48話 目には目を、首には首を
オレが投げた短刀は、見事、スーツを着たガタイの良いヤクザの、スキンヘッドの後頭部にブッ刺さった。
「ぎええええ!!」
スーツヤクザが叫んで、倒れる。
「兄貴ぃぃっ!!」
隣に立っていたTシャツ姿の若いヤクザが、うつぶせで倒れているスーツヤクザにかけよる。
「チクショウ、晴海のガキか!! どこから攻撃してきやがった!!」
Tシャツヤクザは、倒れているスーツヤクザの横で、腰を落として、ナイフを取り出し、キョロキョロしながら、警戒しはじめた。
実際には、オレは奴らから3m程、離れたところに立っているわけだが、体が透明化し、体臭まで消えているので、存在を察知することはできない。
さてと、どうしたものか。
銃はまだ、弾が10発ほど残っているが、岡田龍雄や外垣道重を襲撃することを考えると、なるべく節約しておきたい。
大きな石でも拾って、一旦、透明化させてからTシャツヤクザに投げつけようか。ただ、大きな石のあるところまで距離がありそうだ。
オレは少しだけ悩んで、スーツヤクザの頭に刺さっている短刀を抜いて、再利用することに決めた。
不思議な力は、オレの体や服を透明化し、見えなくしてくれた。そのうえ、一週間以上、風呂に入っていないオレの体臭も消してくれている。
それでは、音はどうだろうか?
オレがスーツヤクザの方に走っていけば、多少は足音がするだろう。
その音も、不思議な力は、かき消してくれるのだろうか?
試してみれば、わかるのだろうが、今はそんなリスクは犯したくないので、そーっと忍び足で、倒れているスーツヤクザの方に近付いていく。
「チクショウ、よくも兄貴をやりやがったな!! どこだ!! 出てこい!!」
相変わらず、Tシャツヤクザは、ナイフを持って、キョロキョロしながら叫んでいる。
出てこいって言われても、もうお前の1m以内に来ているのだが……。
スーツヤクザの頭の近くで、しゃがみ込んだオレは、両手で短刀をつかんだ。
短刀は、オレの手に触れた瞬間、透明化した。
Tシャツヤクザは、その変化を見逃さなかった。
「ドスが、消えた……?」
驚きの声をあげる。
実際には、消えたように見えるだけで、短刀は存在し、ヤクザの禿げ頭に刺さっている。
オレが勢いよく、短刀を引き抜こうとすると、ずずっと、後頭部の肉と刃物がすれる感覚が伝わってきた。そして、引き抜くと同時に、傷口から血があふれ出てきた。
「いや、消えてないな……。傷口が動いてから、血があふれ出た……。透明になっていただけだ……」
このTシャツヤクザ、意外と観察力があって、柔軟な発想のできる奴なんだな。
「てことは……、晴海、てめええええ!! そこにいやがんのか!!」
Tシャツヤクザが、ブンブンとナイフを振り回しながら、オレのいる方に走ってくる。
オレは急いで、姿勢を低くして、大きく迂回しながら、Tシャツヤクザの後ろに回り込んだ。
「どこだ!! どこにいやがる!!」
Tシャツヤクザは、ナタでジャングルを切り開く探検隊のように、ナイフを振り回しながら、オレがいないかを確認している。まぁ、そっち方向には、もう、いないのだけど……。
無事、短刀を回収することはできた。あとは、これを、Tシャツヤクザにブッ刺すだけだ。
幸い、オレがいない方角に向かって、ナイフをブンブン振り回しながら、少しずつ前進しているので、後ろから見たら隙だらけだ。
さっきのスーツヤクザの時と同じように、狙いを定めて、後頭部を目がけて、短刀を放つ。
短刀はTシャツヤクザの後頭部に命中した。
「グエッ」と叫んで、Tシャツヤクザが倒れる。
外道会のヤクザ2人を仕留めた。
オレは短刀で、2人のヤクザの首を切り取って、持ち帰ることにした。
待っていろよ、外道会、今度はオレが、お前たちに恐怖を与えてやる番だ……。




