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14話 ナギの居場所

 深夜の1時過ぎ、目を覚まして、メッセンジャーアプリをチェックすると、吉松店長からメッセージが届いていた。


『教祖様、ナギちゃんが、まだ戻ってきていません』


 俺の直感が、ナギの身に危険が迫っていることを告げていた。


 さっき、ニュースアプリ、スピードニュースで、目黒でサイコロステーキ状に切断された若い女性の死体が発見されたという記事を目にしたばかりだ。


 まさか、今回の被害者がナギではないよな?


 吉松店長から聞いた客の話も気になる。


 ナギを指名した“院長先生”と呼ばれる爺さんの客は、ナギに「解剖させてもらえないか」と言っていたらしい。


 冗談として言っていたらしいが、相当おかしな爺さんであることには変わりない。ナギは何らかの事件に巻き込まれてしまったのではないか。


 とりあえず、吉松店長に電話してみることにする。


「吉松店長、俺です」


「ああ、教祖様。メッセージを見ていただけたんですね。良かった……」


「ナギが戻っていないって、どういうことですか?」


「いつも通りなら、0時前には連絡が入って、それから店に戻ってくるはずなんですが、連絡もないし、戻ってこないんです。一緒に行っていたドライバーの沢田という男とも連絡がつきません」


「例の院長先生に電話したり、目黒にあるという自宅兼クリニックに行ってみたりはしたんですか?」


「院長先生とも連絡がつかないんです。大きな声では言えませんが、わしの知り合いの、他人の家に侵入する心得がある者に、自宅兼クリニックを見に行かせてみたのですが、灯りはついているのに、中には誰もいなかったようです」


 吉松店長、アウトローなおっさんだとは思っていたが、そんな知り合いまでいるのかよ。


 しかし、知り合いの泥棒に頼んで、中に侵入してもらっても、誰もいなかったということは、これはいよいよ警察に相談するしかないか。


 ただ、悠長に警察に届けている間に、ナギの身に危害がおよびはしないだろうか。なにか、ナギの居場所を知る方法はないだろうか?   


 そんな時、俺は、あるアプリの存在を思い出した。


「ちょっと、思いついたことがあるので、一旦、通話を切ります」


 女神様からもらったスマホに入っているアプリのひとつ、魔力探知МAP、あれを使うことはできないだろうか。


 前に魔力探知MAPを使ってみた時は、俺だけが赤い点で表示され、あとは魔力の大きさに応じて、人間が青い点として地図上に表示されていた。


 再び、魔力探知MAPを起動させてみる。


 俺が今いるのが、ナギのマンションだ。五反田駅から徒歩5分圏内にある。


 MAPではマンション周辺しか表示されていないので、倍率をさげて、より広い範囲が表示されるようにする。


 すると、五反田駅近辺にある雑居ビルに、赤い点がいくつか密集しているのが見えた。


 動いている赤い点のひとつをタップすると「吉松晋介(よしまつしんすけ)」という名前が表示される。吉松店長のフルネームだ。


 いいぞ。思った通りだ。女神教の信者は赤い点で表示されるようだ。この魔力探知MAPには、信者の現在地を示す機能もあるということだ。


 あとは、さらに倍率をさげて、広範囲を表示させて、ナギらしき赤い点を見つけるだけだ。


 ナギを示す赤い点は、意外とすぐに見つかった。中目黒のあたりだ。


 近くにドライバーの沢田さんを示す赤い点も表示されている。


 地図を拡大すると、西園寺内科クリニックという建物名が表示されている。これは、どうも噂の院長先生の自宅兼クリニックのようだ。


 やはり、院長先生の自宅から出ていないということだな。


 俺は吉松店長に再び電話をする。


「店長、ナギとドライバーの沢田さんの居場所がわかりました。まだ、院長先生の自宅兼クリニック内にいるようです」


「えっ、教祖様、そんなことがわかるんですか?」


「ええ、ちょっと、調べる方法があって……」


「さっすが、教祖様だ!! 何でもお見通しなんですね!!」


 いや、そんなことは全くない。というか、洗脳しているからヨイショしてくれるのだろうが、アプリで調べただけだし……、なんか恥ずかしい。


 以前、コンピュータが苦手な堀川店長に、旅行に行くというので、乗り換え検索結果をプリントアウトして渡してあげた時に、えらく感動された時のことを思い出す。


「今から俺も、院長の自宅に行きたいと思っています。コンビニ襲撃チームのうち、何人くらいがすぐ集まれそうですか? あと、さっき電話で言っていた、他人の家に入る心得がある人に、向こうで落ち合うことは可能ですか?」


「今日のメンバーだと、リョーコは、ちゃんと連絡がつかない奴なんで、ちょっとわからんですね。他の金岡、青山、稲田の3人は、教祖様のご命令なので、何としてでも、すぐに集合させます。あと、家に入る心得がある男は、院長の自宅前で、落ち合えるように手配しておきます」


 結局、コンビニ襲撃メンバーを店に集合させて、ハイエースに乗せたうえで、俺が今いるナギのマンションまで来て、俺をピックアップすることになった。そのうえで、中目黒の西園寺内科クリニックに向かう。


 ナギのマンション前で待つこと10分、夕方のコンビニ襲撃メンバーを乗せたハイエースが、エントランス前にとまった。


 ハイエースのドアが開く。中にいたのは、稲田さん、金岡さん、青山くん、そして、リョーコ。


 なんとか、リョーコとも連絡がとれたようだ。


「教祖様、数時間ぶり~」


 リョーコが風船ガムを膨らませながら話す。


 俺たちコンビニ襲撃チームを乗せたハイエースは、ナギを救出すべく、西園寺内科クリニックに向けて出発した。

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