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第8話 ツンギレ少女は、気高い!

「断るッ!!」


 ラキは声高らかにそう叫んだ。


「――ほぉ?」


「私はお前が嫌いだ!! そのような暴力的な物言いに、私は身体を許したりはしない!! 私には、命より優先するプライドが存在するんだ!!」


「はっはっは! よく言った! ならば貴様のその安い『プライド』とやらを、これから試してやろう! だが、最初に言っておく! 我の情婦にならなかった場合、間違いなく殺すぞ! その前提で、これより執行する我が尋問を受けよ!」


 ロリ天使は、そんな勇者らしからぬ発言をすると、謎の空間からビー玉のような球を取り出し、ラキに向けてピッと指で弾いた。


 その球が『バシィッ!』とラキの(ひたい)に命中すると、球が瞬時に溶けて身体に浸透していく。そしてラキの身体は脱力しきったかのようにその場に横たわった。


「――なんだ……これは……! 私の、身体が、動かん……!」


「クックック……その球は四肢(てあし)の動きを封じる魔道具だ。魔法とは少し作用機序が異なる。貴様の魔力吸いとやらの能力は効かんぞ……!」


 たぶん俺がポイント交換をしたアイテムだな。

 中身を確認してはいなかったが、そんな効果のあるアイテムがあったとは。


「さて、殺す前に、まずは相応の痛みを与えておかなくてはな……!」


 俺の身体を操っているロリ天使は、そう言いながらラキの元まで歩いていく。


 そして、彼女の生足を両手で掴んだ――。

 おい、コラ! 俺の身体でなにしてんだお前!


「エルフの女よ、関節技(サブミッション)という言葉は知っているか? 剣だの魔法だのが発達した、この野蛮な世界には存在しないのかもしれんが、我の世界には相手に傷をつけず痛みだけを与える高尚な格闘術が存在する」


 すると、ロリ天使は掴んでいたラキの両足首をくるりと大きく回転し、彼女の姿勢をうつ伏せにさせた。


「むぎゅ……!」


 ごろんと身体を回転させられたラキは手足の自由が効かないからか、受け身がとれずに顔を土だらけにしていた。

 そして、ロリ天使はラキの身体の上に移動し、両脇にラキの両足首を抱えた。


 あ、これは『逆エビ固め』だ……!

 関節技の中では簡単な部類だが、一番痛い技でもある。

 本来は首に掛ける技も脚と同じくらいの威力だが、脚は2つあるので両脚に掛けられるとこれが一番痛い。


「な、何をしているのだ……! 私の両脚を押さえて、何の意味があるのだ……?」


 ラキが不思議そうに尋ねている。

 やっぱり、この世界には関節技の概念がないんだ。


 ロリ天使はそのまま腰を落とし、ラキの尻の上で中腰の姿勢になった。

 プロレスで言うところの『極まる』準備ができた状態だ。ラキは気づいていないかもしれないが、この状態になれば、たとえ身体を動かせたとしてももう抜け出せない。


「――誠司さん。このエルフの女の子、どのくらい痛めつけましょうか? 左手の指だけ制御を渡すので、立てる指の本数で教えてください」


 ロリ天使は小声で、俺にだけ聞こえるように囁いた。

 すると、俺は自分の左手の指を自由に動かせるようになった。


 ――おお、こんなこともできるのか。

 それにしても、ロリ天使のやつめ……痛めつける前提で話を進めるなよ。

 できれば今すぐ止めてほしい。


 しかし、いまは指の本数でしかコミュニケーションがとれない。

 しょうがない。せめて一番弱く、だ。


 俺は指を1本だけ立てた。

 そう。レベルが5段階ある内の、レベル1だ。


「指が1本……分かりました。『()番強く』ですね!」


 違うわ!!


