33話 女神シティ(仮)建設の妄想
「そんな、寺田さんばっかり、ズルイっちば!! ナギも、この仕事やめて、養って欲しいっちば!!」
うーん、寺田くんのことを“養う”とか言ってしまったのは、我ながら早計だったのかもしれない。
十数億のお金を自由に使えるようになって、浮かれていた。
つい、雰囲気で、軽はずみなことを言ってしまった。
ただし、よく考えてみたら、今、俺が自由に使える十数億というお金は、目標が達成される3か月後には、ただの紙切れになってるんだよな。
と言うか、紙切れにすらならないのか。
院長の資産のほとんどは、円であれ、ドルであれ、株であれ、ただの電子データ上の数字に過ぎないものな。
そんなもの、インターネットが整備されていて、ATМや電子決済がつかえる世界でしか、役に立たない。
今のうちに、シェルターをつくったり、武器や食糧を貯蔵したり、発電機を設置したりする費用にあてるべきだろう。
将来的には、もっと信者とお金を集めて、社会崩壊後を見すえた、女神教のシェルター都市をつくりたい。
ただ、武器の貯蔵に関していえば、技術者を信者にして、日本国内で、工作機械と工場を買って、武器を製造するというのは難しいかもしれないな。
長年の経験がない人間が、イチから全部つくりあげるとなると、いくら優秀な人材でも、素人仕事に終わってしまう可能性が高そうだ。過去にそういう事例があったことを知っている。
むしろ、洗脳によって、既存のモノを入手する方が良いかもしれない。
例えば、自衛隊のひとつの駐屯地を丸ごと洗脳するとか、補給処を丸ごと洗脳するとかしてみてはどうだろうか。その方が質が高い武器を入手できそうだし、運用も円滑におこなえそうだ。
あと、お金に関して言うと、社会が崩壊した後の、お金はどうなるのだろう。
日本円でモノが売買されているのは、日本政府がその価値を保証しているからだ。
それでは社会が崩壊し、日本政府が消滅したら、どうなる?
惰性で日本円が使われ続けるのか、それとも某ゲームのようにドリンクのボトルキャップが通貨がわりになったりするのだろうか。
というか、これに関しては、自分の中で、すでに答えが出ている。
女神教で貨幣を発行するのだ。
俺の顔が描かれた紙幣を刷ってもいいかもしれない。
ただ、俺の顔って、イケメンでもないし、紙幣を通じて、自分の顔を何回も見ることになるのは嫌だな。
明王朝の創始者、朱元璋のように俺の顔を美化した肖像画でも描かせるか? そのうえで、美化された俺の肖像画を紙幣に描かせるというのはどうだろう。
いや、それくらいなら女神様の姿を描かせる方が良いな。
俺は自分を神格化すること自体は否定しない。
むしろ積極的に、自分を神格化したいと思っている。
“おとなしくて、やさしい、コンビニ店員の畑大悟”だった頃の俺ならば、紙幣に自分の顔を描かせたり、自分の銅像を建てさせたりすることは、みっともないことだし、社会における、お金や労力の無駄遣いだと考えただろう。
それが協調性のある意見であり、良識的な反応だと、当時の俺は考えていたからだ。
世間の顔色をうかがって、人を不快にさせないようなこと、人を傷つけないようなことを言うように、コンビニ店員時代の俺は心がけていた。
ただ、それって、俺が単純に弱いから、そういう他人の顔色をうかがった言動をしていただけではないのか。
本当の俺は“やさしい”なんてことはなくて、ただ弱かったから、やさしいように見えただけではないのか。
そこは難しいところだな。
構成員の全員が、弱肉強食的な思考で、隙あらば、弱い人間をだまして喰らおうとする社会よりは、全員が他者を思いやり、優しくなれる社会の方が、各人が警戒や自衛にあてるコストがかからず、住みやすい社会といえる。
そういう社会を積極的に望む人間ならば、自分が弱い強いに関係なく、人にやさしくあるべきだ。
俺自身、そういう背景を理解したうえで、なるべく、人にはやさしくしようと考え、生きてきた。
うーむ、考えていくとわからなくなってくる。
とにかく、力を得た、今の俺は、自分を神格化させたいし、ハーレムをつくりたい、不老不死にもなりたい。
見せかけの遠慮や謙遜なんてしない。それが俺の欲望だ。
とりあえず、女神シティ(仮)を建設して整備するためにも、人材を集めなくては……。
今回の35人の名簿の中には、ゼネコンの若手社員もいれば、防衛省に勤務する一尉もいる、洗脳が成功すれば、彼らの力を借りよう。
「おーーい、おーーい、大ちゃん教祖様? 起きってるちば?」
ナギが、俺の目の前で、まるで確認するかのように、右の手のひらを激しく上下に動かしている。
いかん、つい妄想にひたっていた。
「あっ、ああ、ごめんごめん、起きてるよ」
「都合が悪くなったら、ナギの話を無視するの、やめて欲しいっちば!!」
ナギが、まるでハリセンボンのように頬をふくらませて、怒ったフリをしている。
「ナギを養うって話、考えるよ」
「本当に??」
急に、ナギの表情が、キラキラと希望に輝きだした。
そこは「本当っちば??」じゃなくて、普通に「本当に??」なんだな。
ゆくゆくは、自分の王朝をうちたてるのだ。
そして、その王朝では、もちろんハーレムも存在する。
ナギは、信者1号だし、そのハーレム要員1号だからな。
ええ、ええ、もちろん養ってやりますとも。




