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天 落 者  作者: 吉吉
第1章 異世界転落
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下層の攻略終了

 無事11層を攻略して12層へ降りてきた。水晶の部屋を出ると周りは森で、目の前に左右に伸びる道がある。左を見ると道は真っ直ぐに伸びているが徐々に上り坂になっており、右を見ても同じように登り坂になっている。


 木の上に登って確認をしてみると、左にも右にも同じような高い山がそびえ立っている。ということはまた無限ループで、この道をまっすぐ進めばまたここに戻ってくるんだろう。となれば調べるのはあの山の中か……。冒険者達の気配も2組感じられるが、両方とも山の中にいるようだしな。


 そういや、国王様の生誕祭まであと1ヶ月と4週間ぐらいか。1周間前には王都についてなきゃいけないし、準備も考えるとあと1ヶ月と2週間くらいか。出来ればそれまでにこの大迷宮を攻略しておきたいな。冒険者の数も少なくなっているし、少し本気で攻略するか。


 オレは改良した魔道具を使ってストーンピラーを発動。山への道を素早く登っていった。



 山は麓の方は密林のように木々が生い茂っているが、登るにつれて木が減り岩が多くなっている。そして山頂付近では雪も積もっているようだ。それに合わせて出てくる魔物もトレントやフォレストウルフからストーンオーガやロックモンキーに変わり、さらにスノウウルフやスノウゴートといった具合に変わっていった。


 ちなみにロックモンキーは毛皮の代わりに岩を身に纏っていて、うずくまると本当に岩と見間違える姿をしている。まぁ気配でわかるから不意打ちは喰らわないが。

 ドロップしたのは地属性の魔石と一面に岩のついたロックモンキーの皮だ。


 スノウゴートの方は真っ白い毛と角を持つ純白のヤギで、この毛皮はスノウウルフよりも防寒性能が高いらしい。あと、スノウゴートの角は硬く白く美しいため、そのまま装飾品になったり、冷気を放つ武器や防具として加工されたりするそうだ。


 そんな感じで魔物を倒しながら山頂へ着く。あたりを見渡すと眼の前には雪景色が広がっており、さらに遠くへ目をやると広大な森が広がっている。と、一箇所周りと違う場所を発見。そこは山の斜面の途中にもう1つ小さな山が出来ているような場所だ。位置的には森のエリアと岩のエリアの境目だろうか? おそらくそこが迷宮の入り口だろう。なぜかそう感じる。妙な確信があったのでそこへ向かう事に。


 すると予想通り岩山エリア側の岩と岩の間に、人が通れる場所を発見。早速入ると地下への階段があるので降りる。すると感じられるボス部屋の気配と魔法陣の気配。勿論魔法陣の場所へ向かう。


 魔物を倒しドロップアイテムを回収しながら進み、魔法陣の部屋へたどり着く。


 魔法陣を鑑定してみると


 破壊軽減

 ーー自分が持っている物が壊れにくくなる 手を離しても一定時間効果は続く


 これは商売に関係あるのか? どっちかというと武器で戦う時に重宝しそうなスキルだが……。商品の運搬の時のための物なのだろうか? まぁいいか、意外と使えそうだし。


 さて次はボスだ。ボス部屋へ入ると魔物が実体化していく。出てきたのはまずロックトレントと呼ばれる岩で出来た木の魔物だ。真ん中にリーダーとおぼしき巨大なロックトレントがいて、その両側に3匹ずつロックトレントが並んでいる。


 そしてその前にロックモンキーがこれまたリーダーを中心に左右に4匹ずつ並んで出てきた。


 魔物全部が地属性か。となると、地属性の『茨の庭』(ソーンガーデン)じゃ倒せないか? まぁとりあえずやってみてダメだったら他の手を使おう。


 『茨の庭』(ソーンガーデン)を、発動すると、魔物達は最初の1本2本はなんとか耐えたようだ。だが、四方八方から襲ってくるのと、一本の威力が高いので最終的に耐えられなくなり、やがて全滅する。どうやら同じ地属性でも力押しすればなんとかなるようだ。これを繰り返すこと3回、宝箱が出現する。


 中身はまずは地属性の装備一式で、ロックモンキーの胸当てと靴、ロックトレントの魔石がはまった杖。この辺りは使わないのですぐしまう。


 あとは11層と同じ鑑定板と保存バッグ、ロックモンキーの肉、ロックトレントの魔石、そして30cmほどの長さの魔法樹の木材が手に入った。


 魔法樹の木材

 ーー魔力によって成長する樹の木材 魔力を込めると大きくなり傷も修復する


 これはなかなか……。試しに魔力を込めてみると、倍の長さになった。これを半分に切り元の大きさと同じくらいにして、太くなるよう念じながら魔力を込めるとちゃんと2つとも太くなる。どうやら切ってもこの木材の性質は無くならないようだ。これがあれば魔力が無くならない限り無限に木材を調達出来るのか。


 この層でも、なかなか良いものが手に入った。さて、それじゃサクッと次の層へ行くか。




 13層ーーそこは一面湖だった。水が真水だったので、海ではないだろう。小さな島に今降りてきた部屋があり、その小さな島から十字の方向にそれぞれ橋が架かっている。橋はかなりしっかりした作りで、手すりは無いものの幅は3mほどあるので落ちる事は無いだろう。魔物に襲われなければ、の話だが。


 橋の先はそれぞれ島になっているようで、その先はまた橋で繋がっているようだ。目に見える範囲に建物は見えない。気配を探してみると、冒険者は1組いるようだ。あとは水の中に魔物の気配がある。という事はやはり、橋を渡っている最中に襲われるという事だな。


