第42話 ロリ天使さん、壊れる!(後編)
「うっ……」
少しくらっとする。
あれ。なんか、もう酔ってきたかな……。
先ほどシルフィが俺に飲ませてきたのは酒だった。
味はビールに似ていた。
この飲みやすさと、それでいて独特な匂いは……シャンディガフか?
たしかに俺は少し、酒に弱い体質だ。
だが、これは……。
『ズモ、ズモモモ……』
!?
こ、これは……!
俺の物体Xが……!?
――ッ!
間違いない……さっき飲んだ酒は、媚薬入りだ!
なんて効果の速さだ……。
「セージ様……」
シルフィは顔を紅潮させ、俺の頭部を抱きしめる。
そして、そのままゆっくり顔を近づけてきた。
『チュ……ンチュ……』
また、キスされた。
「ん! んん……!」
なんて馬鹿力だ……!
抱きしめられた頭はびくともしない。
口の中でも舌をグイグイと入れられている。
――ふと気づくと、他の女の子の様子もおかしい。
「はぁ……ふぅ……」
『ギュ~!』
いつの間にか、興奮しきった数人の女の子が、俺の手足にぎゅっと抱き着いている。
他の子も、俺の足の裏や指を一心不乱にペロペロと舐めだしていた。
手も同様だ。
……既にマッサージでもなんでもねえ!
リラックスするようなBGMとは全く似合わない展開になってきた。
『ヌル、ヌルヌル――』
俺の鼠蹊部をマッサージしている2人組も、さらにきわどい部分にまで手を移動させ始めた。
「「はぁ、はぁ……セージ様……」」
……間違いない……!
あと10秒も経たない内に『触って』くる!
俺の物体Xに絶対触るという鉄の意志をひしひしと感じる……!
もう、回避不可能か……?
失敗した。
異世界の女の子が、まさかここまで積極的だとは思っていなかった。
「ちゅぱ……。あ、すみませんセージ様……うつ伏せの状態でのキスだと、首がしんどいですよね……」
シルフィはそう言うと、俺の口から顔を離して左側頭部のほうへ移動した。
「今度は左耳、舐めますね……!」
『ネチャ、ネチャネチャ……』
シルフィが俺の左耳を舐めだす。
既にカチュアが右のほうを舐めているので、これで両耳だ。
耳に最接近しているためボリュームが大きく、他の音は何も聞こえなくなった。
「えへへ~! 誠司さん、ハーレム生活を満喫していますね☆」
ロリ天使だ。
いつの間にか俺の顔のすぐ前で正座している。
俺は両耳を舐められて何も聞こえないはずだが、ロリ天使の声だけはなぜかハッキリ聞こえるようだ。
「ロリ天使……! 俺のいまの状況、分かってる……? すごく、困ってるんだけど……」
両耳を舐めている2人には聞こえない小さな声で、俺はロリ天使に話しかけた。
「あれ? 誠司さん、いま何に困っているんですか?」
よし、ロリ天使との会話は通じる!
「見れば分かるだろ……! 全身が取り押さえられて、身体中をいじくり回されてるんだが……!」
「あ、なるほど~! 女の子の人数が多いですもんね☆ それで困ってるんですよね?」
「ああ、そうだ。さすがにこんな人数を相手にするとは予想していなかった。助けてくれないか……?」
とりあえず、いつもの脅しで構わないから、さっさと女の子たちを部屋に帰してほしい。
「もっちろ~ん! お助けしますよ~☆ 準備ができたらいつでも魔法唱えてください~!」
よし!
なんとかなりそうだ……!
「ちゅぱ……」
そうこうしていると、シルフィが耳を舐めるのを止めて、俺に優しく囁いてきた。
「セージ様……いつでも『仰向け』になっていいですよ……! 私たち、準備できてますから……」
くそっ。
俺がいまどういう状態になっているか分かった上で言ってるな……!
いまの俺が『仰向け』になると、とんでもない絵面になるぞ。
媚薬の効果がピークを迎えているみたいだからな。
『シュッ! シュル、ヌルヌル……!』
下半身にいる鼠蹊部2人組はラストスパートをかけている。
間違いない、秒で決める気だ。
そうはさせるか!
