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天 落 者  作者: 吉吉
第1章 異世界転落
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反省と行動

 まず、今日わかったことからだ。


 まず、ここは私がいた世界ではない。そして、この世界にはスキルや魔法がある。

 スキルは自分の努力で手に入れられる。それから………。


 あれ、そういえばスキルってどうやって持ってるかどうか調べるんだろうか?

 ゲームのウインドウみたいに出てくるのか?

 神様がお告げをくれるのか?

 はたまた何か調べる装置やスキルがあるのか?



 しまった、相手に合わせることを優先してたから、聞いてなかった。

 それに、エリーゼ姫は結界魔法っていうスキルを持ってるっていってたけど、今日受けた魔法の説明には出てこなかったな。基本的な魔法とは違うんだろうか?

 魔法といえば、自分の使える属性ってどうやって調べるんだ?魔法の覚え方は?


 …………


 はぁ、これじゃあダメだ。自分に凄い力があるかもしれないのに、その調べ方を聞いてなきゃが意味ないな。

 昔から、何か一つのことを気にすると、他のことが考えられなくなるのは変わってない。全然成長してない。


 そういえばあの大臣、凄い力にこだわってたけど、まさかこの国戦時中なのか?それで戦力が欲しくて力にこだわってたとか?




 スキルや魔法より、この国とこの世界について先に聞くべきだったか。いや、戦士や魔道士といったジョブがあることから、何かと戦う可能性はあるということだ。それが人であれ獣であれ……。


 よし、次はもっと慎重に話をしていこう。もし戦争をしていたら、逃げることも考えないと。



 ………………



 よし、考えが纏まった。相手が誰であれ、次に話ができる機会があったら、


1、この国の情勢の確認、戦争してるかどうかもさりげなく聞いてみる。


2、スキルや魔法などの能力の確認方法と、自分の能力の確認。


3、近隣の町や国の情報。万が一、逃げなきゃならない時のために。


4、あと、一般常識も調べないとな。この国の通貨も知らないし。というか、今、一文無しだ。とりあえず、能力を確認してから、自分に出来る仕事を探さなきゃ。


 これからやるべき事が決まったところで、


グゥ〜〜


 と、腹の虫が鳴った。そういえば、いつのまにか結構時間が経ってるみたいだ。時計がないから、時間の感覚がわからなかった。

 ふと壁に目をやると、オレンジ色の光が差し込んでいる。


「夕日か……」


 この世界にも夕日があるんだな。そして、窓あったんだ。窓に全く気付かなかったなんて、よほど余裕がなかったんだな。まあ当たり前か。死んだと思ってたら、知らない世界に来てたんだし。


 私は窓を開けて外の景色を見てみる。高さ的には4階ぐらいだろうか。下を覗くと少し離れた場所に、3階ぐらいの高さの城壁がある。その先に草原があり、さらにその先には大きな森と山が見える。


「キレイだな」


 そういや、自然をゆっくり眺めるなんて、何年振りだろう。生きることに疲れて、ただ、家と職場を往復するだけの生活だったからなぁ。友達も彼女もいないし、勤務先が潰れてからは、さらに酷い状況になって余裕なんて全く無かったから。


「……キレイだ」


 再び呟く。


 そこに、ちょうど『コンコン』とノックの音が響いた。


「はい」


 ガチャ


「ヨシキ様、ご夕食をお待ちしまし……」


 ん?エルさんがとまっている。


「あの、どこか具合でも悪いのでしょうか?」


「え?いえ、大丈夫ですが、どうかしましたか?」


「いえ、泣かれていらっしゃるので……」


「えっ?」


 私は自分の頰に手を当てる。どうやら本当に泣いてたみたいだ。


「だ、大丈夫です。ちょっと窓の外の景色があまりにもキレイだったもので……」


「そうでしたか、大丈夫なのでしたらよろしいのですが」


 エルさんは私をじっと見つめてから、


「見ず知らずの土地で不安も大きいでしょうが、あまり無理なさらないで下さい。」


「ありがとうございます」


 エルさんはテーブルの上にテキパキと食事を並べていく。


「本来でしたら国賓としておもてなししなければならないのですが、いきなり見ず知らずの世界に来て、知らない人たちに囲まれて食事をするのは心身に負担がかかると思いましたので、こちらにご用意させて頂きました」


