49話 ステルス能力の詳細
世田谷区で、首のない2人のヤクザの死体が発見されたことは、ニュースでも報じられ、世間を騒がせた。
警察はヤクザ同士の抗争による殺人だとみているようである。
まさにその通り!! まぁ、そりゃ、そう判断するだろうな。
死体を目立つ形で放置したのは、正直やっちまったな、と思う。オレも頭に血がのぼっていた。
首のない2人のヤクザの死体は、いわば山菱会への挑戦状だ。
このまま犯人を放置しておけば、山菱会のメンツがつぶれてしまう。
山菱会は是が非でも、警察よりも先に犯人を見つけ出して、殺害し、見せしめにしようとするだろう。
それに幹部のガードが、より厳重になってしまった。
オレは目下の標的を、山菱会のナンバー2で、外道会の会長である、外垣道重に定めているが、外垣の護衛も強化された。
外垣は、防弾装甲のリムジンに乗って、車列をつくって、移動し、奴のまわりには常に10名前後のボディーガードが張り付いて目を光らせている。
過去のオレであれば、この状況で、外垣を暗殺するなど到底不可能だと判断し、あきらめていただろう。
しかし、今のオレは違う。
超能力? 魔法? 何と呼べばいいのかわからないが、特殊能力に目覚めたのだ。
外道会の構成員2人を殺害してから、色々、試してみて、オレの特殊能力がどのようなものなのか、ある程度、わかってきた。
オレが“見つかりたくない”と強く念じると、それがトリガーとなって、オレ自身の体と、オレが所持しているアイテムを、透明化、無音化、無臭化するのだ。
最初に体が透明になった瞬間は、単純に、透明人間になる能力かと思っていたが、それだけではないらしい。
臭いも消えるし、音も消える。オレがステルス活動を行うのを支援するための能力のようだ。
便宜上、オレは、自分の能力を、そのまんまのネーミングだが“ステルス能力”と呼んでいる。
ステルス能力では、どうやらオレは、厚さ50cmくらいの、モノをステルス化させるオーラみたいなものを、体にまとっているらしく、基本的には、その範囲内であれば、自分の所持品をステルス化することができる。
外道会の構成員2人を殺った時には、ケチって使わなかった銃だが、調べてみたいことがあったので、結局、試し撃ちしてしまった。
その結果、わかったことだが、銃声も、ステルス能力によって、かき消されるようだ。
また、もう少し大きいものはどうかと思い、自転車や、バイクを盗んで乗ってみたが、結果は、自転車やバイクは、丸ごとステルス化し、バイクの駆動時の音も消えていた。
バイクは、オレの体の周囲50cmから、はみ出ている部分もあるはずなのだが、どうも、オレがステルス化させたモノ自体にも、ある程度、ステルス化の力がやどるらしく、バイクの、オレがまたがっている部分を中心に、力が伝播して、バイク全体がステルス化した。
それでは、さらにサイズの大きい車はどうかと思って、試してみたが、さすがに車はダメだった。
ステルス化のオーラが、がんばって、広がろうとするのだが、せいぜい1m程度しか伸びず、乗用車全体をステルス化するには至らなかった。
あと、暗視ゴーグルでオレを見たらどうなるのか、とか、赤外線センサーは反応しないのだろうか、とか、この能力が、どこまで探知機による網を、かいくぐれるのかを、調べてみたかったが、残念ながら、そこまで調べる余裕はなかった。
今わかっている範囲の能力で、外垣を暗殺することは可能だろう。
ステルス化した状態で、外垣のそばまで近づき、銃で奴の頭を吹き飛ばせばいいのだ。
オレの姿は見えず、銃声もしないので、周囲の外道会の奴らからしたら、突然、なんの前触れもなく、外垣の頭が吹き飛んだように見えるはずだ。
あとは ステルス状態を維持して、ゆうゆうと逃げればよい。
外垣も人間だ。トイレや風呂にはいくし、睡眠もとる。性欲があれば、女を抱くこともあろうだろう。チャンスは、いくらでもあるはずだ。
オレはさっそく、自身をステルス化させて、港区にある、外道会の東京事務所、通称“外道会館”の張り込みを行った。
何人かの構成員が、事務所の中に入っていくのに乗じて、内部に侵入したこともある。
張り込みをしてわかったことだが、ステルス能力をもってすれば、案外、簡単に外垣を殺れると思っていたが、実際には、なかなか難しそうだということだ。
まず、周りに10人近くのボディーガードがいるので、車の乗り降りをするときも、外垣の姿がちらっとしか見えない。
事務所の中で、外垣が使用しているスペースに到達するまでには、何重ものセキュリティや扉がもうけらている。
この扉が曲者なのだ。勝手に扉が開いては不審がられるので、誰かが、扉をあけるのに乗じて、入ればいいのだが、なかなか、そのチャンスもない。
オレは何度も下見をかさね、辛抱強くチャンスを待つことにした。
そして、ついにチャンスがやってきた……。