2人組に物体Xを触れられる前に、俺は魔法を唱える。
「『勇者の威光』!」
――俺がそう唱えた瞬間、身体から眩しい光が溢れていく。
俺は心の中で、身体の指揮系統を一つずつ、ロリ天使に移譲していく。
そして、唱えてからほんの2~3秒ほどで、ロリ天使が俺の身体の全てを掌握した。
「――クックック……! あーはっはっはっは!!」
ロリ天使は俺の身体を使って、声高らかに笑う。
うつ伏せの状態なのに、よくそんな元気な声が出せるな。
「セージ様……?」
シルフィがきょとんとした表情をする。
「はっはっはっ! 素晴らしい雌犬どもだ! 我に対する絶えぬ奉仕と敬愛……。称賛に値する!」
「「「あ、ありがとうございます! セージ様!」」」
褒められた女の子たちは感謝の台詞を言う。
ヌルヌルしていた手も舐めていた舌もピタリと止まった。
よし、いいぞ……!
「座して並ぶが良い……。我が貴様らに褒美を与えてやる……!」
ロリ天使がそう言うと、女の子たちは「はっ!」と返事をした。
『『『ゾロゾロ……』』』
すると、ベッドやカーペットの上へ次々と正座して並び始めた。
俺の身体は既に解放されている。
よし!
もう完全にこっちのペースだ。
ここまで来れば、あとはテキトーなことを言って彼女たちを部屋に帰すだけだ。
「クックック……!」
そう呟いたロリ天使は『仰向け』へと体勢を変え、起き上がった。
――ロリ天使さん!?
……いま俺の下半身がどんな状態になっているかを分かってるよな……?
そして、ロリ天使は両手を腰にやり、ベッドの上で直立した。
「「「おお……!」」」
何の『おお……!』だよ。
……いや、今回は分かる。
紙パンツがヤベー形になってるからな。
「貴様らの奉仕と敬愛の精神は、この身体に澱みなく伝わった……! どれ、一心同体の主である我も、王たりうる姿を見せんとな……!」
……ん? ロリ天使……?
ロリ天使は腰にやっていた両手を、天に仰ぐように広げた。
「覇ッッ!!」
そう叫ぶと、紙パンツはビリビリに破けてベッドの上に散らばった。
ロリ天使さん!?
「おお……! 両手を使わずに、紙パンツを破るなんて……! まるで魔法のよう!」
「これが猛る、『真の王の剣』だ……! とくと拝観するが良い……!」
――おいおい!
お前なんで勝手に全裸になってるんだ!!
俺が露出狂みたいじゃねえか!
39人の女の子は喉を鳴らして次々と口を開いた。
「なんて雄大な……!」
「なんて壮大な……!」
「なんて遠大な……!」
「なんて甚大な……!」
一人ずつ感想を言わないで。
「クックック……! 『性行為』も『戦闘行為』もある種、同じようなものだ……!
先に手を出すということは、手を出されることもあるということ……! 貴様らにその覚悟はあるか?」
「「「もとよりその覚悟です! よろしくお願いします!!」」」
女の子たちは全員とも異口同音にそう宣言し、頭を下げた。
「はっはっは! それではよろしくされてやろう!」
よろしくされないで!
っていうか、ロリ天使……普通に約束を破ってないか?
「さて、我に奉仕をする愛らしい貴様らではあるが、唯一足りないところがある……!」
「え……? その足りない部分というのは、いったい……!」
シルフィがそう言うと、ロリ天使は口角をクイッと上げて口を開く。
「それは『人数』だッ! たかだか三十数人……ハッ、何するものぞ!
我を満足させたければ、その『3倍』は持ってこいというものだ!
しからば、足りない3倍分をその身体で補え! 1人につき、最低3度は抱いてやる! 貴様ら、今夜は眠れると思うなよ……!」
ロリ天使さん!?
完全に俺との約束破ってるよな!?
「「「はい! 望むところです!!」」」
くそっ。
コイツらもコイツらでわけ分かんねーし……。
「はっはっはっ! 可愛い雌犬どもだ! さぁ、準備ができた者から我が剣を『掴め』! 順番に愛してやろう!」
「「「はい!」」」
『『『バタバタ……!』』』
女の子たちは堰を切ったようにバタバタと立ち上がり、まるでパニック映画のゾンビのように俺の身体に群がり始めた。
そして全員が全員、発情して目がトロンとなった猫の様相で、あっという間に俺の身体を覆いつくしてしまった――。
もう、勝手にしてくれ……。




