魔法と属性
大まかな魔法説明回です。
サンドイッチと紅茶で一息ついた後、今度は魔法について教えてもらうことになった。
エリーゼ姫は、チラチラとエルさんの方を見ている。先生がいるから、緊張してるのか?
「えっと、魔法は4つの基本属性と、2つの特別属性があります。4つの基本属性は、火、水、土、風の4つで、特別属性は、光と闇です。」
エリーゼ姫がエルさんのほうを見ると、メルさんが頷いている。それを見たエリーゼ姫は、嬉しそうに続きを話した。
「そして、4つの属性はその上に上位属性があります。炎、氷、地、雷です。ですが、この上位属性についてはまだわかってないことが多いので、今回は4つの基本属性についてお話しします。」
「はい、わかりました。」
「基礎属性の魔法で、『火』は魔力で火を生み出し、『水』は水を生み出し、『土』は土を生み出し、『風』は風を生み出します。ただ、生み出すと言っても、永遠に存在するわけではなく、魔力が無くなれば、生み出したものは消えてしまいます。」
「なるほど、例えば、水を生み出したとしても、時間が経つと消えてしまうと言うことですね?としたら飲み水などには使えないということですね?」
「はい、そうです。ただ、魔石を使った魔道具もありますし、特殊な魔法式を使っても、飲み水に使えるようになります。ただ、消費する魔力は多くなりますが。」
と言うことは、上手くその魔法式を使えれば、飲み水には困らないということか。
「そして、基礎属性には共通の基礎魔法があります。これは、攻撃系、防御系それぞれあります。」
教わった魔法は、まとめるとこんな感じだな。
攻撃系
バレット→属性の弾丸を飛ばす
アロー→属性の矢を飛ばす
ボール→属性の玉を飛ばす 標的に当たると破裂
ランス→アローの強化版 貫通力up
ボム→ボールの強化版 爆発する
防御系
ピラー→地面から属性の柱を生み出す
ウォール→地面から属性の壁を生み出す
カーテン→目の前に属性のバリアを生み出す
シェル→全身を属性のバリアで包み込む
うん、シンプルだな、わかりやすい。
「次に、特別属性ですが、こちらは基礎属性とちょっと違います。光や闇を生み出すということもできますが、
『光』は与える、増やす、放射する
『闇』は奪う、減らす、吸収する
といった効果も持っています。」
うん?ちょっと難しくなってきたぞ。
「例えば、『光』は他人に自分の魔力を与えたり、一時的に魔法の威力や筋力を増やしたり、放射によって効果範囲を広げたり出来ます。治癒師の使う回復系の魔法も『光』の魔法になります。
『闇』は魔力を奪ったり、魔法の威力や筋力を減らしたり、魔法の魔力を吸収したり出来ます。視覚や聴覚といった五感を低下させたりも出来ます。」
うーん、なんとなくわかったって感じか?やっぱりちょっと難しいな。
「ただ、これらの属性全てを覚えられるわけではありません。属性は『火』⇄『水』、『土』⇄『風』、『光』⇄『闇』で相性が悪くなっています。ですので基本的には、多くて3つの属性を覚えることができます。」
「基本的には?」
「はい、まれに相性の壁を超えて覚えられる方がいらっしゃいます。過去の天落者の方で、全ての属性を使えた方もいらっしゃいますので。ただ、多くの方は1つか2つの場合がほとんどで、3つの属性を使える方はかなり少ないです。
以上が魔法に関する基本的な情報になります。」
「なるほど、わかりました。ありがとうございますエリーゼ姫。」
エリーゼ姫は、ホッと息を吐くと、エルさんほうを見る。
すると、
「はい、基本的な魔法や属性は完璧ですね。」
エルさんの言葉に、エリーゼ姫は嬉しそうな顔をした。
「あとは、いま姫様が説明した『戦闘魔法』の他に、日常生活に役立つ『生活魔法』というのもあります。」
「あっ」
「戦闘魔法に生活魔法?」
「はい、魔法には戦いに使える『戦闘魔法』と、それ以外の『生活魔法』があります。今までのお話は『戦闘魔法』に関するものですね」
「ということは、戦いに使えない魔法は全て『生活魔法』ということですか?」
