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23.ダンジョン

 ランドを出て、数時間も歩かない場所にダンジョンはあった。


「さあ、みんな!装備は持ったかい?」

 アインが今一度クラスメイト一同を見渡した。


「ボタンとサクラは、この魔法の杖を使ってくれ」

 牡丹には赤い魔晶石が先端についた黒く禍々しい杖が手渡され、桜には青い魔晶石が石突についた白い杖が渡された。


「これで魔法が効率的に使えるわけね」

 牡丹が杖を掲げてみせた。


「桜もみんなを守るんだよ!」


 意気込みとともに桜の胸が跳ねる。それを男子たちが厭らしい目で見ていた。


「公務にも使ってるものだから、ダンジョンから出たら預かるからね」


 アインを先頭に聖野たちクラスメイトたちが続く。


「中は案外広いんだね」

 聖野は辺りを見回す。岩肌に空いた洞窟を下っていくと、陽の射す広大な草原が広がっていた。


「なんで洞窟の中なのに太陽があるの?ていうか、なんでこんなに広いの?」

 牡丹の当たり前の質問にアインが答える。


「なぜかというと、よくわからってないのが答えだけど、魔物を生み出す瘴気が関係しているといわれているよ」


 アインがいうには、ダンジョンから強い魔物が生まれるのは瘴気と呼ばれる魔素が関係していて、その魔素はダンジョンの最深部に存在するダンジョン魔核と呼ばれる魔晶石から生み出されているというのだ。


「まあ、細かいことは後ででいいよ。まずは目の前の実戦だよ」

 前からはゴブリンとスライムが沸いて出てきていた。


「グゲゲ、ゲゲ!!」

 青いスライムを前衛に、木の棍棒や槍、剣を装備したゴブリンがにじり寄ってくる。


「ダンジョンの魔物はああやって協力して戦ってくる。ミツヒコ、グレタは前に出ろ、女子は火魔法でスライムに攻撃。守備職は女子の前で防御だ」

 アインが的確に指示を出し、クラスメイトたちはそれぞれの持ち場で拙いながらに陣形をつくる。


「『ファイヤーボール』」

 牡丹が複数の火の玉を創りだし、スライム目がけて飛ばす。


「魔物にはそれぞれ弱点があるんだ。スライムには物理攻撃が効きづらい反面、魔法には弱いよ」

 ファイヤーボールが当たったスライムは、魔石を残して蒸発して消えた。


「やぁ!」

 聖野がゴブリンの持っている武器ごと横一文字に切り捨てる。


「スキル勇者の剣術か、すごい技だ……」

 アインは戦闘を眺めながらひとりごちる。


「オラァ!!」

 京極は籠手を外して、素手でゴブリンを殴り殺していた。


「グレタ、防具はちゃんとつけるんだ」

 どうせいうことを聞かないとわかっていても、アインは口酸っぱくいう。


「殴り殺して、殴り殺す。ヒャハハハハ!!」

 次々にゴブリンを殴り殺す京極にクラスメイトたちはドン引きだ。


「ちょっとやばくない?」


「いつもよりえぐすぎ。マジ無理」


「グレタ、一人で戦うな!雑魚でも油断は大敵だぞ!」

 アインが必死に叫ぶが、京極には聞こえていないようだった。


「京極君、ちょっとは協力して戦おうよ」

 京極が殴り飛ばしたゴブリンを空中で叩き切る聖野。


「うるせぇ、オレ様はやりたいようにやる」


 その後もゴブリンとスライムを倒しながら進んでいく。


「みんな集まって!次の層に行くよ」

 アインが手招きして、草原エリアの奥の洞窟を下っていく。


「次は岩だらけか……」

 下った距離はそう長くないにもかかわらず、標高の高い山の麓にやってきた。


「なんか物理法則おかしくな~い?」

 愛心がその辺の石を蹴っ飛ばす。転がった石が岩にぶつかると、地面から岩の巨人ゴーレムが這い出てきた。


「ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…………」

 そのままゴーレムは愛心を殴り飛ばす。


「ぎゃああ!」

 腕が反対方向に曲がった愛心が激痛にのたうち回る。


「気を抜くなといっただろ!!シュンスケ、ガードだ!」

 アインが愛心を抱えて後退する。


「だりぃなあ」

 河原は大盾を構えて、岩石の腕を受け止める。


「おおっと、スキルがあるから楽勝だな」

 軽々と岩石の腕を跳ねのけて、さらに岩の巨体を吹き飛ばす河原。


「アミ、大丈夫か?サクラこっちだ!」

 アインは愛心の腕を元の方向に戻す。


「施陀さん、今治すからね……」

 桜がスキル奇跡の祈りを使う。少しの息苦しさとともに、緑色の光が愛心の左腕を覆う。


「痛みが引いていく…………?」

 すっかり痛みがなくなり、腕を動かして確かめる愛心。


「アインさん、もう倒したよ」

 聖野の後ろには縦に真っ二つになったゴーレムが岩場の石と同化していた。


「歩けるかい?」

 聖野が愛心に手を差し出す。


「きも……」

 愛心は手を(はた)くと楠と渡会の下に戻った。


 アインが前に出て、手を叩いて注目させる。


「みんな、聞いてくれ。今みたいに気の緩みが命取りになる。まだ二層の敵で強くないのにも関わらずにだ。油断してはいけない、わかったかい?」


 愛心の腕がすぐに治ったのを見ていたクラスメイトたちは、アインの言葉を真剣には聞かず気の抜けた返事を返すのだった。

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