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天 落 者  作者: 吉吉
第1章 異世界転落
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灼熱の世界

「あっちぃな」


 17層に降りてきて最初の感想がこれだ。17層は火山地帯で、常にマグマを流している山があり、沸騰するくらいの温度の川が流れ、時折火山弾が飛んでくると言う地獄のような場所だった。


 せめてもの救いは、普通に歩ける地面がある事だろうか。これが溶岩の川なんかが流れてたら、おそらく探索は不可能だ。まぁ神が作った大迷宮なんだから、探索できないことは無いだろうが、それにしてもきちんとした装備を持っていない人はかなり厳しいだろう。



 最初は砂漠の時と同じ装備で行こうと思ったのだが、暑さが半端ではなく耐えられなかった。なので水晶のある部屋で一旦休み、冷気の魔石を組み込んだ魔道具を作った。そしてそのまま食事と睡眠を取ることに。


 夕食は気になっていたアイアンベアーの肉だ。地属性の肉は常に硬さが変わらないとの事なので、焼いたりマリネにしたり干し肉にしたりしてみたところ、やはり硬さは変わらなかった。干し肉にすると普通はかなり硬くなるのだが、この肉は焼いた時と変わらない硬さだったので、ヒートリザードよりも向いているかも知れない。


 そして十分休息を取り、改めて出発したのだが、


「ここは人が来る場所じゃないな」


 探索してわかったが、この層は岩だらけで植物は一切生えていない。時折地面から高温の蒸気が吹き出し、視界が蒸気で塞がれているところに、マグマの池があったりと自然? のトラップもあってかなり注意が必要だ。当然道もなくどこへ行けばいいのかも、普通は分からないだろう。

 だが、


「ふぅ、あのマグマが流れているところの100m手前辺りか……」


 どこへ行けばいいかオレには直ぐにわかった。今回は向かうべき場所が最初から視界にあったので、すぐにピンときたのだ。なので足早にそこへ向かう。温度的には魔道具のお陰で快適なのだが、どうも視覚的に熱く感じてしまう。こう言う場所は出来るだけ早く終わらせてしまうに限る。



 出てくる魔物はどれも火や炎属性で、触れると火傷をしそうな炎の毛皮をまとった奴らだ。名前はフレイムウルフとバーストボア。

 フレイムウルフは炎を纏ったまま集団で撹乱しようとしてきたし、バーストボアは爆発を推進力にして突っ込んできた。


 こういう相手は近づかれると大変なので、遠距離からストーンバレットで倒していく。16層と違ってストーンバレットの効きが良い。やはり同属性だったから効きづらかったんだな。倒すと毛皮と肉と魔石を落とした。


 探索や魔物の相手を最小限にして、目的の場所へたどり着く。ここも岩と岩の間に人が通れるスペースがあり、そこを通ると階段があった。もちろん直ぐに下りる。



「今度は寒いな……」


 下りると一気に気温が低くなったので、魔道具をしまう。他の層でもそうだったが、迷宮部分が地上部分と区別されているのは助かる。迷宮部分も灼熱地獄だったり、水の中だったりしたらたまらないからな。



 この層の魔物の特徴は炎をまとっている。つまり燃えて光っているのだ。だから間抜けな事に、薄暗い迷宮の中でもかなり遠くにいてもすぐにわかってしまう。なので不意打ちを食らう心配がほとんど無い。


 ここで新しく出てきた魔物が、マグマスライムだ。その名の通りマグマが動いて襲ってくるのだ。だが動きは遅いのでサクッと倒すと、熱石と魔石を落とした。


 どうやらこのマグマスライムの魔石は、炎と地の複合属性みたいだ。スノウウルフの魔石が氷と風、ヒートリザードの魔石が火と風の複合属性なのと同じだ。


 熱石は常に熱を発し続けている石で、カイロの代わりになりそうだ。


 他にも炎を纏って突撃してくるフレイムバードも出てきたが、こちらは羽と肉、魔石を落とした。


 魔物を倒しながら、迷宮部分を進む。どうやら16層以降は迷宮部分の1層目に魔法陣、2層目にボス部屋があるようで、いつものように魔法陣の近くまできたのだが……。


「さて、どうするかーー」


 16層の魔法陣ではかなり不愉快な目にあったからな。また同じような事が起こるんだろうか? このまま無視して進んでも問題は無いよな? そう思いながらも生来の貧乏性が出てきて、勿体ないと思ってしまう。



