39話 天宮ナギの相談
能力を授かってから3日間が経過し、信者数は86人になった。
西園寺クリニックの地下に監禁していた10人の洗脳が終わり、一旦、ナギのマンションに帰ることにする。
いつものように稲田さんのハイエースで送ってもらう。
マンションに着いた頃には、午前2時を回っていた。
「大ちゃん教祖様、お疲れさまっち♡」
部屋の玄関を開けると、メイド姿のナギが迎えてくれた。
「なぜ、メイド姿で?」と思わず言いそうになったが、よく考えたら、俺の趣味だった。
俺を迎える時は、メイド服を着るように命じたのだ。
命じた本人はすっかり忘れていたけれど……。
「成果はどうだったっちば?」
ナギが質問してくる。
「うーん、そうだな。あの後、雷通の高塚局長とジカキンを含めて、合計15人を追加で洗脳できたよ」
「さすが、大ちゃん教祖様、大成果っちば!!」
本当にそうなのだろうか?
ナギは、洗脳されて、ヨイショモードになっているので、こういうセリフは、あまり信用できない。
ただ、午前は交番を回り、夜からはリストに載っている人間の洗脳を行ったので、せわしない1日だったのは事実だと思う。
今日1日のことを思い出したら、何だか一気に疲れが襲ってきた。
「ナギ、俺、疲れたから、もう寝るわ」
「えっ? 大ちゃん教祖様、お風呂には入らなくて良いっち?」
風呂か……、確かに、風呂に入ってから眠りたいな。
「じゃあ、風呂に入ってから寝ることにするわ」
「店長から、もうすぐ大ちゃん教祖様が、帰ってくるって聞いてたから、もうお湯は沸かしてるっちば」
えらく、準備の良いことだ。
「ナギが、大ちゃん教祖様の体を洗ってあげるっち」
ほぉ、そんなサービスまでしてくれるのか。
こうして、ナギと一緒に風呂に入ることになった。
ナギの住居は、家賃37万の3LDKといっても、駅に近いタワーマンションということもあって、面積は、そんなに広くない。
もちろん、浴槽もそんなに大きくはない。
決して大きくはない浴槽で、全裸のナギと、体を密着させながら湯船につかる。
俺が脚を広げてすわり、その上にナギがお尻から乗っかるような形になる。自分がラッコになったような気分だ。
俺の股間に、ナギのお尻があたり、股間がピクピクと反応してしまう。
「大ちゃん教祖様のあそこ、動いてるっちば。大ちゃん教祖様のエッチ~♡」
うむ、なかなかに古典的なリアクションをしてくれる。
今度は湯船からあがり、ナギに体の各部位を洗ってもらう。
ナギは、しつように股間をなでるように洗ってくる。
何か、最近、股間をさわられることが多いな。
俺も、衝動にかられ、ナギの胸や尻を、やさしく、さわり返す。
ナギは、体をビクンッビクンッと振るわせて、敏感に反応する。
「もぉ~、大ちゃん教祖様、こしょばいんで、やめて欲しいっちば」
ナギが恥ずかしそうに言ってくる。体が敏感に反応したことが、そんなに恥ずかしいのだろうか。
「ナギ、意外と敏感なんだな……」
「もぉっ!!」
ふざけ合いながら、体を洗ってもらっていると、ナギが質問をしてきた。
「ねぇ、大ちゃん教祖様。お店を出てから、レイカちゃんと、ずっと一緒におったと?」
「あっ、ああ、そうだな。ジカキンを洗脳している間は、西園寺クリニックの別の部屋にいたけど、それ以外は、一旦、お店に戻るまで、ほとんど一緒だったぞ」
「レイカちゃん、大ちゃん教祖様を誘惑してこなかったと?」
「うーん、そうだな……」
高塚局長に会いに行くまでの時間に、レイカが俺の股間をなでてきた光景が頭をよぎる。
「あっ!! その顔は……。やっぱり、レイカが誘惑してきたっちば!! レイカのやつ!!」
ナギが、怒りたけっている。
女は怖い……。
レイカのように、般若の顔にはならないまでも、ナギも、レイカとそう変わらない。
そんなやりとりをしつつ、ナギに体を洗い流してもらってから、風呂を出た俺は、ナギのひざ枕で眠りについた。
ナギの太ももはやわらかい。落ち着くし、何だか安心する。
かくして3日目の夜が過ぎた。
翌日も、引き続き、リストに載っている信者の洗脳に取り組む。
ニュース配信アプリ、スピードニュースを見ると、昨日の五反田での交番襲撃の記事が載っていた。
打ち合わせした通り、湯島くんが、拳銃を奪って、中津川巡査部長の右手を撃ったことになっていた。
湯島くんは病院に運ばれ、命には別条がないらしい。良かった。
ただし、ニュース記事にはコメントを書く欄があるのだが、そこでは湯島くんのことがボロッカスに書かれていた。
ナギの「湯島さんが、かわいそうっちば……」という言葉が、思い出される。
精神衛生上、良くないのは明らかなので、2、3のコメントを読んだら、もうコメント欄を見るのはやめることにした。すまん、湯島くん……。
能力を授けられてから4日目は、なかなかターゲットと連絡がとれなかったり、日程調整がつかなかったりで、信者数が伸び悩んだ。
たった12人しか追加で洗脳できなかった。
4日目の終わりの時点で、信者数は合計で98人になった。
100の大台まで、あと2人だ。
あと2人くらいなら、そこらへんを歩いている人間を洗脳しても良かったのだが、そう焦る必要もあるまいと思ってしまった。
そして5日目の朝……。
「大ちゃん教祖様♡、起きてっち!!」
変な方言を使う、猫耳メイド服を着た女が目の前にいる。ニコニコした笑顔で、布団をひっぺがして、俺を起こそうとしてくる。
「う、うーん」
俺は、うなされながら目を覚ます。
「大ちゃん教祖様に、これを見て欲しいっち!!」
相変わらずニコニコした表情で、ナギが俺に、自分のスマホを見せてくる。
そこには、メッセンジャーアプリで送られたメッセージが表示されていた。
メッセージの送り人欄には“聖哉”と書かれている。
『ナギスケ。オレが悪かったよ。オレ、気付いたんだよ、やっぱりナギスケのことが世界で一番好きだってことに。オレの、かわいいナギスケに会いに行っても良いかな?』
えっ? ナギスケ? そして、聖哉?




