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家から追い出された私は、隣国のお抱え錬金術師として、幸せな第二の人生を送る事にしました!  作者: アルト/遥月@【アニメ】補助魔法 10/4配信スタート!
一章

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二十四話 カトリナちゃん

 それから部屋で服を着替え、ナガレと共に王城に向かう私であったが、門のところでふんす、と誇らしげに佇む少女の存在もあって私達は足を止めた。


 身長は140センチ程で、少女というより幼女。トレードマークだろうツインテールに纏められた碧色の髪の存在もあってかなり幼く見える。


 一瞬、迷子か何かかと思ってしまった私はきっと悪くない。

 だってこんなにも、ちっちゃい子だし……


「————誰がちびっ子か!!」

「うわっ!?」


 私の内心を見透かしでもしたのか。

 的確な一言が私の鼓膜を揺らす。

 大声だったせいで、耳がジンジンする。


「やれやれ。これだから新参は」


 大仰に、身振り手振りを含めて一頻り呆れる少女であったが、幼過ぎる見た目のせいで何故か申し訳なさよりも、生温かい目で見詰めてしまう。


「む、むむむむむ!!! その視線!! わたしをただのちびっ子とか思ってるでしょ!?」

「え、違うの?」

「聞いて驚きなさい? わたし! は! 王立魔法学園を首席で! 飛び級で! 卒業した超、超、超エリートな魔法師なの!! 断じてただのちびっ子じゃないの!!」

「うわあ、それは凄いね」

「ただのちびっ子って、ちびっ子の部分は認めるんだな、カトリナ」

「…………。ぁ、あああああ!! しまったぁぁあ!!!」


 勢いよくしゃがみ込み、ナガレにカトリナと呼ばれた少女は頭を抱えて奇声をあげる。

 見た目通り、中々におっちょこちょいな性格であるらしい。


「……もしかして、ナガレの知り合い?」

「あいつはカトリナ。カトリナ・メリアル。身長の問題で特注の正装にはなってるが、あれでも一応、歴とした魔法師だ。フィレールにいた頃、一度だけアストレアに顔を出してたんだが、俺はその時にガロンから教えて貰った」


 あぁ、道理で、と思う。

 カトリナちゃんが着衣している服は、私がガロンさんから渡された正装ではなく、少しだけアレンジされたものだった。

 だから、一目で魔法師だと気付ける筈もなくて。


「……お、お久しぶりでございます。殿下」

「ああ、久しぶりだな。ところで、カトリナも今回の件に参加するのか?」

「あ、は、はい。ガロン魔法師長が選抜なさった中に、光栄にも入れていただけて」


 当然と言えば当然なんだけど、ナガレと私とでは対応が天と地。というか、ナガレの時だけ露骨にカトリナちゃんはそわそわしていた。


「そうか。俺も今回、同行する事になっててな。いざという時は、サーシャを守ってやってくれ」

「はい! 勿論でございます! この命に代えてでも殿下を……って、あれ? サーシャ? あの、サーシャって」

「あ、サーシャは私だよ」

「…………」


 ぷるぷるとカトリナちゃんは震え出す。

 感情豊かだなあって思っていると、何故かめちゃくちゃ睨まれた。

 でも、ナガレの言葉に逆らうつもりはないのか。


「……わ、わかりました。気が向いたら守らせていただきます」


 不承不承ながら頷いていた。

 でも、気が向いたら、に限るらしい。

 なにそれちょっと酷い。


「ところで、カトリナが此処にいた理由はガロンからの伝言か何かか?」

「あ、はい。ガロン魔法師長が魔法塔の三階に来て欲しいと殿下達に伝えてくれと」

「なら、時間も押してるし、さっさと行くか」


 そう告げて、止めていた足を再び動かし、先行するようにナガレが歩き出す。

 それに遅れないようにと私もカトリナちゃんと一緒になってその後を追う事になった。



* * * *


 王城内。

 魔法塔に向かう道中にて、私は折角なのでカトリナちゃんと話をしていた。


「ねえねえ。カトリナちゃん」

「……そのちゃんってのやめてくれない? まるでわたしがちびっ子みたいじゃない」

「ちっちゃくて可愛らしいから、カトリナちゃんはカトリナちゃんだよ」


 私がそう言うと、カトリナちゃんは死んだ魚の目を思わせる瞳を私に向けてきた。

 一体、どうしたのだろうか。


「カトリナちゃんって、ナガレに対してだけ露骨に態度が畏まってるよね」

「当然でしょう? 殿下といえば、天才だとか、天稟だとか、そんな言葉で言い表すのも烏滸がましいとまで言われた超凄い魔法師なんだから。魔法師の端くれとして、敬意を表するのは当たり前なの」

「あー。ナガレって魔法すっごい上手いもんね。うん。私もあればっかりは絶対に敵わないって思っちゃってたなあ」

「ふ、ふぅーん。貴女、中々に話が分かるわね」


 どうやら、ナガレを褒めておけば、カトリナちゃんからの評価は上がるらしい。新発見。


「錬金術師と聞いてたけど、どう? ガロン魔法師長からは貴女も魔法師としてはそこそこの腕と聞いてるし、この機会に魔法師になってみるのは」


 きっと、カトリナちゃんは根っからの魔法好きな子なのだと思う。

 先程から、魔法の話題になるたびにあからさまに目を輝かせて楽しそうに語ってくれていた。


「少し昔に、ガロンさんからおんなじように誘っていただいたけど、やっぱり魔法師はいいかな」

「……才能があるのに?」


 割と敵意を持たれてるような気がしてたけど、どうにもそれは私の考え過ぎだったのか。

 怪訝そうにカトリナちゃんが首を傾げる。


「才能、って言うのかなあ。ナガレやガロンさんを見てるから私からすれば、才能……? ってなっちゃうなあ」


 少しの期間だけだったけど、魔法を教えてくれたガロンさん。

 錬金術を頑張る中で、側でずっと見てきたナガレの魔法の腕。


 それらを見てるせいで、才能と言われてもイマイチ、ピンと来なかった。


「何より、私は錬金術師としてナガレに誘って貰った人間だから。だから、錬金術師として期待に応えたいなあって思ってて」


 こうして誘ってくれてる事は本当に嬉しく思うし。有難いなって思う。

 ただ、私は魔法師より錬金術師の方が合ってるような気がする。


「それに私、魔物苦手だから魔法師にはなれないと思うんだよねえ」


 月夜見草を採りに向かった際の一件を思い出す。


 流石にいつかは慣れると信じたいけれど、あれが毎度、となると迷惑どころの騒ぎではない。

 やっぱり、錬金術師が私の性に合っているのだと思い至り、破顔する。


「……魔物が苦手なのに、よく今回の志願したわね」

「ナガレが心配だったからね。何より、一応これでも、魔法の才能があるとは言われてる人間ですから。戦える錬金術師の方が色々と都合がいいって聞いて」

「まぁ確かに。そっちの方が都合はいいわね」


 ガロン魔法師長や、殿下も認めてるみたいだし、多少魔物が苦手であれ、関係はあまりないかとカトリナちゃんは言葉を締め括った。


 多少どころか、アレルギー反応レベルで苦手なんだよねって返そうか迷ったけど、今度こそどうにか我慢するのだという意思表示も兼ねて黙っておく事にした。


 やがて、たどり着く魔法塔三階。


 そこには、青白の魔法陣が大きく描かれた床が広がっており、今回同行するであろう魔法師の方。

 加えて、ガロンさんの姿も見受けられた。


「んじゃ、全員揃ったみてえだから、そろそろ始めるとしますかねえ。〝ネードペント〟討伐、をよ」

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