 ロリ天使は話を終えると、腰を落としラキの尻に全体重をかけた。

 そして、てこの原理よろしく、ラキの両足首を思いっきり引っ張った。

 あ、これは()()()()。間違いなく。


「痛ッ! あ、ああ!! ぐぁあああああああ!!」


 ラキは絶叫を上げている。

 これは実際に技をかけられてみないと想像ができない痛みだ。

 直前までキョトンとしていたはずのラキは、直後に来たあまりの急激な痛みに押し黙ることができなかったようだ。


 脚の付け根は、本来想定しない方向に強く曲げられると必要以上に痛みが伴う構造になっている。

 股関節にある靱帯の圧迫により、足のつま先まで束ねている痛覚神経を丸ごと攻撃するからだ。


 ちなみに、プロレスラーは相手を痛めつけることが主目的ではないので、逆エビ固めをする時には腰を浮かせて威力を弱めるのが普通だ。

 だが、ロリ天使のそれは腰をピッタリと付けて全力でやっている。


「はっはっは! どうだ、痛いか! 安心しろ、身体には一切キズは付けん! さぁ、我に情婦として一生を捧げると誓え!!」


「ぐぅぉぉおお! こ……! 断るッ!! 私は、意地でもお前の好きにはさせん!!」


「ほぉ! これはなかなか調教しがいのある女だな! それでは、意見が変わるまでもっと痛めつけてやろう!」


 ロリ天使は両脇に力を入れ、さらにグイグイと重心を後ろへと移動させた。


「ぐああああああ!!」


 おいおい、そろそろ止めてやれよ。

 ――と思っていた矢先、俺たちの前に救世主が登場した。


「勇者様……ッ! もう勝負はついております故……! ラキについては、ご厚情を賜りますようお願い申し上げます……!」


 ずっと黙って見ていたグインが止めに入ってきた。

 止めに入るなら、もうちょっと早く来てくれよ。

 そもそも、こんなことになった元凶はお前だし。


「我が覇道に茶々を入れてくれるな、グイン! 早々に視座を下げよ!!」


「はっ!」


 ロリ天使の恫喝を受け、グインは即座に片膝をついて頭を下げた。

 唯一の抵抗勢力が……!

 誰か、ハーレム作りが覇道だとか言ってるこの変態を止めてくれ。


「さぁ、エルフの女よ! 意見は変わったか?」


「ぐぁああ! か、変わらん! 私は断じて、首を縦に振らん!!」


「ふふふ……。痛みで頭が回らんか? ならば、貴様が選ぶべき道を懇切丁寧に教えてやろう……!」


 ロリ天使はそう言うと逆エビ固めの体勢を解いて、立ち上がった。


「ふぅ……うう……」


 ラキが技から解放されて安堵の表情を浮かべていると、ロリ天使は周りをつかつかと歩いてラキの頭の横で止まった。

 すると突然、うつ伏せで横に寝ていたラキの頭部を踏みつけた。


「――! ぐ、ぐぐぅ……!」


「クックック……! そろそろ仕上げだ。我は最初に言ったな、『情婦にならなかった場合、間違いなく殺す』と。いま貴様の頭部に置いた我が足にちょいと力を込めれば、貴様の人生はここで終わる。まずは落ち着いた頭でその事実を強く認識しろ」


 ロリ天使はまた脅し文句を続けた。

 どうやら意地でもハーレムに加えたいらしい。


「さあ! エルフの女よ! 我の情婦となれ! 圧倒的強者に支配される喜びを教えよう! 『服従』か『死』か! 幸運に思え! 明日という日を生きられる道を、たった一つだけ用意しておいたぞ!」


「私は……屈しないッ!」


「はっはっは! 駄目だ! 我の情婦になると誓え! さもなくば頭をすり潰すぞ!!」


「断る! 私のプライドは随一だ! 死んでも絶対に忠誠を誓わん!! 構わないから早く殺せ!!」


「えーと……、我の情婦にならないと、死んじゃうけど、いいの?」


 ロリ天使の声のトーンが急に弱くなった。


「構わんと言っているだろう!! いいからやれッ!!」


 ラキが予想外に命を投げ打つ発言を続けたからだろうか、ロリ天使は少しあたふたし始めた。


「どうしましょう、誠司さん。なんか脅しが通用しません……。もう、話の流れに身を任せて、このまま殺っちゃいますか?」


 流れに身を任せないで!!

 いいからもう止めなさい。


「あー、えーと、すみません。一旦お身体をお返ししますね! あとはよろしくお願いします!」


 『プシュー』


 あ、身体が動せる!

 ロリ天使め、自分で話の流れを作っておいて全部俺に丸投げしやがって……。


 俺はラキの頭の上に置いていた足をどかし、半歩下がった。


「オホン! えー、エルフの女よ! 貴様の、その、自身の命すら厭わない闘争心に敬意を表する! よって、処刑を免除する!」


 俺は片言のロリ天使口調で、解放を宣言した。

 俺が急に趣旨の変わった発言をしたからだろうか、うつ伏せのラキは何も反応せず、ずっと押し黙ったままだった。


「え、えーと……ラキさん?」


 俺は怪訝に思い、ラキの肩を起こして顔をのぞき込んでみた。

 あ、これは――。


「気絶してる……」


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