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第2話 始まる新・高校生活、本当にここが高校⁉(中)

 遅れて体育館に来た僕たちに対して、先生たちは怒るようなことはなく、『早く検査を受けてね』と比較的すいている列に案内してくれた。

「お、怒られなくてよかったな、光月」

「う、うん……てっきり、もう終わっているものだと思っていたけれど……」

 体育館にはたくさんの生徒が列を作って並んでいた。みんな期待や不安を抱えているような顔をしているけど。

「ねぇ、そもそもなんでこんなに朝早くから集まる必要があるの?」

「さっきも言ったろ? この学園で自分が使うことができる能力がわかるんだよ。光月……お前ちゃんと入学のしおりとか読んだのか?」

 そういえば、そんな話を玄関でしていたっけ。八龍君のベルトのせいで話してたことが記憶に残っていなかった。

 能力。一度しか目を通さなかったしおりには確か……

「雫星学園で入学した時にメモリーとして渡される、使用認可制の力……だっけ」

「そうそう、どんな力がもらえるのかはあなた次第! 夢と希望にあふれているよなぁ!」

 まぁ、確かに夢と希望にあふれているかもしれない。……『中二病』を患っているのなら、だけど。

 普通の人とかがこのことを聞いたら馬鹿みたいに思われるんだろうなぁ。

「次、霧宮君。こちらへ」

「おっ、呼ばれたぞ。後でどんな能力をもらえたか教えてくれよ?」

「うん、わかったよ」

 八龍君と別れて、僕は簡易的に設置されたカーテンをくぐった。

「君が霧宮光月君だね?」

「は、はい」

 中にいたのは受験しに来た時に態度がでかかったあのメガネの先生だった。

「これから君がこの学園内で使用できる能力がなんなのか、検査をする。だがその前に、いくつか注意しておいてもらいたいことがあるから、よく聞いておくように」

「注意しておくこと……ですか?」

「まず一つ目、これはパンフレットにも記載していたが……今から君がもらう能力は簡単に人を殺すことができる。プログラムで具現化しているとはいえ、感じる痛みや恐怖は本物だ」

 そんなに恐ろしいものをいまからもらおうとしているのか、僕は。

 というか、本当にプログラムによるものなのだろうか、その能力って。

「よって、本校内での使用は許可制、校外での使用は禁止にしている。これを破ったものは、即退学となるから気をつけるように」

「は、はい……」

「二つ目、これは」この後のことになるが……全員の能力検査が終わると、クラス発表がある。それまで、自分の能力のことは他言しない方がいいだろう」

「ど、どうしてですか?」

「それは……能力検査をしながら話をする。少し長くなるからな」

 メガネの人は受験の時にみたやつと同じ装置を取り出すと、僕の頭に取り付けた。

「今回はそのままの姿勢で計測する。目は閉じてくれ」

「はい」

「よし……それで、さっきの話の続きだ。この学園では普通の学校と同じような定期試験のほか、対クラス戦の『流星祭(ダストスター)』が行われる」

「『流星祭』……?」

「それ以外に、普段の学校生活において戦闘を申し込まれるかもしれない」

 能力の使い道といわれたら、それぐらしかないだろう。日常でなんか使ったらただ頭が残念な人だし、そもそも中二病で考えそうなものなってバトル系のやつだろうし。

「戦いにはもちろん褒賞がある。負けたものに対するデメリットもな」

 なるほど、ただ戦闘を行うだけでは面白くないのかもしれない。

 ……って中学生のころの僕だったら思っていたかもしれない。

 けれど、それだけならどうして他人に能力について教えちゃだめなんだろうか。

「いずれ能力については知られる。ただ、最初はだれもが分からない状態にある」

 そこまで言われて僕は気づいた。この先生が言いたいことは、『後から能力を知られているほうか、最初から知られている方、どっちがいいか』ということだろう。

 八龍君だって、もしかしたら別クラスになって戦わなければならなくなるかもしれない。

 その時に、僕の能力の事が知られていたら……。

「……わかりました。能力のことは、他言しないようにします」

「そうしてもらえると嬉しい。……検査は終了した、結果を記載した紙を渡すから少し待ちなさい」

 話しているうちに検査が終わったらしく、装置を外した先生はどこかへ行ってしまった。

 ……なんか、検査のほかにこの学園の恐ろしいところを聞いたような気持だった。

 今からもらう能力は、簡単に他人を殺すことができる。その能力は、みんなが持っている。

「メモリーで渡すって言っていたけど、エアガンみたいにセーフティ装置とかあるのかな……?」

 ますますプログラムだけですましていいのか疑わしくなってきた。

「待たせたな。これが君の能力だ」

 戻ってきた先生に手渡された紙を恐る恐る見てみる。

「えっと……僕の能力は……《宵闇の(ロード・オブ・)(ダークネス)》……? 相手の能力を封印して攻撃する……ですか?」

「言い忘れていたが、能力の説明はかなりおおざっぱだ。今後の学園生活で自分の能力がどういうものか学んでいけばいい」

 ……そういうことは、最初に言ってほしい。

 けれど、《宵闇の宴》……かぁ。そういうものに近いものをよく考えていたなぁ、中学生時代に。

 渡された紙には、能力名と本当におおざっぱな説明のほかに、支給される武器について書かれていた。

「って、武器なんかもらえるんですか?」

「一つの能力につき、絶対の必殺技が一つある。それを発動させるために必要なのが、メモリーをさすことができる武器だ。……後の事は、これからの学校生活で学んでいくといい」

