26話 交番襲撃作戦
意識をとりもどした西園寺院長からカギを受け取り、ナギを拘束していた鎖をはずしてやる。
「大ちゃん教祖様、信じてたっちば!!」
今まで、手術台のうえに寝かされていた、全裸の状態のナギが、涙を流しながら、俺に抱きついてきた。
ナギをギュッと強く抱きしめてやる。
俺の体は、ナギよりも大きいので、俺の体がナギを包み込むような形になる。
体全体で、ナギの体の質感、形、ニオイ、そして心臓の鼓動を感じる。
生きていてくれて良かった。
院長に、負傷したリョーコや金岡さんの手当てをさせる。
院長によれば、2人とも全治3週間程度のケガらしい。
異世界を呼び出すまでの期限が、あと3か月なので、3週間も2人が戦線離脱するのは痛い。
こんな時、回復魔法を使える者がいれば便利なのにな、と思う。
活動をスタートした時点から、魔法使いを洗脳して信者にすることは考えているが、まだ準備が万全ではない。
2人のためにも、そう遠くないうちに、回復魔法使いを信者に加えたい。
当面は、2人が抜けた穴を、他の人間を充てることで、埋めなければならない。
気を失っていた、渡辺丈とガスを忘れずに洗脳しておく。
こうして女神様から啓示を受けてから2日目の、長い夜が終わった。
俺とナギは、稲田さんの運転するハイエースで、五反田にあるナギのマンションまで送ってもらった。
車に乗っている時点で、ナギは院長から服を返してもらっているので、残念ながら、もう全裸ではない。
俺もナギもヘトヘトだったので、2人して、ナギの家に1台しかないベッドに潜り込み、ドロのように眠った。
目が覚めると、ナギが俺を抱き枕のようにして、抱きついていた。
「大ちゃん教祖様、大好きっちば……」
寝言を言っているようだ。
「おい、ナギ、もう起きろ。朝だぞ」
時計を見ると、朝だと言いつつも、時刻はすでに午前11時を回っていた。
また目覚めたら昼だったというパターンか。
半分、寝ぼけているナギを叩き起こし、軽い昼食をすませると、俺とナギは、ムチムチ猫耳メイド女学院へ向かった。
「教祖様、よくご無事で。一緒に行っていた青山から、報告は聞いています。ナギちゃんも無事で良かったですね」
いつものように吉松店長が迎えてくれる。
「吉松店長、ありがとうございます。また、打ち合わせを行いたいので、メンバーを集めてもらえますか?」
30分後には、メイド女学院の事務所スペースに、俺、ナギ、吉松店長、青山くん、稲田さん、沢田さんの6人が集まっていた
人数を見れば、あまり変わりがないのだろうが、金岡さんやリョーコがいないのが寂しく感じる。2人とも今は療養中だ。
「まず、我々、女神教の当面の目標について確認します」
俺が話の口火を切る。
「当面の目標は、信者数100人を達成することです。これは女神様から課されたミッションでもあります。活動開始から2日が経過した、現在の時点で、信者の数は58名。あと42名の信者を獲得する必要があります」
「あと42人なんて楽勝っちば」
ナギは強気だ。
「そうですね。ナギの言うように、この目標は割と簡単に達成することができるように思われます。それに……、我々は今後、これを使おうと思っています」
そう言って、俺は、西園寺院長が持っていたボーガンと麻酔入りの矢をテーブルの上に置く。
「これは院長が使っていたボーガンと麻酔入りの矢です。これを我が教団で何丁か、確保しようと思っています。麻酔薬入りの矢は、院長経由で入手できます。ボーガンも特注品のようですが、これもまた業者に作らせることが可能でしょう」
一同の注目がボーガンに集まる。
「信者獲得のために、いくつかの班をつくり、各班が麻酔入りボーガンでターゲットを眠らせ、車で連れ去って、指定された監禁場所まで連れていく。連れてこられたターゲットを、まとめて俺が洗脳する。そうすることで、効率的に信者を増やすことができます」
「教祖様、その案ですと、見た目のうえで、拉致事件のように見えませんか? 警察に目を付けられる可能性も高いように思えるのですが……」
吉松店長が懸念を示す。
「確かに吉松店長の心配も、もっともです。人目のつかない時間帯・場所を選んで、入念に準備をしたうえでターゲットを拉致する必要があるでしょう」
しゃべっているうちに、俺は前に考えていたアイデアを思い出していた。
「警察対策で思い出しましたが、警察に我々の活動が知られた場合に備えて、警察官の信者を獲得したいと思っています」
「具体的に、どうやって警察官の信者を獲得するんですか?」
青山くんからの質問だ。
「まずは、拠点のある、この五反田周辺の警察を押さえたい。さすがに警察署にいる警察官を全員、一斉に洗脳するのは難しいですが、交番だと、中にいる人間の数も少ないので、洗脳しやすいと思います。五反田周辺の交番は全て押さえたい」
「交番襲撃作戦ですね」
青山くんが言った。




