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第5話 始まる新・高校生活、本当にここが高校⁉(後二)

「えっ⁉ た、戦うって……そもそも、君は誰なの⁉」

「私は天照(あまてら)紗也乃(さやの)! あんたと同じクラスの女子よ!」

 ちらっと八龍君のほうを見ると、天照さんの言っていることが正しいのか確認していた。

 まぁ、違うクラスだったとしても能力がわかるという点では得するかもしれないけども。

「……うん、確かにあるな。五組の欄に、天照紗也乃って」

「クラスの事で嘘なんか言うわけないでしょ⁉」

「い、いや……これにはわけがあって……!」

「うるさいっ! とりあえず私と戦いなさい、霧宮光月っ!」

 剣を構えて、突撃の態勢をとる天照さん。でも、その構えならまっすぐにしかこないのはわかりきっているし、避けることは簡単なはず……

「……っ! 光月、早くその場から逃げろっ! そこにずっといるのはまずい!」

「えっ? 何を言っているの、八龍君……」

 何かに気づいた八龍君が必死に叫んでくれたけど、いまいちよくわからなかった。

 そして、その戸惑いが僕を後悔させることになった。

「がはっ……!」

 何が起きたのか、よくわからない。だけど、僕の全身を激しい痛みが襲った。

 次に襲ったのは、何かが高速で通り過ぎたような突風。飛ばされた僕はそのまま壁にぶつかった。

「大丈夫か、光月!」

「うぅ……八龍君、さっきの言葉ってどういう……?」

「あんなわかりやすい構えをとるってことは、何かあるってことだろ⁉ それぐらい気づけよ!」

 言われてみて、僕もようやく気づいた。天照さんだって能力を持っているんだ、あんな簡単に予測できる構えには意味がある。

 見えなかった攻撃、そしてアニメとか漫画でよく見る『人が高速で移動する』ときに発生する突風。

「も、もしかして……天照さんの能力って……」

「今のでわかったようね? 私の能力名は《|天月神の(アルテミス・)絶領域(ゾーン)》、私自身の身体速度や攻撃速度を向上させるの」

 簡単に言えば『神速』っていうものかな。中二病を患ったら一度は誰もが考えそうなことではあるけど。

「どうしたんだ、光月? そんな立場が悪そうな顔をして」

 八龍君や僕とは違う、自分の体に効果を付与するもの。ゲームで例えるのならバフだろうか。

 そういった類のものは、よく知られているけどほぼ最強と言っても過言じゃない。特に、神速とかそういう効果なら……

「……八龍君、トランプの効果って使える?」

「え? 使えるとは思うが……お前、俺を巻き込むのか?」

「……二人一組で戦うんでしょ……この学園での戦いって」

「……っ! そうだったな、別に一人で戦うのが正義のヒーローのお約束っていうわけでもないしな」

 武器を構えた八龍君は武器の構造にあったのか、トランプが内蔵してある部分を展開させる。

「……やっぱり、最初だからかもしれないけど必殺技につながりそうなカードはないな……」

「大丈夫だよ、天照さんを吹き飛ばせるカードがあれば、問題ないから」

「それなら問題ないぜ。……でも、どうするんだ? あいつの能力的にぶつけるのは……」

 八龍君の心配していることはもっともだ。高速で動けるものに攻撃を当てることは簡単じゃない。

 それに武器や能力についてある程度知っている八龍君と違って、僕は何も知らない。

 ……だけど、能力が使えなくたって

「たぶん、僕の能力は聞いてるとは思うけど、 武器についてはそこまで聞いてないと思うんだ」

「そ、そうなのか?」

「それに、天照さんだって能力を使い始めたばっかなんだ。まだ直線でしか動けないはず」

「……そういうことか。わかったぜ」

 僕の考えが伝わったのか、八龍君は快くうなずいてくれた。

 そう、今から僕がしようとしていることは。この作戦は〈今後の〉天照さんには通用しないだろう。

 今日という日だからこそ通用する、この作戦は。

「期待はずれが凄いんだけど……作戦会議は終わったの?」

「あぁ、今から俺も参戦するけどいいよな?」

「別に? そこの〈他称〉最強君よりも動けることを願うだけだか……らっ!」

 さっきと同じ構えをとる天照さん。きっと、あの構えをとらないと能力が発動しないんだろう。

 八龍君は数枚ある中から一枚のトランプを取り出す。僕も天照さんに見えないように武器を構えた。

「いくわよっ、霧宮光月!」

 《天月神の絶領域》を発動させ、一瞬で姿を見えなくさせる天照さん。

 狙いは僕で間違いない。だったら、見えなくても……!

