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30.5月6日木曜日

「おい、さっさと攻撃しろ!」

 なんで俺が獣人の世話なんかしてんだ。


「あの……私、剣なんか握ったこともないです……」

 くすんだ茶色の頭髪からは、垂れた犬耳が目につく。


「京極さんに示しが付かねぇだろうがよ!」

 オークの大鉈を盾で受け止める。職業がタンクである俺に、こんな攻撃屁でもねえ。


「フガァオオ……、フガァオオ……」


「後ろがガラ空きだろうがよ!」

 何回いったらわかんだよ、この腰抜け。


「む、無理です…………」

 俺の後ろで、ガタガタと震える犬耳獣人のサナ。


「スタンバッシュだ」

 大鉈を受けつつ、スキルを使う。

 オークは痺れて動けなくなった。


「お前が戦えるようにしてやるよ、オラァ!」

 サナが握っている剣を、手ごと握ってオークに突き刺す。手間かけやがってクソボケ女が。


「こっちは大盾使ってんだ!両手が使えねぇことぐらい見りゃわかるだろ!!」

 怒ったオークの攻撃を受け止めて、力任せに押し返す。


「オラァ!死ねボケ!」

 盾の尖ってるところでオークを殴る。


「フゴォ……、フゴォ」

 ピンクの皮膚からは、紫色の血がドクドクと流れ出る。


「早く殺せよ!!」

 サナの手を後ろから剣ごと握りしめてオークを突き刺す。何度も何度も、死ぬまで突き刺す。


「ひっぐ……、うぅう…………」

 ボロボロと泣くサナにイラつく。誰のせいで手間取ってると思ってんだ。


「私なんて役立たず、置いて行ってくださいよ……」


「お前が仲間としてマトモにやっていかなきゃ、他の女を仲間にできねぇっていっただろ」

 女を引き込もうとしたら、アインの野郎がこの薄ノロに危害を加えずに成長できたら入れていいだと。反吐がでるぜ、まったく。俺たちが女に暴力なんて振るう訳ねぇだろうがよ、ボケが。


「おい、サナ。こっち来い」

 後、二、三匹殺せば稼ぎも十分だ。



「ハァ……ハァ……」

 今日も桜ちゃんはかわいいね。おっと、息が荒いと見つかっちゃうよ。

 僕の職業は表向き暗殺者ということになっているけど、本当はストーカーなんだよね。操り人形ってスキルもあるけど、桜ちゃんにはもちろん使わない。本当の愛はスキルなんかでは得られないんだからね。


「おおっ?善光のおブスが邪魔で、桜ちゃんの生着替えが見えないじゃないか」

 大馬玉置(おおま たまち)にとっては、海を一望できる別荘よりも、都会の街並み見下ろす高層マンションよりも、天井裏が僕にとってのベストスポット。


 お風呂上りの艶っぽい桜ちゃんもかわいい、かわいいよ。

 桜ちゃんのパンツを被ろうかな。


「ハァ……ハァ……」

 桜ちゃんの谷間、もちもち柔肌、ぷるぷる唇。


「うっ…………」

 それにしても、桜ちゃんはかわいいねえ。操って悪いことしたくなっちゃうよ。

 でも、僕は悪い子にはなれないんだ。いい子の僕に愛されてる桜ちゃんは幸せ者だよね。将来結婚したら、いい子をたくさん作らないとね。

 それにしても狭いね、大きい僕にはとっても狭く感じられるよ。汗だくになってきたし、僕もお風呂に入ってこようかな。


「あっ!大馬君」


「こんばんは、姫城さん」

 近くで見る桜ちゃんはもっとかわいいね。ベロベロ舐めまわしたいな。


「なによ、汗だくじゃない」

 おっと、月見委員長か。貧乳に用はないんだよ。


「それに変な臭いもしますね」


「失礼、善光さん。今からお風呂なもので」

 大浴場だから、行く前に桜ちゃんのブラジャーも外さないと。


「桜、どうしたんだい」

 三人揃ってなにかあったのかな。


「今、大馬君と話してたんだー」


「そうなんだ。みんなの仲がよくて僕も嬉しいよ」


「光彦も早く寝なさいよ」


「わかってるよ。じゃあおやすみ、三人とも」

 僕は部屋に戻って、ベットに寝転ぶ。


 もう、夜も遅い。


───────────────────────────────────────────────

 5月6日木曜日。

 学習机の角で頭を殴られた番柄君が、ロープで椅子に締め上げられている。教室の真ん中で、京極君がみんなに番柄君を殴るように強要する。


「全員一発ずつ殴れ。日々の鬱憤、溜まってるだろ?もしも手ぇ抜いたら、オレ様が代わりに本気で殴る。共犯になろうぜ」


 京極の目は常軌を逸していた。後ろに控えた、河原君と大馬君が金属バットを床に叩きつけてみんなを脅す。


「番柄君、悪いな。君のためなんだ

 僕は本気で殴る。これでみんなも、躊躇することで彼が余計に傷つくと理解するはずだ。


「聖野君ひどいよ。番柄君はなんにも悪いことしてないのに!」

 桜が泣いて怒る。


「桜の一発と京極君の一発。どっちが痛いなんてわかるだろっ……。僕だってほんとは、殴りたくなんてないんだ」

 悔しそうに手を握り、わなわなと震わせる。なかなかの演技だ。


 番柄君はクラスメイトに一発ずつ殴られ、切れた瞼や頬からは血が出て凝固して、顔のすべてが痣になった、人間とは思えない醜態だ。


 これで暗い顔をしたみんなは、笑顔になる準備ができた。

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