 結局、勿体無いという気持ちの方が強く、魔法陣の場所へ向かう事にした。もしかしたら16層が特別なだけで、この層では何も無いかもしれない。



 魔法陣の場所へたどり着いたので、いつものように鑑定してみると、



 保護魔法ーー魔法を掛けた物を保護し壊れや破れ、切断などから守る 生物には無効 持続時間は込めた魔力による



 これは、常時魔力を込めていれば武器や防具なんかも壊れなくなるという事か? だとしたら気兼ね無く魔晶系の武器なんかも使えるな。これは便利ーーなんだが、あとは魔法陣に入っても何も起きないかどうかだ。


 …………


 迷っていても仕方がない。オレは魔法陣へ足を踏み入れた。



 ◻︎ ◻︎ ◻︎ ◻︎ ◻︎ ◻︎ ◻︎ ◻︎



 ここは、どこかの王城だろうか? 王と思わしき人物が目の前にいる騎士に対して何か命令をしているが、声は聞こえない。前回の時もそうだが、どうやら映像だけで音声はついてないようだ。


 王の命令を受けた騎士は、全身をすっぽりと覆う全身鎧を着て目の部分以外を覆われた兜をかぶり、大きな剣と盾を持って退室していった。


 場面は変わり、どこかの戦場が映し出される。そこでは先程の騎士が、一人で無双をしていた。魔法が放たれ矢が飛び交い、戦士たちが剣を振るう中、全くの無傷で剣を振るい続けている。剣も魔法も効かない相手に、周りの敵たちは次第に戦意を無くしていき、最終的に降伏していた。


 そんな戦いの場面が何度も続き、敵を全滅させたり戦わずに降伏してきたりといった場面が終わると、また王の前に騎士が立っている場面になった。だが最初と違うのは、騎士がギラギラと野心的な目に変わった事だろうか。


 その後騎士は王に認められ、王女と結婚する事になったのだがーーその後の展開が早かった。



 騎士は王女との結婚が決まるや否や、王を斬ったのだ。そして、自分に逆らう者全てを粛清していき、ついに玉座に座る事になる。が、結局王になっても体は人間だ。


 夜、ベッドの上で王女と契りを交そうとした時、襲われたのだ、王女に。王女は枕の下に隠してあった短剣で男を刺す。しかし王女の細い腕では戦場で戦ってきた男の胸板を貫くことはできず、僅かに傷をつけたに過ぎなかった。


 だが、その短剣には毒が塗ってあったのか、男は体に力が入らない状態になる。驚いた顔をしながらも、よろめきながら逃げ出すが、そんな男にとどめを刺そうと刺客が迫る。


 間一髪、解毒薬を飲むことができ、刺客を追い払った男は鎧兜に身を包み剣と盾を持って城から逃げ出す。そこからは見るも無残な話だった。


 何度も来る刺客を倒しながら森を彷徨い、汗にまみれながらも、無防備な状態で刺されたのがトラウマになっているのか、鎧を脱ぐことが出来なくなっていた。さらに食料も無い為に森のキノコを食べてそれにあたり、食べ物を口にする事にも抵抗を覚えてしまった。


 やがて男は痩せ細り、無残な状態で死を迎えた。深い森の中で、一人孤独に……。



 ◻︎ ◻︎ ◻︎ ◻︎ ◻︎ ◻︎ ◻︎ ◻︎


 目を開けると、魔法陣が目に入る。そして、魔法陣から立ち上る淡い光が体に入ってくる。



 あの騎士が使っていたのが『保護魔法』だろう。そして、それをほかの者が使っていなかったのを見ると、あの騎士個人の魔法なんだろう。


 これは警告だろうか? いかに優れた能力でも、それだけで全てうまくいくわけでは無いという事を示しているんだろうか? 確かにあの騎士のように、能力に依存し、力を振りかざし、自分が最強だと慢心していたら、あのような目に合うのは必然だ。


 そうだな、オレもかなり強くはなったが、それでも完璧じゃ無い。オレの場合はほとんど魔法に依存した強さだからな。もしかしたら一切魔法を使えない状況も出てくるかもしれない。これからは油断や慢心をせずに行こう。


 もしかしたら、16層の『制限魔法』の時も戒めとしてあの映像を見せたのかもしれない。自分たちが選ばれし民だと思い込み、他を排斥して差別していればクーデターが起こるのも当然の事だろう。


 なんとなく、この映像の意味がわかってきた。まだ確定では無いが、きっと神は悪意があって見せているわけでは無いんだろう。半ば確信に近い思いを抱きながら、オレは魔法陣を後にした。




