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50話 外道の宴

 山菱会(さんりょうかい)のナンバー2にして、外道会(げどうかい)の会長、外垣道重(そとがきみちしげ)を暗殺するチャンスを待って、透明ステルス化しながら、外道会の東京事務所に張り込みをすること数日間、思いのほか早く、チャンスはやってきた。


「会長、今年はJKを、ご所望だとよ……」


「確か、去年はナースじゃなかったっけ? 本家の大親分からは、警戒を強めるよう指示が出ているのに、例年通り“食事会”を開くって言うんだから……、本当、会長の酔狂には参るよな……」


「まぁ、バカなJKなら、高額の報酬をエサにして、簡単に釣れるだろうし、去年よりは、調()()担当が楽で良いんじゃないか……。それに、うまいJKの味は、一度、味わったら、忘れられんぞ」


 東京事務所に出入りしている下っ端の構成員が、このような会話をしているのを耳にしたのだ。 


 さらに耳を傾けていると、より詳しい情報が得られた。


 どうやら、外垣は毎年1回、外道会の幹部を集めて、東京事務所内の宴会用スペースで、コンパニオンなんかを呼んだ“食事会”を開催しているらしく、それを今年も行うつもりでいるようだ。


 外道会は、山菱会の2次団体ではあるが、単体でも約3,000人の構成員を抱えている。それだけで大規模な指定暴力団の1組織に匹敵するほどの大所帯だ。


 “食事会”もさぞや盛大なモノになるであろうし、それだけ、人とモノの出入りも、激しくなることが予想される。


 これは潜入のチャンスだ。この機会を絶対に逃すまい、とオレは思った。





 それから5日間が経過し、外道会の東京事務所、外道会館で“食事会”が開催される日がやってきた。


 “食事会”が始まるのは、午後5時からだ。


 それまで、外道会の幹部どもは、麻雀やビリヤードといったレクリエーションをしたり、会談や談話したりして、時間をつぶす。


 外道会系の3次団体の数は20を超える。


 午前中は、1時間に3、4台のペースで、ベンツやセンチュリーといった高級車が次々と、丈夫な鉄製のゲートをくぐって、外道会館の敷地内に乗りつけてくる。


 当番の組員が、ゲートの前に立っていて、どこの3次団体の組長が来たのかを確認するわけだが、ある1台のベンツが中に入ってきた際に、透明ステルス化しているオレも、一緒に紛れ込んだ。


 ゲートの中に入るところまでは、何度も成功している。正直、ここまでは、まだ大したことはない。


 ベンツの後部座席のドアが開くと、中から降りてきたのは、オレが、よく知っている男だった。


 着ているスーツは高級だが、おどおどしていて、ネズミのような顔をした小柄な男、百田秀秋(ももたひであき)だ。


 オレは“裏切り者の百田”と呼んでいる。


 百田秀秋は、もともと、オレと兄の組織、大日本(だいにほん)正忠団(せいちゅうだん)の幹部だった男だ。


 百田は、山菱会の切り崩しが始まると、真っ先に構成員25名の自らの組織、百田忠尽会(ももたちゅうじんかい)を引き連れて、山菱側に寝返った。


 “百田忠尽会”、お前らのどこに“忠”誠心があって、誰に“尽”くすというのか? ふざけた組織名である。


 どうやら今は外道会系の、山菱会の3次団体におさまっているらしい。


 本来、4次団体くらいでも良さそうなものだが、おそらく、正忠団の情報を積極的にチンコロし、正忠団(せいちゅうだん)狩りの実行部隊も務めた論功行賞だろう。


 あと、百田忠尽会の後も、山菱会を恐れて、正忠団を裏切った者が続出したが、百田忠尽会が、そいつらの受け皿になったというのも大きいのかもしれない。


 百田は、新参者とあって、他の組長たちに、やたらとペコペコ頭を下げている。しかし、外道会の組長たちも、百田が裏切り者であることを、よく知っているようで、見下すような態度だ。


 哀れな男だ。


 奴の顔を見た途端、“裏切り者の百田”を始末してやろうかという気持ちが一瞬、起こった。しかし、オレが狙う獲物は、もっと大物だ。百田ごとき小物のために、計画を台無しにするわけにはいかない、と思いとどまった。


 オレは、そのまま駐車スペースで待機して、様子を見ることにした。


 ハイエースが1台やってきて、中から、茶髪のチャラい男がおりてきた。


 チャラ男に続いて、4人の制服を着た女子高生たちも車をおりる。


 2人は同じ制服を着ていたが、残りの2人は、それぞれ種類の違う制服を着ている。


 2人は、黒いワンピースに、黒いボレロスーツを羽織ったお嬢様風の制服、残りの1人は、少し古臭い感じのセーラー服、最後の1人はブレザーを着ていた。


 そんな4人の中で、ひときわ目を引いたのが、長い髪を銀色に染めて、肌がおそろしく白い、お嬢様風の制服を着た女子高生だ。


 カラーコンタクトをしているのか、ハーフなのか、目の色はサファイアのように青い。


 その女子高生の周りだけは、明らかに空気が違っていた。


 人間を異世界に誘うかのような、うっとりする美しさの持ち主だった。


 ひと目見て、只者ではないとわかる、その女子高生は、なぜか、見えるはずもないオレの方をじっと睨み続けていた。


 しかし、チャラ男に促され建物の中に入っていった。


 その後も、何度かバンがやってきては、3、4人の女子高生をおろしていった。


 全般的に、やってくる女子高生たちはウキウキしており、はしゃいでいるように見えた。


 おそらく、下っ端構成員が言っていたように、高額の報酬が提示されているためだろう。


 午後には、バンが来なくなったので、JKの運送は午前中に完了したようだ。


 そして、午後3時、会館の中から、わらわらと100名近くの外道会の構成員が出てきた。


 どうやら、お出迎えをするようだ。


 そう、もうすぐ奴が来るのだ、オレのターゲット、外垣道重が。

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