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37話 ジカキン、目覚める

 茶色いパッツン頭に、真っ赤なセルロイドのメガネをかけた、30代くらいの小太りな男が、何も知らずに、スヤスヤと呑気に眠っていた。


 二番煎じの小物yourtuber(ゆあちゅーばー)ジカキンである。


 正直に言おう。


 かつて、俺は人気yourtuberという人種が嫌いだった。


 食わず嫌いかもしれないが、人気yourtuberと言われる人間の動画を、いくつか試しに見ようとして、いずれもノリがきつくて、2、3分くらいでブラウザバックしてしまった。


 何が面白いのか、サッパリわからなかった。


 yourtuberの中には芸能人きどりで大物ぶっている奴もいる。


 一般人と大差ない素人なのに、一般人をいじる資格が自分にはあるのだと勘違いしているバカ者のように、俺の目には映った。


 何かの経済誌のWEB版で、某人気yourtuberの視聴者の、ほとんどが小学生だという記事を読んで、ますます嫌いになった。


 大げさなリアクションをしたり、変顔をしたりしていたら、ガキが喜ぶだろうみたいな、安直な発想が透けて見えるようで、yourtuberの、大きく口を開けた、間抜けな顔写真がネット記事に載っているのを見るたびにイラっとした。


 そもそも、yourtuberに限らず、変顔で、笑いをとろうとする芸人が嫌いなのだ。


 小さい頃、テレビによく出ていた、アゴを突き出し、白目をむきながら、人を笑わせようとするモノマネ芸人も嫌いだった。


 ただ、そこまでyourtuberを嫌っていたのは、5年くらい前までの話で、ここ2、3年で、自分の中のyourtuberに対する評価は変わってきた。


 yourtuberを見直すようになった理由のひとつとして、yourtuberの存在が社会に定着し、配信内容も多様化してきたという事実があげられる。


 例えば、俺は、歴史上の人物を、まんじゅう頭のキャラクターが説明してくれるようなyourtubeチャンネルが好きで、いくつかのそういうチャンネルをチェックしている。


 また、テレビの内容が制限され、面白くなくなっていく一方で、一部の芸能人が、やりたいことをやるために、活動の主軸をyourtubeに移すようになってきたというのも、見直すようになった理由のひとつだ。


 時間が経過するにつれ、娯楽としてのyourtubeの相対的な地位は向上してきているように思える。


 yourtubeへの評価が高まるにつれて、長年活動を続け、yourtuberピラミッドの頂点に君臨する大物yourtuberたちのことも、ひとかどの人物なのだろうと考えるようになった。


 さて、ここまで俺がyourtuberをどう見ているか、ということを述べてきたわけだが、問題は目の前にいるジカキンである。


 大物yourtuberと勘違いするような、まぎらわしい名前を付けることで、うっかり訪れた視聴者をチャンネルに呼び込んできた、コバンザメのようなyourtuberである。


 そんな、ずるい戦法でも、ちゃんと面白い企画を練って、放送していれば、着実に視聴者は増えていくのだろうが、途中から、生来の怠惰な性格が出てきて、最近では、ウンコの垂れ流しのような放送しかしなくなっているらしい。


 そのため、チャンネル登録者数も増えるどころか、微減しているようだ。


 それでも10万人以上のチャンネル登録者数がいるというのだから、大したものではあるのだが……。


 ただ、俺は、コイツのことがイマイチ気に入らない。


 だから、酷い目にあわせて、どんなリアクションをするか、見てやることにした。




 今、ジカキンは、西園寺クリニックの地下で、両手両足をロープで縛りつけられ、口にさるぐつわをはめられた状態でパイプ椅子に座らされている。


 他の9人の人間は、洗脳をして帰した。残っているのはジカキンだけである。


 ジカキンに向かい合うような形で、俺が、もう1脚のパイプ椅子に、反対向きに座る。


 俺の左には、白衣を着て、顔を包帯でぐるぐる巻きにした、メガネの老人、西園寺(さいおんじ)院長が杖をついて立っている。


 右には、身長2m、筋肉隆々の黒人が控えている。ガスである。


 ガスは、リョーコにつぶされたため、右目に黒い眼帯をしている。


「おい、ジカキン、起きろ!!」


 俺は大きな声を出しながら、紙を丸めたボールを、ジカキンの顔に投げつける。


「う、うーん」


 ジカキンが、ゆっくりと目を覚ます。


 目を覚ました途端、大きく目を見開き、さるぐつわごしにムグッムグッと必死に何かを叫んでいる。


「ガス、さるぐつわをはずしてやれ」


「イエス、ボース」


 ガスが、ジカキンの方に歩み寄り、さるぐつわをはずしてやる。


「こ、ここはどこなんだ!!」


 ジカキンが、せきをきったようにしゃべりだした。


「さぁ、どこなんだろうな? ジカキンよ。お前は、今、自分がどんな状況に置かれているのか、わかっているのか?」 


「こ、これは……」


 両手両足が動かせないので、ジカキンは頭だけを動かして、周囲を見回す。


「お、お前たちは一体、何者なんだ? オレ様の熱狂的なファンか?」


 はぁ? 何、寝ぼけたことを言っているのだろうか、この男は。


 元コンビニ店員のおっさんに、白衣のミイラ爺、眼帯つけた身長2mの黒人、こんな妙ちくりんなファンがいて、たまるものか。

    

「ははぁ、さては、これはドッキリだな……。オレ様のびっくりした顔で、ページビューを稼ごうというハラか。大方、サキエルあたりが、オレ様をハメて、こんな目にあわせているんだろう……」


 誰だよ、サキエルって……。

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