「あっ、お心遣いありがとうございます」


「いえ、国王様の命令ですから」


「国王様が?」


「はい」


 エルさんはニッコリ微笑む。

 そうか、最初に会った時も、国王様はこっちのことを慮ってくれたっけ。あの自分の都合しか考えてなさそうな大臣も制してくれたし。

 次に会った時は、ちゃんとお礼を言わなければ。


 それにしても……、私はエルさんを見る。

 なんか、さっきとは雰囲気が全然違うな。さっきまではとてもしっかりした印象だったのに、今はとても物腰柔らかく穏やかで、それなのに仕事が早い。

 やっぱり先生として、エリーゼ姫の前では毅然とした態度をとってるんだろうか?


 そんなことを考えてる間に、夕食の準備は終わっていた。


「お待たせ致しました」


「うぇっ?」


 ヤバい、変な声が出た。


「あの、どうかなさいましたか?」


「えっと、これ、私一人の夕食ですか?」


「はい、天落者様がいらしたと聞いて、料理長が張り切りまして。ですが、無理に全て召し上らなくても大丈夫です。残されたということは、満足いくまで召し上がっていただけたということですから」


 ああ、たしか残さなかったら、足りなかった、相手を満足させられなかったっていう考え方があるんだったっけ。

 

「それにしても、豪華な食事ですね」


 食材名はわからないが、キレイな彩のサラダに、琥珀色のスープ、小さめのサイズだが肉が3種類と魚も3種類、バゲットみたいなしっかりしたパンもある。あとはデザートだろうか?フルーツにパイ、ドーナツっぽいものもある。


「はい、この国は商業国ですから、多くの食材が集まってきます。それに農業、酪農も盛んですので、新鮮な食材も手に入りやすいんです。輸出もしているんですよ」


 そういえば、たしか商業国トレーって言ってたっけ?ということは、商売が盛んな国ってことか。だとしたら、なにか商売をして生きてく選択肢もあるわけだ。

 それに、輸出、つまり貿易をしてるということは、少なくとも戦争中ではないたいうことだよな?


「どうかされましたか?」


「いえ、なんというか、この国は平和なんだな〜と思いまして」


「はい、そうですね。戦争はここ数十年起きていませんし、とても豊かな国ですから。もしかして、とても大変な国にお住まいだったのですか?」


「いえ、私の国もとても平和な国でしたよ」


 精神的にはともかく、物質的には平和な国だったよな?戦争もうちの国では起きてなかったし。


「それでは、料理が冷めてしまう前に、お召し上がり下さいませ。」




 ◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎


「ふぅ〜」


 ヤバい、ものすごく美味かった。最近はコンビニ弁当ばっかりだったし、食えればいいや、ぐらいの気持ちで生きてたから、まともな食事は本当に久しぶりだ。多分、前に料理屋で働いてた時以来じゃないか?


「やっぱり、ワインも貰えば良かったな」


 食事の時、ワインも勧められたが、水にしてしまったんだよな。慣れない場所で酔っ払うのはマズい気がしたから。

 でも、本当に美味しかった……。




 と、余韻に浸ってる場合じゃないな。

 とりあえず、戦争中ではないことと、商売が盛んな国だというのはわかった。

 あとは自分の能力の確認と、一般常識について調べないと。


 でも、もう今日は無理か。食事をしたら、とても眠い。

 なんか1日がとても長かった気がする。


 さっきエルさんに教えてもらった、ベットの脇にある魔石に触れると、部屋の明かりが消えた。


「明日から、なんとかこの世界で頑張らないと…………」


 私は不安を感じながらも、瞼を閉じた。

 そして疲れからか、すぐに眠りについた。














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