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3話 天宮ナギの洗脳 その1

 女神様から啓示を受けた、コンビニ店員のおっさん、畑大悟(38)は、この現実世界に異世界ダンジョンを呼び出すべく活動を開始する。


 女神様から授けてもらった洗脳魔法の実験を行うため、考えた末、デリヘル店ムチムチ猫耳メイド女学院に電話をする。


◆主ミッション

 【1】信者数を増やし、信者の合計魔力値が1,000万を達成する。

   信者数:1人

   達成状況:10万/1,000万


 【2】異世界(並行世界)を呼び出す器となる召喚魔法使いを見つける。


   達成状況:未達成!!


◆下位ミッション

  洗脳魔法で信者を1名、獲得する。 ≪進行中≫

「ハイ、こちら、ムチムチ猫耳メイド女学院です」


 受話器の向こうから、受付の男性店員の声が聞こえた。


 色々考えた末に、俺は洗脳の実験台として、デリヘル嬢を呼ぶことにしたのだ。あらかじめ店のホームページで調べておいた女の子の名前とコース、時間を伝える。あまりこういう電話をしたことがないので、情けないことに声が少し震えてしまった。


天宮(あまみや)ナギさんで、80分コースですね。料金は交通費込みで2万8,000円となります」


 2万8,000円! 俺の月の稼ぎを考えた場合、なかなかの痛手だ。払う気はないけれど。


「それでは、本日の午後3時頃に女の子が、お部屋に伺わせていただきます」




 女の子が来るまでに、あと2時間程あった。その間、お店のホームページで女の子のプロフィールや写メ日記を読みながら過ごすことにした。我ながら、時間を無駄にしているなと思う。


 プロフィールによると、天宮ナギは身長148cmの21歳。出身は鹿児島県の奄美大島らしい。天宮(あまみや)という源氏名も出身地の奄美からつけられた名前かもしれない。どうでもいいけど。


 天宮ナギを選んだのは、単純に見た目がタイプだったからだ。


 プロフィール情報を真に受けるなら、田舎娘風の素朴さを残した、癒し系の女の子らしい。熱狂的な常連客が何人かいるらしく「ナギちんは僕にとっての女神様です」みたいな熱いコメントが応援メッセージ欄にいくつか寄せられている。接客態度は悪くないようだ。


 ホームページのプロフィールと写メ日記だけでは飽き足らず、お水系の掲示板で専用のスレッドを探し、天宮ナギには彼氏がいる、だの、客として入った時にはナギと本番SEXができた、だの、嘘か誠かわからないような、どうでもいい書き込みを読んでいたあたりで、インターフォンが鳴った。


「はじめまして、ムチムチ猫耳メイド女学院からきました~」


「ちょっと待ってくださいね」


 急いでドアのロックを開けに行く。ガチャっと音がして、ドアが開くと、そこには肩くらいまで茶色い髪を伸ばした、色白で小柄な女の子が立っていた。上がフリル付きのブラウス、下は黒いプリーツミニスカートという出で立ちで、右手には茶色くて小さなバッグを持っている。なかなかガーリーな服装である。


「天宮ナギです♡。よろしくお願いします。ご指名くださった畑大悟(はただいご)さんですか?」


「え、はっ、はい、そうですけど」


「わ~かっこいい! こんなかっこいい人に指名してもらえるなんて、ナギ、うれしい♡」


 こういう店の女の子以外で、そんなことを言われたことは一度としてない。


「背が高いですね。何cmあるんですか?」


「確か182cmだったかな。最近あまり測ってないから自信ないけど」


「わー、すごーい。背が高いんですね。大きいな。かっこいいな~」


「お名前なんですが、(だい)ちゃんっち、呼ばせてもらってもいいですか?」


 えっ、大ちゃん、大ちゃんっち、どっちで呼ばれるの?


「大ちゃん♡」


 そう言うと、ナギは両手を広げて、俺に抱きついてきた。


 ナギの身長は低いので、俺のちょうど胸あたりに頭がうずまる形になる。


 ナギの背中に両手を回す。俺の図体がデカいので、ナギの体がすっぽり俺の体に包まれる。ああ、髪から若い女の子のいい匂いがする。


「大ちゃんと一緒にいると、ナギ、すごく安心する~」


 数秒間、ずっと抱き合っていた。


 やがて、ナギが思い出したように言った。


「いけない。お店に電話しなきゃ。衣装の準備もしないといけないし」


「大ちゃん、お風呂、借りるね」


 このムチムチ猫耳メイド女学院では、女の子が猫耳を付けたメイドの恰好で接客してくれることになっている。ナギは着替えのため、浴室と洗面所が連なるスペースへと入っていった。


「待っててね。すぐ準備するからね」


 それから3、4分待たされた。


「大ちゃん、お待たせニャン」


 ニーソックスをはいた猫耳メイド姿のナギが、お風呂の前にある洗面スペースからドアを開けて出てきた。かわいい。脚のラインがキレイで、なかなか俺のフェチ心をくすぐる。ずっと眺め続けていたいくらいだ。


 しかし、そろそろ本題にとりかからなければならない。


「ねぇ、ナギちゃん。ちょっと、こっちに座ってもらって良いかな?」 

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