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35話 高塚局長の洗脳

 約束の時間から、20分ほど遅刻して、レイカの近くに1台の青いジャガーが停まった。


 中からおりてきたのは、灰色のジャケットをはおり、胸元のはだけたワイシャツを着た、身長170センチくらいの男だ。


 年齢は40代後半くらいだろうか。肌は日焼けしていて、浅黒い。


 目つきや、あごの引き方、たたずまいから、頑固そうな男だなと思った。


 自信満々の人生を送ってきたのだろう。腕を組みながら、喋ってそうな印象だ。


 この男が、雷通(らいつう)のメディア企画局長、高塚秀夫(たかつかひでお)で間違いないだろう。


 俺は寺田くんといっしょに、レイカや高塚のいる方へ、そっと近付いていく。


「急な呼び出しに応じていただき、ありがとうございます」


 レイカが、高塚にペコリと頭をさげる。


「レイカ、お前が、『どうしても』と言うので、今日は来てやったんだぞ」


 コイツ、20分も遅刻してきたくせに、偉そうだな。


「私の時間は貴重なんだ。それを割いてやっているわけだから。相応の見返りは必要だぞ。わかっているのだろうな?」


 そう言って、高塚は、人が通ってもおかしくない屋外で、レイカの尻を、右手で撫でまわす。


 その手つきが、あまりに手慣れたものだったので、日ごろから、この男はレイカの尻を撫でまわしているのだろうなと確信した。


「え、ええ、もちろんですわ。局長」


「ホテルを予約してある。くわしい話はホテルで聞こう」


 そう言って、レイカに車の助手席に乗るよう促す。


 いかん、このまま車で移動されたら、面倒なことになる。この場で、洗脳してしまいたい。


 俺は寺田くんに目配せする。


 寺田くんは駆け出し、高塚との距離を一気につめた。


 そして、高塚の左腕にしがみついて、動きを封じようとする。


「なんだ、このガキは!! おい、離れろ!!」


 それと同時に、レイカも高塚の右手と右肩を、両手でガシッと掴む。


「レイカ、お前まで!! どういうことだ!!」


「本当はね。ずっと言いたかったんだけど、私、アンタのこと、ただのギラギラしたスケベ親父だとしか思ってないよ」


 レイカの口角がつりあがっている。両サイドの口の端から、般若の牙でも、のぞき見えそうだ。


 きっとレイカも、日ごろから、高塚にストレスを感じていたのだろう。


 高塚は、左側に寺田くん、右側にレイカ、両側から肩をつかまれている状態だ。


 寺田くんも、レイカも、必死にしがみついているが、高塚の腕力が強いためか、体を激しく、揺さぶられ、一瞬、地面から足が浮いたりしている。


「教祖様、早く、お願いします!! この人、腕力が強くて、振り払われてしまいそうです!!」

 

 こらえきれずに寺田くんが叫ぶ。


「ハハハッ、私は毎日、ジムでベンチプレスをしているからな。力のない、お前らのようなザコとは違うのだよ。さぁ、わかったら、さっさと私から離れろ」


 ザコか……。


 確かに、お偉い雷通の局長様から見たら、コンビニ店員だった俺や、大学生の寺田くんなんかは、ただのザコなんだろうな。


 ただし、お前は、これから、そのザコに、アゴでこき使われるようになるんだよ。


 俺は、右手を高塚の頭にかざす。


「なんだ、お前は?」


 高塚が俺に聞いてくる。


「もうすぐ、わかる。お前の生殺与奪(せいさつよだつ)の権利を、握ることになる者だ」


 格好つけようとしたが、気恥ずかしさもあって、勢いよく発声できなかった。


 そのためか、セイサツヨダツのところで少し噛んでしまった。


 日頃、使い慣れない言葉は、声に発して言うモノではないな。ああ、恥ずかしい。


 さいわい、寺田くんも、レイカも、ちょっと噛んだことに気付いていないようだ。良かった。


 いや、気付かないフリをしてくれているだけなのか?


「はぁ?」


 間の抜けた声をあげている高塚の頭に、黄金色の光を流し込む。


 これで高塚の思考・記憶を書きかえるのだ。


「あ、ああ……。女神様……」


 高塚が声を漏らす。

 

 そう言えば、昔、そんなタイトルの漫画があったような気がするな。


 いや、今はそんなことは、どうでも良い。


 高塚には神々しい女神様の姿が見えているはずだ。


 仏様におがむように、両手をあわせて、目からは涙を流している。


 やがて、高塚は、後ろにあったジャガーのドアに、背中からもたれかかるような形で、気を失ってしまった。


「教祖様、この人、どうします?」


 寺田くんが聞いてくる。


「うーん、そうだな。1分もすれば、叩き起こせばいいと思うけど、それまでの間に、人目についたら、具合が悪いな……。よし、俺たちで、このおっさんのまわりを囲んで立って、周囲から見えないようにしよう」


 こうして、周囲の視界から隠すこと1分、俺はビンタで、高塚を叩き起こした。


「こ、これは教祖様!!」


 洗脳前とは、高塚の態度が180度、変わっていた。


 もしかして、この人は、目上の人にはヘイコラするタイプなのだろうか。


「高塚局長、これからあなたには俺のために、身を()にして働いていもらいます。後日、招集をかけるので今日のところは、その車で家に帰ってください」


「わかりました!!」


 まるで敬礼でもしそうな勢いで、高塚が返事をする。


 おっさんを洗脳すると、大体、こういう感じになるよな。まぁ、こういう反応をするように、頭を調整しているからなのだけど……。


 これで高塚局長の洗脳は完了した。


 その後、俺、寺田くん、レイカ、稲田さんの班は、ハイエースで移動し、主にレイカの常連客を中心に、追加で4人を洗脳した。


 そして、深夜0時ごろ、別の班が、拉致した人間を監禁している西園寺クリニックの地下階へ移動する。


 そこには、10人の人間が、両手両足を縛られた状態で寝かされていた。


 そして、その中にはyourtuber(ゆあちゅーばー)のジカキンもいた。

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