 ボスは思った通りに炎の魔物だった。名前はフレイムカイザー、炎の帝王って事だ。見た目は体高4mほどのライオンで、鬣が炎で出来ている。口からはオレンジ色の魔晶牙が生えており、時折口から炎を吐いている。正に帝王の名に相応しい貫禄だ。


 さて、どう対応しようかと思った時、フレイムカイザーがいきなり突っ込んで来た。


「危ねぇ!」


 慌てて横に飛び難を逃れるが、明らかに今までと違う。


「今まではこちらが動かないと、しばらくじっとしてたんだがな」


 どうやらフレイムカイザーは積極的に仕掛けてくるようだ。なら躊躇っている暇は無い。


 再び向かってくるフレイムカイザーに向かって、


『氷柱の庭』(アイシクル・ガーデン)


 鋭く尖った氷柱が無数にフレイムカイザーへと突き刺さるーー直前にフレイムは雄叫びを上げる。すると、全身の炎が一際強く燃え上がり、迫り来る氷柱を全て溶かしてしまう。


「マジかよ!」


 そしてそのままこちらへ突っ込んで来る。


「ストーンウォール!」


 なんとかストーンウォールで相手の突撃を抑えるが、徐々にストーンウォールがオレンジ色に染まっていき、そして溶け始める


「これじゃ持たねぇ」


 ストーンウォールの横から飛び出すと上から炎を纏った爪が迫ってくる。間一髪ストーンピラーで後ろへ飛び、直撃を避けることは出来たが、纏った炎は躱しきれずに顔に軽い火傷を負ってしまう。


「強えな……。コイツ、ホントは大迷宮のラスボスなんじゃないのか?」


 頰がヒリヒリと痛むが、目がやられなかっただけ良しとするか。とりあえず、アイツの動きを止めないと不味いな。それならーー


『茨の庭』(ソーン・ガーデン)


 尖った石柱が無数にフレイムカイザーへと迫りそして突き刺さる。だが、魔石に近づいたものは瞬時に溶かされてしまった。それ以外にも突き刺さったものからどんどんオレンジ色へと変わっていき、溶け始める。


「なら、数を重ねる!」


 再び『茨の庭』(ソーン・ガーデン)を放ち、それが溶かされる前にさらに放つ。フレイムカイザーは徐々に弱っていき、それに合わせて纏っている炎も弱くなっていく。


「これでトドメだー!」


 最後にダメ押しで 『氷柱の庭』(アイシクル・ガーデン)を放つ。 『氷柱の庭』(アイシクル・ガーデン)は炎に溶かされる事なく、全身を貫き、そして魔石も破壊した。


「ーーふぅ、危なかった」


 今までこんなに強いやつと闘ったことはなかった。少しでも反応が遅ければ、死んでいたかもしれない。そう思うと、途端に手が震え出す。命の危険なんて、盗賊達に襲われた時以来じゃないだろうか。


 この先もオレはこんなことをして生きていくのか?

 急に不安が心に張り付いてくる。やはりさっきの騎士のように慢心してるところがあったんだろう。


 どうにか心を落ち着け、出てきた宝箱を開ける。中には炎の魔晶牙とその魔晶牙でできたロングソード。魔晶牙とフレイムカイザーの素材を使った、指先から二の腕までを覆うガントレット。この二つは炎属性の魔法を無効化してくれるものだ。


 あとはフレイムカイザーの肉と魔石、そして皮と骨。そして『ハイポーションの壺』。魔力を貯めればハイポーションを生み出す壺だが、試しに使ってみる事にした。魔力を込めていくと、壺に魔力が溜まっていくのがわかる。やがて壺が光り、中に液体が生まれているた。


 オレはそれを手に取り、顔の火傷を負った箇所につけてみると、スーッと痛みが引いていき、顔の火傷が消えていった。残りのハイポーションを飲んでみると、かなり苦かったが体の内側から何かが全身に広がっていく感覚があり、そして疲労感が消えていった。


「これは、思った以上に凄いな……」


 今までポーションやハイポーションを使ったことがないからわからなかったが、思った以上に疲労回復効果があって驚いた。あとは味が良ければ良いんだが……。


 まぁ文句を言っても仕方がない。それに肉体的な疲労感は消えても、精神的に疲れてしまっている。今日はもう休もう。そう思って階段を下り、オレは水晶の部屋で休む事にしたのだった。








お読みいただきありがとうございます。

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