第7話:流れゆく能力(2)
「拓也さん!」
叫ぶミナモ。
「水の玉・・」
そう呟く拓也。
「さぁ、どうする・・どうしてみせる」
そう言うリュート。
「俺がやるしかないだろ!」
思い切り刀を振り上げた拓也。
「二人とも下がってろ!」
拓也の言葉に対して素直に後方に下がるミナモとモエ。
そして、拓也が刀を振り下ろすと同時に刀にまとわれていた風が放たれリュートの水の玉を全て弾き飛ばしたのだった。
「風の・・力か・・」
そう言うレイド。
「初めて見る能力だな・・それに力も凄そうだ・・」
そう言いながら笑みを見せるリュート。
「拓也さん・・本部の能力者が本気になったら拓也さんでも・・」
そう言うモエ。
「わかってるさ・・さっきの水の玉が遊び程度の力だっていうことはな・・だけど・・」
リュート達を見る拓也。
「レイド・・手は出すなよ・・あいつと1対1で勝負したい」
「全く・・まぁ、お前の実力なら問題ないだろうしな・・好きにやれ」
呆れつつそう言うレイドなのであった。
しばらくの間流れる静かな時間。
足音も立てれば響いてしまいそうな今の現状に、ミナモ達もその場から動けずにいた。
「!」
最初に動いたのは拓也だった。
「こいつは武器持ってないんだ・・いくらこいつの能力が凄くても・・」
そう言う拓也。
「確かに正論だな・・武器を持っている方が有利だが・・誰も持っていないなんて言ってないぜ」
そう告げるリュート。
「何だと・・」
リュートが掌を上に向けるとそこに集まる水。
「見ての通り俺の能力は水・・お前の風と違って目に見えるものを操る・・だからこそ・・こういう事も可能だ」
と、掌に集まった水は刀のような形に変化していった。
「水が・・刀に・・」
そう呟く拓也。
「本物の刀と違って中身は水だ・・だけどな・・能力の扱い次第で水は鋼以上の硬度を得ることも出来るんだぜ!」
そう言うと拓也の刀をぶつかり合うリュート。
「何だよ・・この感触・・本当の刀みたいに・・」
押され始める拓也。
「お前まだ能力を得てそんなに経ってないだろ・・風の力が不安定だぜ」
そう言うリュート。
「何でそんな事がわかるんだよ」
拓也が聞くと
「能力者はな他の能力者に対して色々敏感になるんだよ」
そう言い放つリュートなのであった。
「こいつ・・やっぱり強い・・」
そう言う拓也。
「リュート・・何時までやるんだ?一応俺達の目的は・・」
「別にいいだろ・・あいつらのこと確かめるのは何時でも出来るんだしよ」
そうレイドに言うリュート。
「ミナモ・・モエ・・二人とも先に行っててくれ」
「先にって・・拓也さん!」
そう言うミナモ。
「今なら俺がこいつ等引き止めておける・・ミナモには目的があるしな・・少しでも目的に近づくために」
「・・・」
「ミナモさん・・どうするんですか?」
尋ねるモエ。
「大丈夫・・ですよね」
「あぁ・・爺ちゃんとの稽古とかで身体は丈夫だからな」
そう言う拓也。
「モエさん・・拓也さんが動いたら一気にここを駆け抜けていきましょう」
「は、はい・・」
小声で会話するミナモとモエ。
「じゃ、いくぜ!」
拓也の身体から吹き荒れる風。
「おぅ、どんどん来い!」
そう告げるリュート。
そして、それと同時に走り出すミナモとモエなのであった。
再びぶつかり合う拓也とリュート。
そして、この場を駆け抜けていくミナモとモエ。
「リュートの奴・・あの風の能力者以外興味無しか・・しかし俺も暇だからな・・」
ミナモとモエが前を通っていくのを見た後、一瞬で二人の前に姿を現したレイド。
「えっ・・」
足を止めるミナモとモエ。
「悪いけど・・ここを通すわけにはいかないよ・・まだお前たちが何者かわからないからな・・」
と、二人に手をかざすレイド。
「ミナモさん、ここは私が・・」
杖を構えるモエ。
だが、次の瞬間二人の身体には電撃が流れ二人はその場に座り込んでしまった。
「今の・・」
「あの人・・雷の・・能力者・・」
そう言うモエ。
「リュート・・あまり遊んでないで終わらせろ・・ここで倒しておけば調べる必要もないだろ」
「・・・拓也・・だったな」
リュートが聞くと
「だったら何だよ・・」
「俺はお前と本気で思い切り戦ってみたい・・だからこんな所で倒すのはごめんだな」
「おい!リュート!」
レイドが大きな声を出すと
「こいつらの目的は知らないけどな・・厄介なのは拓也だけみたいだしな・・こいつらが何かしでかしたら俺が止めに行く・・それでいいだろ?レイド」
「・・お前が風の能力者に何を見たのかは知らないが・・俺は関係ないからな・・お前に付き合って俺まで上から色々言われるのは面倒だからな」
そう言うと拓也たちに背を向けるレイド。
「そう言うことだ・・次に会う時まで強くなってろよ・・そうすれば戦いが楽しめるからな」
そう言い残しリュートはレイドと共にこの場を立ち去るのであった。