったギザギザした歯が並んでいて、まるでピラニアのようだ。
髪は、前髪が後退しており、おでこが広くなっているが、後ろ側の髪はふさふさで、金色に染めた髪が背中のあたりまで伸びていた。
金色の長い後ろ髪のせいで、パッと見た外見の印象は、悪役プロレスラーに近い。
しかし、仕事として役を演じている、それとは違って、実際に、何人もの人間を殺しているであろう、野蛮さと禍々しさを、その男は感じさせた。
黒スーツを着て、小さな盾を持った10人の護衛が、いそいで外垣の周りを取り囲む
護衛も、身長2m越えの大男ばかりだ。かなり威圧感をあたえる一団である。
50代前半、アゴヒゲを生やして、黒スーツを着た、出迎えをしている構成員の代表者であろう男が、一歩前に出て、外垣に話しかける。
「会長、来られるのをお待ちしておりました」
「おお、おお、ショウちゃんやないか。今回は、宴の準備、ご苦労やったな。そんで、アレの準備はできてるんやろうな? ワシは、もう年1回のアレだけが楽しみなんや」
「それは、もちろんでございます。イキの良いのを、とりそろえております」
アゴヒゲが、外垣に対して、下卑た笑みを返す。
「ギシシシシッ、そうか、そうか、そりゃ良いわ。でかしたぞ、ショウちゃん」
外垣は、口元からギザギザの尖った歯が見える、独特の笑みを浮かべながら、ショウちゃんと呼ばれる、アゴヒゲ男の肩をバンバンッと叩いた。
「ほな、行こうか」
そう言うと、外垣は、護衛、ヒゲ男と連れ立って、構成員がつくった花道のど真ん中を歩き、建物の中へと入っていった。
その間、構成員たちは、全員、深く頭を下げたままであった。
オレは、透明ステルス化して、外垣を射殺するチャンスをうかがっていたが、残念ながら、車から降りて、建物に入るまでのタイミングでは、ガードが厳重すぎて、奴を殺ることはできなかった。
外垣たちが中に入ってから、構成員たちがゾロゾロと外道会館の建物内に戻っていったのだが、そのタイミングで、人の群れに紛れ込んで、建物内に侵入することはできた。
おそらく、最大のチャンスは、食事会の最中に訪れるだろう。その機会を逃さないようにしなければならない。
食事会が開始する午後5時まで、まだ時間がある。
すでに何度か下見はしているが、最終の、脱出経路の確認の意味も込めて、もう一度、透明ステルス化した状態で、会館内を探索することにした。
食事会は、大ホールと呼ばれている宴会場で行われる。
その大ホールの、すぐ近くに、調理場があるのだが、オレが、そこを通りかかった時、コックの恰好をした中南米系の男性が、走って逃げ出そうとしているのが見えた。
「モウ、イヤダ!! ワタシ、コンナコト、シタクナイ!! コレハ、殺人ダヨ!!」
コックと思わしき男性は叫んでいた。