「そこだっ!」

「……っ⁉ 銃⁉」

 僕から見て真正面、直線コースである場所に弾丸を一発、撃ち放った。

 驚いた天照さんは加速するのを止めて、放たれた弾丸をよけようと身をそらす。

 よく見えるな……って感心したけど、その行動はよくないことだった。

「危ないわねっ! 死んだらどうする」

「うぉらぁっ!」

 態勢を崩した天照さんに襲いかかる、八龍君のタックル。死角からの不意打ちに天照さんは抵抗も回避もできず、弾き飛ばされた。

「きゃああっ⁉」

「よっしゃあっ!」

 さっきの僕みたいに壁に激突する天照さんをみて、勝ち誇るように声をあげる八龍君。

 い、いくらなんでも女の子にあんなタックルをぶつけてもいいのだろうか……。

「あ、あの……八龍君……」

「どうしたんだ、光月? そんな青ざめた顔をして」

「さすがにあれはやりすぎなんじゃ……骨とか折れてたら……」

「は? そんなこといったらお前なんてさっきこいつに斬られてたからな?」

 よく生きてるな、僕! ……ってよく考えたらそうか、いくら非現実的な能力や武器があるからって本物だったら簡単に人を殺すことができる。

「あのときは死んだって思ったぜ。けど、お前は痛がっているだけだった。ということは、どんな致死的な攻撃も、痛覚だけで済むってことだよな」

 なんか俺って天才じゃねっていう雰囲気をだしている八龍君だけど、その考えはよくないと思う。

 もしかしたら、死なないってだけでそれ以外の事は

「痛いじゃない! あんた女の子に対して少しは遠慮っていうものを知らないの⁉」

 頭を押さえながら天照さんが八龍君に文句を言い始めた。案外、八龍君の予想は当たっているのかもしれない。

「だいたい、なんであんたが攻撃してくるの⁉ なんなの、タックルって!」

「あ、あの……」

「うるせぇな、そういうお前だって光月に容赦なく攻撃してたじゃねぇか」

「私はいいの!」

「自分勝手だな、お前……」

 ずいぶんな暴論をぶつけ始める天照さん。八龍君はすでに呆れていた。

「というか霧宮光月、どうしてあなたは能力を使わないの?」

「……え?」

 まだ八龍君には言いたいことがあるみたいだったけど、天照さんは僕に話の方向を変えてきた。

「話を聞いていた限りじゃあ、こいつにあんな事させるよりあなたの能力を使った方がいいはずでしょ?」

「……お前、本当に人の会話を聞いていたのか? でも、俺も普通に能力の一部は使えたし、お前も使えるんじゃないのか?」

 少し馬鹿にされたと思ったのか、天照さんが八龍君の足を蹴った。少し痛そうだ。

 けど、天照さんの能力は置いとくとしても八龍君の能力……というか武器は少し不思議だった。

 推測でしかないけど、八龍君の体当たりの威力が上がったのは武器の、正確にはトランプの力だろう。

 そもそも、本当にあれは能力に関係があるのだろうか。《正義は必ず勝つ》の能力は、ピンチになれば確率で攻撃力が上昇するっていうものだし……

「あっ、そうか。八龍君のその武器は能力、というより変身ポーズに関係しているのか」

「そうなのか? まぁ、確かにこの武器は俺がポーズをとった仮面ライダーのものだけど」

 ということは、僕の能力も何か特定の条件が存在すると言う事になる。紙には書かれていない、特別なものが。

 そして、与えられた能力とは別に、それに関連した能力がある。

 そのことを二人に話すと、納得したような、いかないような表情をしていた。

「本当かよ、その話……」

「僕にもわからない。けど、八龍君のことを考えたら……」

「……そういえば、私の能力検査をした先生がね」

 僕の話を聞いて何かを思い出したのか、天照さんが一枚の紙を見せてくれた。

「能力の説明はここの紙に書いてあることがすべてじゃない、隠された条件や能力も存在するって言ってたわ」

「つまり、俺や光月、それに……天照の能力もまだ未完成ってことか?」

「そういうことね。霧宮光月が最強って言われるのも、そこに理由があるかも」

 やっぱりか。

「ということは、今の霧宮光月を倒しても意味がないってことね」

「倒すって……僕達、同じクラスだよね……?」

「そんなの関係ないわよ。今回はテストプレイってことで、ちゃんと能力を使えるようになったらもう一度勝負を挑むから」

 そう言うと、天照さんは《絶界閉鎖(アブソード・ロック)》とつぶやいた。

「ねぇ、その《絶界閉鎖》って」

「え? ……ここに来る前に、通りすがりの先生が教えてくれたの。《絶界起動》を解除するときはこう言いなさいって」

 なんでそのことは放送しないのだろうか。絶対、上の階でみんな困っているだろうに。

「そうなのか……《絶界閉鎖》」

 八龍君は信じたようでそうつぶやいたので、僕も続けて《絶界閉鎖》とつぶやく。

 どうせ、さっきまで見てた景色と変わらないはず。……あっ、でもさっき僕と天照さんは壁にぶつかっていたから、へこんでたりしているんじゃあ……

「「「……え?」」」

 しかし、僕達の口からでた言葉はそんな気の抜けた言葉だった。

 なぜなら、僕達の目の前はさっきまで誰もいなかったはずなのに、クラスを見にきたらしい人達で溢れていたからだった。

「いったいどうなってんだ……? さっきまで誰もいなかったよな……」

「それに、私が激突した壁にも何も残っていないし……」

 驚きのあまり、現状を呑み込めていない僕達をよそに

『えー、連絡します。入学式の準備が整いました。新入生諸君は三階の教室の自分のクラスに集合するように』

 入学式が始まる事を告げる放送が廊下に響いた。


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