「はい、基本的にはそのように分類されています。簡単なところですと、薪に火をつけたり、水で洗い物をしたりといった、生活に役立つ簡単な魔法が『生活魔法』になります。人によっては得手不得手があったりますが、ほとんどの人が使えます。」
「なるほど。でも、魔法で生み出したものは消えてしまうんですよね?」
「はい、ですからいいのです。薪が燃えだしたら、魔法の火は無くなって構いませんし、洗い物をしても、汚れは水に移り水が消えれば汚れだけが残り、洗ったものも乾いてしまってますから。」
確かに!服を洗っても、服に染み込んだ魔法の水は消えてしまうのだったら、乾燥いらずだ。
「便利ですね。」
エルさんと生活魔法について話していると、エリーゼ姫が俯いてるのに気づいた。
「どうしました?」
「ごめんなさい、生活魔法のこと忘れてました。」
あぁ、説明をし忘れたことを気にしてたのか。
「いえ、エリーゼ姫は魔法について、とてもわかりやすく説明して下さいましたよ。それに、生活魔法は王族の方は使う機会がなかなか無いのでは?」
俺はチラッとエルさんをみる。
「そうですよ、姫さま。王族の方々がそのような事をするのは好ましくありませんし、その為に私たちが居るのですから。」
「はい……」
少し落ち込んでるみたいだな。それなら……
「エリーゼ姫、ありがとうこざいました。とても楽しかったですよ。」
「……本当ですか?」
「はい、先程も言いましたがとてもわかりやすかったですし、私も久しぶりに人と会話できてとても楽しかったです
。」
「あの、ヨシキさまはあまり人とお話ししないんですか?」
しまった。今まで対人関係が劣悪だっから、久しぶりの普通の会話が楽しくて口が滑ってしまった。
「えーと、一人暮らしをしていましたし、その、仕事も一人で集中してやるような仕事でしたから。」
「どんな仕事をしてたかお伺いしてもよろしいですか?」
「はい、私は料理人といっていいでしょうか、主にお菓子や軽食を作る仕事をしていました。」
すると、エリーゼ姫はキラキラと目を輝かせて、
「そうなんですか!?あの、もしよろしければ今度作って頂けませんか?他の世界のお菓子、気になるのですが……。」
うん、口は滑ったけど、エリーゼ姫が少し元気になったみたいだからまぁいいか。
「ええ、良いですよ。ただ、こちらの世界の材料と道具が使えるか、そして厨房を使わせてもらってもいいか確認してからになりますが、それでよろしければ。」
「はい、ありがとうございます!お父さまにお願いしてみます。」
するとエルさんが、思い出したようにエリーゼ姫に話しかけた。
「姫さま、そろそろ戻りませんと、国王様が心配いたしますよ?」
そうだった、今日は少しだけ話を聞く予定だったんだ。エリーゼ姫は少しガッカリした様子で、
「あ、そうですね。あのヨシキ様、またお話ししに来てもよろしいですか?」
「はい、是非に。でも、国王様の許可はちゃんととって下さいね?」
「はい!ありがとうございます。」
エリーゼ姫はとても嬉しそうな笑顔を見せてくれた。それを見て、俺は聞いてみた。
「エリーゼ姫は人と話をするのが好きなんですね?」
「えっ、いえ、その……。」
あれ?聞いてはいけない事だったのかな?すると、食器を片付け終わったエルさんが、
「では、私たちはこれで失礼いたします。ご夕食の時間になりましたらお伺い致しますので、それまでごゆっくりお寛ぎくださいませ。」
……話を流された。
そして、二人ともドアのところで一礼すると、そのまま出ていってしまった。
しまったな、最後の最後でやってしまった感じがする。
どうも私は昔から、肝心なところでやらかしてしまうところがあるんだよな。
……でも、今回は普通じゃ気づけない事だったから仕方がないか。あと自分も見知らぬ世界で必死だったわけだし……。
「ふぅ」
それにしても……
今の私は思った以上に落ち着いてるな。全く知らない世界に来てしまったのに。
最初はちょっと動揺してたし、必死な部分もあったけど、
すぐに慣れてきている。
一度死を覚悟したからか、それとも前の世界に未練が全くないからか、もしくはこっちの世界の方が希望がもてるからか。
まぁ、いいか。とりあえず、今はしっかり今後のことを考えないと。
私はベットに横になり、考えることにした。