38話 大成功!!
「ははぁ、さては、これはドッキリだな……。オレ様のびっくりした顔で、ページビューを稼ごうというハラか。大方、サキエルあたりが、オレ様をハメて、こんな目にあわせているんだろう……」
誰だよ、サキエルって……。
「うわああああ~!!」
急に、ジカキンが棒読みのような悲鳴をあげる。
表情は、目を大きく見開き、口を大きくて開けて、のどちんこを見せながら、いかにも驚いたという感じの作り顔をしている。
「なぁ、そこのおっさん、オレ様の驚き顔、どうだ? 最高に面白いだろう?」
どうやら驚いた時のリアクションをとる練習をしていたらしい。全く面白くねぇよ。
「なぁ、おっさん。そろそろカメラがどこにあるか、教えてくれないか? いいだろう?」
どうも“おっさん”というのは、俺のことらしい。
「教祖よ、この男は、解剖してもいいのではないか? 知能も低そうだし、女神教の役に立つようには思えん」
左にいた、白衣を着て、顔を包帯でぐるぐる巻きにした西園寺院長が、俺に聞いてくる。
俺は、その問いには答えず、右側に控えていた、右目に黒い眼帯をつけた、身長約2mの黒人、ガスを呼ぶことにする。
「ガス、ちょっと、こっちに来い……」
ガスは「イエス、ボス」と言いながら、俺の近くまで来て、ひざまづく。
俺は、ガスの耳元で、彼にしか聞こえないような大きさの声で「大けがをしない程度に痛めつけてやれ」と伝えた。
「イエス、ボス!! オレ、ウレシイ……。コイツ見テテ、イライラ、シテタ」
イライラしていたのは俺も同感だ。
ガスがウキウキして、指をボキボキ鳴らしながら、パイプ椅子に座らされたジカキンの方に近付いていく。
「おいおいおいおい、何なんだ? このデカイ黒人は? ヤバイよ、ヤバイよ」
ジカキンは、まるで出川哲郎のようなセリフを吐いた。
まだドッキリカメラだと思っているのだろうか、表情は半笑いで、嬉しそうだ。
ガスはニヤニヤしながら、ジカキンの前まで行くと、右パンチを、ジカキンの左頬にお見舞いした。
「ひぶっ」とジカキンが叫ぶ。
「おいおいおいおい!! これはどういうことだよ!! 本当に殴るなんて、聞いてないよ!! オレ様、親父にも、ぶたれたことないのに!!」
まだ、そんな小ネタを挟む余裕があるんだな。
ガスが俺の方を見て、目で「もっと傷めつけて良いか?」と聞いてくるので、無言でうなずくことでGОサインを出してやる。
更に、ガスのパンチが、左・右と連続して、ジカキンの頬にヒットする。
ジカキンの両頬が、赤くはれてきた。
「痛てぇ、痛てぇよ。これ、マジで、ドッキリじゃないのかよ……」
「ようやく、気がついたのか? これはドッキリでもなんでもないぞ」
「ま、マジかよ……、じゃあ、オレ、どうなんだよ……」
一人称が「オレ様」じゃなくなってきたな。
キャラが崩壊しかけてきているぞ、ジカキンよ。
「さぁな……、もしかしたら、死ぬ……、かもしれないな……」
「そ、そんなぁ……、オレ、まだ死にたくねぇよ……」
そう言いながら、ジカキンは目からボロボロと、大粒の涙を流し始めた。
ただでさえ、みっともない顔をしているのに、余計、情けない顔になる。
「おね……がいします……、お金なら、払いますから……、見逃して……ください……」
ジカキンが、しゃくりあげながら、絶え絶えに命乞いをしてくる。
「ほぉ、いくらくらいまでなら、払えるんだ?」
「月……100万くらいまでなら……払えます……ズビッ」
泣いて、鼻を鳴らしながら、ジカキンが答える。
「うーん、もう、そろそろ良いかな?」
俺は、ひとりごとを言う。
「もうそろそろ……いい? どういう……こと……ですか?」
ジカキンが、怯えた目で、俺の方を見つめる。
「お願いします……助けて……ください」
俺は、パイプ椅子の背もたれに隠していた“あるモノ”を、自分の背中に回すと、逆向きに座っていたパイプ椅子から立ち上がり、ジカキンの方を近づいていく。
「う、うわぁっ、な、なにをする気ですか……」
俺はジカキンの、すぐ目の前まで行くと、後ろに隠し持っていた、“あるモノ”を右手に持って、ジカキンによく見えるように、かざしてやった。
それは「ドッキリ大成功!!」と書かれたプラカードだった。
「テッテテ~♪ ドッキリ大成功!!」
俺がドッキリであることを告げると、ジカキンは呆気にとられた顔をしていた。
そりゃ、そうだろうな。3発もぶん殴られているし、実質、ドッキリとは言えないものな。
「いやぁ、ジカキンくん。君の、作ったようなリアクションは、クソだったけど、大粒の涙を流しながら、ブザマに命乞いする姿は、なかなか迫力があって、悪くなかったよ」
まだ目には涙は残っているが、ジカキンは、ようやく状況を呑み込め、キャラを取り戻したようだ。
「は、はぁ? おっさん、ふざけんじゃねぇよ!! マジで殺されると思っただろうが!!」
「さぁ、ドッキリも無事、成功したことだし……」
そう言いながら、俺は右手に持っていたプラカードをポイッと捨てると、右手をジカキンの頭に押し当てる。
黄金の光がジカキンの頭に吸い込まれていく。
これで信者数は86人になった。




