12章【会わせない】
瑠璃視点です。
12章【会わせない】
2人で寄り添うようにして歩いている恋人たちを見ると、いいな、と思う。
それは子供の頃、友達がおかしを食べているのを見て、羨ましく思うように。他の女の子のように可愛い髪飾りが似合うことに、憧れるように。
瑠璃は、これから映画を観るであろうカップルを見て、微笑ましく思った。
「月島さーん、今のうちにあがっちゃってー」
「あ、はーい」
映画館の売店で働く瑠璃は、マネージャーから声をかけられ、嬉しく思った。朝の勤務時間を終えれば、この後はフリーである。
豊穣祭の準備期間中、授業は行われない。ということは事実上の休日なのだ。母は働き、まだ幼い弟や妹がいる瑠璃にとっては、とてもありがたいことである。準備期間中はシフトを増やし、家庭のことも行えるーーのだが、少しくらい、と瑠璃は気持ちを弾ませた。
(ちょっと休憩室借りて、書かせてもらっちゃおうかな)
もう瑠璃は3年になるが、文芸部にも所属している。豊穣祭に向けて部誌を発行する予定だが、まだ瑠璃の小説は完成していなかった。
放課後の時間はバイトにあてている以上、書く時間は少なくなる。だが、少しずつでも自分の物語を、瑠璃は書き進める。
(バイトの休憩室なら、会わないよね)
ーー用心深く瑠璃は考えながら、バックオフィスの中に入り、休憩室に入る。中に入ると、中川が待っていたとばかりに「あ」と顔をあげた。
「月島さん、出口で月島さんを待っているって人来てるんだけど」
「え?」
身に覚えがないため、瑠璃は首を傾げる。
(誰だろう)
制服から着替えないまま、瑠璃は休憩室を出て、従業員用の出入り口から頭をひょっこりと覗かせる。
「あ」
そこには思いもよらない人が立っていた。
瑠璃の目の前に現れた人物とは?(*_*;
次の話は、本日の21時に更新予定です。