 まだ検査を終えていない生徒がいるからと、僕は追い出されてしまった。

 いくつかまだ聞きたいことがあったけれど、それは自分で見つけ出せとでも言わんばかりに。

「遅かったな、光月」

 僕より後に入ったはずなのに、僕のことを待っていたらしい八龍君が近寄って来た。

「随分と長話していたいただけど……何かあったのか?」

「うん、この学園のことで少し。八龍君は先生に何か言われたの?」

「俺は能力のことはしばらく他言するなってことだけだな。それ以外の事は紙に書いてある……だと」

 八龍君はそれだけしか言われていないのに、どうして僕はあんなに言われたのだろうか。

 確かによく紙に書かれていることを読んでみると、あのメガネの先生が話していたことのほとんどが書いてあった。

 ……ということは。

「やっぱり、あの装置って人の頭のレベルとかも計測できるんじゃあ……」

「……どうしたんだ、光月? 心なしか顔色が悪いようにみえるが……」

 心配してくれる八龍君には何にもないと話したけど、不安は積もるばかりだった。

「ならいいけど。そろそろ体育館を出ようぜ。入学式にクラス発表があるみたいだし、それまでどこか他のクラスで休憩してようぜ」

「そうだね。まだの人もいるみたいだし」

 紙の下には、『検査が終了した生徒は三階の空き教室で待機していること』って書いてあった。

 人数は少ないけど、僕や八龍君みたいに少し遅れて来た人が検査を受けに列を作っているから、少し時間はかかるだろう。

 そう思った僕達が三階に行こうと体育館の入り口に向かおうとしたときだった。

「……ご、ごめんなさいっ! 寝坊してしまって、遅刻しましたっ!」

 自分が遅刻していることにかなり焦りを感じていたのか、かなり荒い息をあげながら一人の女の子が僕達の目の前に現れた。

 茶髪のロングヘアーをなびかせながら、黄色の瞳をちらつかせるその姿は、何故か僕達を惹きつけて……

「……あっ」

 目の前に僕達がいることに気が付いたらしいその女の子は、急にあたふたとしはじめた。

 しばらくして何か気持ちに余裕でもできたのか、急に腰に手を当てると。

「……貴方達、そこをどいてもらえるかしら? 私は早く神聖な儀式を受けないといけないの」

 ……なんというか、いかにも中二病を患っているとでも言わんばかりの感じできたな。八龍君なんか驚きで固まっているし。

「聞こえなかったのかしら。早くそこをどかないと」

「わ、わかりました! 今すぐいなくなるので……い、行くよっ、八龍君!」

 これ以上余計な言葉が出る前に、ここをどかなくては。

 その一心で僕は動くそぶりを見せない八龍君を引きずって体育館を後にした。


「いやぁ、なんというか……高校生になってもああいう奴っているんだなぁ」

 階段を上っている途中、なんとか現実に引き戻すことに成功した八龍君がそんなことをしみじみとつぶやいていた。

「中学のころはあんな感じの時もあったんだけどよ、さすがに言葉だけは気を付けようと思ったんだよなぁ」

 そう思うのなら、今朝腰につけていたベルトの方も何か思って欲しい。

 現に今、八龍君の腰には仮面ライダーのベルトが……

「あれ、八龍君のベルトがないっ⁉」

「ん? あぁ……能力検査をしたときに、そのベルトは能力バレするかもしれないって言われたからな。外して今は鞄の中に入れているんだ」

 確かに、もし八龍君の能力があの仮面ライダーとほぼ同じような能力だとしたら、知っている人からすればベルトを見るだけでわかってしまうのか。

 さすが先生、そういう点ではフェアに行こうとして

「次そのベルトを着けて学校に来たら、没収するって言われたけどな」

 ……ただ婉曲的に『学校生活に必要のないものは持ってくるな』って言いたかっただけなんだな、たぶん。

「でも、あの女子はさすがにやばかったな。人前であんな風に言えるなんて」

「そう……だね、僕も驚いたよ」

「お前よく平常心で対応できたな、俺なんてしばらく唖然としていたのに」

「そ、それは……」

 中学生のころ、僕もあんな感じだったなんてとてもじゃないけど言えない。

 平常心……かどうかわからないけど八龍君みたいにならなかった理由だって、そういう過去があったからだし。

「……中学時代に、ああいう友達がいてさ」

「そっか……苦労したんだな、お前って」

 ありもしない架空の友達さん、ごめんなさい。

 雑談しているうちに、三階についてしまった僕達はそのまま一番近い空き教室に入ろうとして。

「……座れる場所、ないな」

「……まぁ、遅れて来たからね……奥の教室に行こうよ」

 少しの時間ではあると思うけど、座りたい僕達は一番奥の空き教室に向かうのでした。


「……そういえばさ、ベルトって大事そうにしてたけど、鞄に詰め込んで大丈夫なの?」

「ん? ちゃんと自作のケースの中に入れてあるから、心配する必要がないんだよ」

  

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