32話 レイカとアルバイト1号
俺は、完成した顧客リストを見ながら、35人の洗脳を行うことを吉松店長に伝える。
「吉松店長、青山くんと協力して、明日の夜までに、チェックを入れた35人を洗脳するスケジュールを立ててください」
「かしこまりました!!」
拉致した人間を監禁する施設として、西園寺内科クリニックの地下を使う。
信者であるデリヘル嬢には「お金に困っているので、こっそり店外デートをし、S〇Xの相手をさせてくれないか」でも、「どうしてもランキングに入りたいので今晩、指名してくれないか」でも、何でもよい、どんな空手形を発行してもよいので、客の嗜好にあった、エサをぶらさげさせて呼び出しをしてもらうよう伝えている。
拉致は、デリヘル嬢、取り押さえ担当、麻酔の注射担当、ドライバーの4人1組で、チームを組んで行う。
3チームくらいは、つくれるだろう。
今の段階では、麻酔ボーガンは必要ないと思われるので、麻酔担当は注射器を使う。
俺が同行できる班は、麻酔担当なしで、俺が洗脳を行う。洗脳された人間は、その場で開放する。
他のチームだけが、拉致した人間を一時、西園寺クリニックの地下に監禁する。
拉致・監禁するといっても、俺が西園寺クリニックに行って、麻酔で眠らされている対象者を洗脳した後には開放するので、せいぜい数時間のことだ。
この計画、俺がどう動くか、スケジュールを組むのが結構、面倒くさそうだな、と思う。
吉松店長が大変かもしれない。
日ごろから仕事で、こういう仕事をやっていて慣れているかもしれないけれど……。
チームを編成したり、注射器を確保したり、女の子からメッセージを送らせたりしていると、気付けば、時刻は午後8時前になっていた。
俺とナギが、事務所スペースで待機していると、吉松店長が1人の女の子を連れてきた。
「教祖様、この子はレイカちゃん。うちの店の人気ナンバー1で、高塚局長が、いつも指名している女の子です」
ちなみに、前にナギ本人から聞いた話だが、人気ナンバー2がナギらしい。
「教祖様、レイカです。このたびは、教祖様のお役に立てて、大変、光栄です」
レイカと名乗った、20代前半の若い女は、西アジアの美人風とでもいうのだろうか、少し日焼けしていて、目が大きく、ハーフっぽい、整った顔立ちをしていた。
服装は、うすピンク色の、体のラインがわかるような、タイトなワンピースを着ている。
胸元がV字型に開けていて、胸が強調されていた。
なかなかに、いいオッパイをしている。
俺が胸に見とれていると、ナギが怒りの声をあげた。
「ジロジロ見過ぎっちば!!」
ナギも決して、まな板ではないのだけど、レイカのような、思わず、揉みたい、と思わせるような形の美しさやボリュームはない。
服装もそうだが、レイカは、デリヘル嬢というよりはナンバーワンキャバ嬢といった方が合っているような外見をしている。
メイド女学院は、基本サービスとして猫耳メイドのコスプレがついていたはずだけど、猫耳メイド姿は似合いそうにない。
美人でスタイルが良いから、店のコンセプトから外れているけれど1位なのだろうか。
「それで、高塚局長とのアポはとれたんですか?」
俺はレイカに聞く。
「もちろんです。私、教祖様のためならば、何でもいたします」
ん? 今、なんでもするって……。
いかんいかん、妄想はほどほどにしておこう。
レイカの話によると、高塚局長は港区にある自宅で、在宅勤務をしているらしい。
雷通は、汐留に立派な本社ビルがあるのだけど、リモートオフィスを推奨していて、社員の半分以上は、リモートで働いているようだ。
午後10時に約束をしていて、指定の場所で待っていたら、高塚局長が車で迎えに来てくれることになっているらしい。
あと2時間くらい時間がある。
高塚局長が指定した、高輪のピックアップポイントまで、車で10分もかからないので、直前まで、お店に来たお客さんや、指定した35人のうち、女の子がお店に呼び出した数人を洗脳して、時間を過ごすことにする。
時間が近づけば、俺、レイカ、寺田くん、稲田さんの4人で、ハイエースにのって、移動するつもりだ。
寺田くんは、今回の洗脳をおこなうにあたって呼び出した。
取り押さえ担当なのだが、女顔の、小柄な男の子なので、本当は別の人間がよかったのかもしれない。
しかし、青山くんは吉松店長とスケジュール調整の仕事があるし、渡辺丈は療養中、体のデカイ黒人のガスは目立ちすぎるし、洗脳したお巡りさんたちは、まだ仕事中、消去法で、寺田くんくらいしか残らなかったのだ。
「1日ぶりだね。寺田くん」
「教祖様……、お呼び出しくださり、ありがとうございます。急なお呼び出しだったので、ピザ屋のアルバイトをサボって、来ちゃいました……、えへへ」
うーん、シフトが入っていたピザ屋の仕事をサボらせてしまったのか。それは良くないな。
ピザ屋の店長も、何でサボったのかを、詮索するだろうし……。
俺の命令には絶対服従であるがゆえに、不自然な行動をさせてしまったようだ。
「寺田くん、もうピザ屋のバイトは、やめてしまってはどうかな? お金が必要なら、うちの教団で出すよ。君1人くらいなら、十分養えるし……。君が女神教のアルバイト職員、第1号だ」
西園寺院長を洗脳したことで、今では院長の保有する十数億の資産を自由につかえるようになった。
俺は、今までの人生では到底、考えられなかったような大金を動かせるようになり、気持ちが大きくなっていた。
「そんな……、教祖様……、ぼくを養ってくださるんですか?」
寺田くんは、目をウルウルさせて感激しているようだ。
女顔をした、小柄な男の子なので、なんだかドキッとしてしまう。
言っておくが、俺には、そっちの気は全くない。
「そんな、寺田さんばっかり、ズルイっちば!! ナギも、この仕事やめて、養って欲しいっちば!!」
ナギ……、いたのか……。
そして、ナギよ、お前はいつも、そんなことばかり言っているな……。




