力無く
はたりと、その腕から力が抜けていくのを感じた。
それが彼が死んだ、ということを意味していると理解していたが、心がそれについていかない。
何が起きたか、というのはあまりに突然で。
警報音が鳴ると同時に、看護師らがどこからかかっとんできた。
不思議と、それが怖い、とは思わなかった。
不治の病だと彼に告げられたのは、つい数週間前のこと。
この間、たくさんのことがあった。
大学生だった私と彼は、本当は卒業後に結婚をする予定だった。
それをグンと繰り上げて、ついこの前、結婚式を挙げた。
指揮から着替えてそのままの足で新婚旅行へ。
彼の妻として、最初で最後になるだろうという覚悟で行った旅行だった。
帰ってきた直後から、彼は入院し、そして今日という日を迎えた。
感染するものではなかったということが、彼とずっと居れる理由だった。
それでも、入院後1か月ももったということが、私たちの絆を深くしてくれたと信じている。
私が死ぬまで、このことは忘れないだろう。