2.復活
そして、クラス全員が水晶に手を翳して最後に教師である鵠沼耕海が訝し気に手を翳した。
「なんでクソガキ共が俺より良い職についてんだよ……クソが」
水晶には詐欺師と出ていた。
名前 鵠沼 耕海
職業 詐欺師
体力 100
魔力 100
攻撃力 100
防御力 100
素早さ 100
「ほお、詐欺師か。教師であるお主の心根には悪が住み着いているといえそうじゃの。ちなみに人族は大抵ステータスが100前後じゃ、つまり普通ということじゃな」
ホッホッホと笑うクレイヘル。
「では皆の者、この後はブロン騎士団長について行け。お主らはまず、この城で訓練を受けてもらう。その後、魔王討伐の旅に出るのだ」
「ブロンよ、後は頼むぞ」
クレイヘルは色黒の騎士ブロンにそう言い残し部屋を出て行った。
「では行くぞ」
ブロンがそういい。その後ろをクラス一同はついて行った。
寂れた地下室から出て、広いグラウンドのような場所に来た。
「ここでは戦闘訓練を行う。試しに剣の扱いを教える。ミツヒコ、剣を構えろ」
聖野は剣を両手で握り構える。中々サマになっている、その姿にクラスの女子たちから歓声が上がる。
「始め!」
ブロンの掛け声とともに聖野が切りかかる。大振りの剣筋はあっさりと躱され、首元に刃が突きつけられる。にも拘らず、聖野は切りかかる。見兼ねたブロンに腹を蹴り飛ばされて蹲る。
「お前は死して剣を振れると思い込んでいるようだな。人の命は一つと心得ろ」
ブロンの言葉に聖野は睨みつけて怒鳴る。
「練習なのにやりすぎだろ!!ふざけんな!」
「そうだそうだー」
「聖野君かわいそー」
と女子たちから援護の声が上がる。
「お前たちは強力な力を得ているが、それだけで強くなれる訳ではない。ミツヒコのステータスは私を遥かに凌駕しているが、ステータス表示は最大値であって今現在の強さは己で見極めなければわからない。お前たちはまだ弱い、だから戦闘訓練を受けなけねばならない。分かったか」
ブロンは淡々と述べる。
そのブロンに食ってかかるのはクラスの喧嘩番長、京極紅蓮蛇。
「訓練なんざいらねぇな。お前をこの剣で殺してやるよ」
剣を片手にブンブンと振り回す。
「いってもわからぬなら体に教えてやる。かかってこい」
ブロンが言い終わるや否や突きを放つ。がしかし、横に弾かれて前のめりに足がもつれる。
ブロンは隙だらけの腹目がけて蹴りを放つ。ろくに態勢も整えられず、京極は吹き飛ばされ身もだえる。
「痛てぇな。クソ野郎が!!」
それを無視してブロンは残りのクラスメイトたちに向かって話す。
「訓練を受ける意味が分かったか」
「わかったよ……」
「……わかったわよ」
と恐怖に滲んだ声が次々と上がった。
ブロンに連れられたクラス一行は城を出て、隣接している兵士宿舎へ来た。
「ここがお前たちが当分の間過ごす兵士宿舎だ。男はあっちで、女はあっちの宿舎だ。全員に別室を用意してあるので中々快適だぞ」
案内された兵士宿舎と呼ばれる寮は堅牢さを重視した石造りの建物だが、一人部屋にベットもシャワーも付いている高校生には豪勢な部屋だ。
「わー、広ーい!!」
「すごーい!天井高ーい!!」
と女子たちは大騒ぎだ。
「気に入ってくれたようだな」
ブロンが話し出し、徐々に静かになった。
「訓練は明日から開始するので今日は自由に過ごすといい」
ブロンは立ち去り、自由になった生徒たちは部屋決めをしたり、自分のステータスの話しでバカ騒ぎし夜が明ける。
■
同日、召喚の間で番柄鹿路は騒いでいるクラスメイトたちの後ろ姿を眺めていた。
俺は死んだはずじゃ?ここは死後の世界か?と心の中で自問自答していたその時。
「異世界転移キターーーーーー!!」
オタクの砂沸琢磨が喚いていた。
そうか、ここは異世界か。死んだはずの俺がこうして生きているのなら、異世界に居たっておかしくはない。
生き返ったからなのか腕の根性焼きが綺麗に無くなっているし、折れていた骨が治っているからか体が軽い。目の前のクラスメイトたちに見つからないように事態を静観していると、彼らは水晶に映る職業で一喜一憂していた。
ここまでで、もう気づいていたが、どうやら俺は周りに認識されていない。もしかして幽霊にでもなっているのかと思ったけど壁や柱を触っても感触があるから生きた生身の人間なんだろう。
「ステータスオープン!」
オタクの砂沸が何やら独り言を繰り返しているが上手くいっていないようでぶつくさいっていた。
……自分の能力の確認か。あの水晶と同じことができないかと念じると自分のステータスが目の前に表示された。なんでステータスが表示されるんだと思うとともに、人の能力を数字で決めるなんて嫌な世界だなと思いながら確認する。
名前 番柄 鹿路
職業 復讐者
体力 666
魔力 666
攻撃力 666
防御力 666
素早さ 666
職業が復讐者って職業なのかと思はなくもないが、それより、ステータスが全部666ってところにツッコミを入れざるを得ない。悪魔的数字に復讐者……。完全に目の前のクラスメイトたちを殺せということだろう。
だが、勇者パーティーらしい聖野たちのステータスはとんでもなく高くて無理だろう。それに正直、俺の人生はこいつらに殺されたのは明白だけど、人殺しになんてなりたくない。
「すごい!!勇者だー!」
「私が魔法使い~!?やばー!」
とりあえず、職業診断でキャーキャーと騒いでいるクラスメイトたちを眺めていた。
「俺で最後だな」
担任の鵠沼がキョロキョロと当たりを見回して最後といったが俺はまだ水晶に手を翳していない。やっぱり認識されていないみたいだし、とりあえず黙っていよう。
黙っているとブロンがみんなを連れて行って一人になった。やっぱり気づかれていないみたいだな……。俺はクラスメイトたちの後ろをバレないようにつけていった。
「ここでは戦闘訓練を行う。試しに剣の扱いを教える。ミツヒコ、剣を構えろ」
斬りかかった聖野と京極があっけなく蹴飛ばされて、なんだか心がスッとする。
それとステータスは最大値を表しているようだ。殺すつもりはないし、現在値がいくらか知らないけど早いうちにでないとステータスが上がって殺せなくなりそうだ。
その後、ブロンについて行くクラスメイトたちの後ろについて兵士宿舎に来たが、寝ていると気配を消せない気がするから食事は城の厨房から頂戴して、城の空いている使用人室で寝ることにした。
そして、夜が明けた。