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三話 姉の思惑

* * * *


 錬金術師の一族であるレイベッカ伯爵家。

 そのご令嬢であるミルカ様は、類稀なる才能をお持ちであるらしい。

 特に、ミルカ様が作成するポーションは物凄い効力があるらしい。流石はレイベッカ伯爵家のご令嬢であられる。


 そんな噂が最近、彼方此方で聞こえていた。


 そして、現在。

 サーシャが勘当された後、レイベッカ伯爵家の本邸に位置する一室にて。


 サーシャが過ごしていた部屋で、家探しでもするかのように机に置かれていたメモ用紙を漁る人影が一つ。

 亜麻色髪のその少女の名を、ミルカ・レイベッカ。


「……妾の子のくせに、生意気なのよ。ほんっと、いいザマだわ」


 彼女の怒りの矛先がサーシャに向いていた理由は、最近王都で流れている噂が一因していた。


 当初、ただの嫌がらせでサーシャのポーションを奪い、その不出来さを吹聴するつもりが、何故かサーシャのポーションの方がミルカが作るポーションより評判が良かったのだ。


 それも、一度ならず、複数回。


 しかし、サーシャが高名な錬金術師に師事したという話はなく、日々、ずっと図書館に篭りきりな人間であっただけ。


 だからタネがあるとすれば、ポーションの作り方に違いがあるのだろう。そう睨んだミルカであったが、サーシャは常に図書館に向かうたび、メモ用紙等、その全てを持ち歩いていた。


 故に、そのタネを暴くタイミングが無かったのだが、今回の勘当にて、その機会がミルカに巡って来ていた。


「でもこれで、目障りだったサーシャが消えた上、あのポーションの作り方も手に入った」


 それなりの路銀を渡しはしたが、その代わりと言わんばかりに、荷物を持ち出す事を認めなかった。

 その理由は、こうして評判の良かったポーションの作り方をミルカが手に入れる為。


「あのサーシャが評価されていた事は業腹であったけど、それも今日まで。これさえあれば、レイベッカ伯爵家の才女として、王宮に招かれる日も近いわね」


 己に、由緒正しいレイベッカ伯爵家の人間として相応しい才能が備わっていると信じて疑っていないミルカは、理想とする未来を夢想する。


 しかし、ミルカは知らなかった。


 サーシャの錬金術の腕は、単に図書館で毎日のように文献を読み耽り、培ったものだけでない事を。

 そして何より、錬金術師として特にその技量が卓越していた事を。


 アストレア王国が第二王子であるナガレが、己の母の病を治すため、隣国を訪れたものの、ミルカの父でさえ匙を投げた病を、サーシャが快方に向かわせた事を、彼女は知らなかった。


 サーシャ・レイベッカが、天才と称すべき錬金術師であった事を、まだ。

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