導入
瀬谷 秋徳はごく普通の男子高校生だ。アラームが鳴り、朝起きて、顔を洗い、朝ごはんを食べ制服に着替えいつもの通りに学校に通う。その過程で、地下鉄に乗るのだが、そこで不思議な出来事に出会う。
「あれ、何で人がいいひんの?」
路線上の端っこなので、人数は少ないがいつもなら誰かしら乗っているはずなのに誰も乗っていない。嫌な予感がするので、降りようと席を立ちドアに向かうと、出発する前に流れるアナウンス無しに扉が閉まった。さらに、嫌な予感がした。頭の中では、幽霊による怪奇現象やドッキリなど、現状を理解しようとする。
しばらく、電車は動き。駅のホームが見えてきた。ようやく降りれる。秋徳はホッと胸をおろした。
電車が止まり扉が開く、先程は席からの移動で出るに間に合わなかったので、扉前で待機しすぐに出ようとした。
「待ってください」
突然、後ろから声がした。
振り向くと、自分が先程座っていた所に1人の少女が座っていた。身長は160センチくらいの少女で、制服を着ていることから女子高校生だろうか。
髪は黒色で、セミロング。顔はまるで作り物の様に整っていて、誰もが美人と答える様な程の美がよく当てはまる少女だ。
「え……あ!」
その少女に見入ったのか、居なかったはずの少女の存在に驚いたか、はたまた両方か。そのせいで、出ることが出来ず、扉が閉まってしまう。
「座ってください。話はそれからです」
車内に凛とした声が響く。
見た目も声も素晴らしいとなると、人間かどうか疑ってしまう。
秋徳は少女に向かい合う形になるように座る。
「まず、戸惑っているでしょう。質問があるのでしたら、お答えします」
「では、何故周りには僕たちしか居ないのでしょうか?」
「それは……そうですね。私のことから話した方が手っ取り早いでしょう。私は、神です」
突然の告白に秋徳は驚く。だが、これは番組のドッキリかもしれない。ここは、のっておこうと秋徳は決心する。
「えっと、神様が何故俺に?」
「まずは現状の説明をします。他にも乗客がいない理由としては、貴方が通ろうとした改札口の先にゲートを作り、この作られた閉鎖空間に飛ばすようにしかけました。ので、ここは貴方の知っている似たような空間です。勿論、こちらの用事が済んだら解放します。その用事も、些細なもの……少しお話しするだけですよ」
秋徳は考える。ドッキリにしては、設定に凝ってると。そして、こんな通勤時間帯の貸切の電車は現実では不可能であり、少しずつドッキリだという考えがおかしく思ってくる。そして、察する。少女は本当のことを話しているのだと。
「えっと……そのお話しとは?」
「貴方は、我々が行う試練の代行者として選ばれました」
「試練?代行者?」
少女は頷き、秋徳に向かって語りだす。
「はい。我々にも、権力と言うものがあり、それを大きくする試練があります。しかし、我々は色々と力量が違いがあるので、なるべく同じにするために代行者……つまり人間に代わりに行ってもらうことです。勿論、代行者にもメリットがあり、試練で打ち勝てば“どんな願いでも叶えます”」
秋徳は普通の高校生であり、特別な個性は無い。自分より優秀な人は多くいるはずだ。そんな中から何故自分が選ばれた理由が見つからずにいた。
「なぜ、俺を?」
「理由は、貴方には本当に叶えたい願いがあるからです」