 冒険者達は部屋を出て目の前の橋を渡っていったようだ。なら、オレは逆の橋を渡っていくか。


 橋を渡っていると、サーペントやアクアフロッグが襲いかかってくる。位置やタイミングは気配でわかるので、出た瞬間にストーンバレットで仕留めていく。大迷宮の仕様なんだろうが、倒した魔物のドロップアイテムが水に沈まず浮かんでいるのは驚いた。


 厄介だったのは、バレットフィッシュという水中からウォーターバレットを撃ってくる魔物だ。5mほど離れたところから魔法を撃ってきて、すぐに水中に潜るのでなかなか面倒だ。大きさは1mほどで、水中にいるので、魔石が狙いにくい。


 なんとか倒しても、ドロップアイテムが5m離れた水の上に出るので取るのも面倒だ。なので、前に作った魔道具を試してみる。


 『水人形』(アクア・パペット)

 ーー水に魔力を込めて人の形を作り、一定時間操ることのできるものだ。山田さんの研究所で作ったものの1つだ。ある程度の距離でも遠隔操作もできるが、込めた魔力が無くなればただの水に戻ってしまう。


 『水人形』(アクア・パペット)は水に入るとそのまま進み、ドロップアイテムを回収して戻ってくる。そして水に戻る。手に入ったアイテムは水の魔石とバレットフィッシュの肉、つまり魚だ。しかも半身で骨も全て取ってある。最近は魚は食べてなかったから、嬉しいな。これは可能な限り回収していこう。



 そして進むこと1時間ほど、気になるポイントを発見。そこは橋の途中で、左右は湖が広がっているだけだ。だが、右側がとても気になる。なにかが見えるわけでは無いが、何故か気になるのだ。こういう場合は行ってみるべきだろう。


 ゴーレム馬を取り出し、湖の上を走る。進んでいくと青白い霧に包まれた場所を発見。霧の色が空の色とほとんど同じなので、遠目からは見つけ辛かったようだ。


 霧の中に魔物の気配はない。慎重に霧の中を進むと、島があり小さな建物がある。中には地下に降りる階段があるのでここでいいようだ。すぐに階段を下りようと思ったが、全然休んでないことに気がついた。大迷宮に潜ってから、もう1日以上経っているはずだ。


 なので、階段のある建物の裏に簡易宿泊場所を出して休むことにした。ここなら冒険者達が来ても大丈夫だろう。ちなみに食事のメインはバレットフィッシュの塩焼きだ。最初から骨が付いてないので食べやすい。そして、思った以上にジューシーだ。やはり肉だけじゃなくて、たまには魚貝類も食べたいよな。今度探してみよう。


 そんなことを思いながら、オレは眠りについた。




 十分に休んでから階段を下り、向かってくる魔物を倒しながら魔法陣の部屋へ向かう。手に入ったのは、重量軽減 強 だ。これで、かなり重さを軽減出来るようになったので、ゴーレム馬をもっと早くもっと高く操れるようになるだろう。


 ボス部屋は今までとは仕様が変わっていて、膝くらいの高さまで水に満たされた部屋だった。出てきたのはアクアサーペントが6匹とアクアサーペントのリーダーが1匹。アクアサーペントリーダーは2本の牙が大きく口から出ており、水の魔石の様なもので出来ている。この牙はかなりの大きさがある。


 他には水中にバレットフィッシュが10匹泳いでいて、いつどこから攻撃されるかわからない状態だ。なので、また『茨の庭』(ソーンガーデン)で力押しをする。3回倒したあとに出てきた宝箱を開けると、まず魔晶牙のショートソードとアクアサーペントの皮でできた服とズボン、アクアサーペントとバレットフィッシュの肉、アクアサーペントの魔石と保存バッグ 5/5 、そして毒壺。


 毒壺

 ーー魔力を一定以上込めると様々な毒を生み出すことができる


 ……


 ……


 これはーー世に出したらマズいアイテムだな。冒険者にとっては魔物を倒す手助けになるが、悪人の手に渡ったらかなり危険だ。これは誰にも言わずに魔法庫の奥にしまっておこう。そう思いながらオレは階段を下りた。




 14層は一面砂漠で、サボテンや大きな岩が所々にあるだけの景色だった。魔物も姿は見えないが気配はある。どうやら砂の中にいるようだ。更に気配を探ってみるが、どうやら今この層には冒険者はいないみたいだ。


 砂漠なので砂がかなり舞っている。このままいけば砂まみれになるのは間違いないので、前に買っていた雨用のフードを風の魔石と組み合わせて、常に風が出るように改良して装備した。ついでに11層で手に入った風のマントを装備すれば常に風に守られて、砂が入ってこなくなる。


 よし、準備はOKだ。水晶のある部屋を出て砂漠を歩き始めるが、思った以上に暑くない。魔物も砂の中を動いて近づいてくるが、気配で丸わかりなので出てくる前にストーンバレットやストーンピラーで倒していく。なんの魔物かわからないが、火や熱の魔石が砂の上にドロップしていくので、やはり暑い場所の魔物は火属性なんだな。


 唯一認識出来た魔物は、空から襲ってきたデザートイーグルだけだ。これも火属性の魔石と肉をドロップした。


 ある程度進んだところで岩陰に入り、フードを取り水分補給をしようとしたのだが……


「うおっ、暑い!」


 慌ててフードを被り直す。これは、40°C以上あるんじゃないのか? しかし、なんで今まで大丈夫だったんだろうか。調べてみると、マントの方は周りの空気を動かして風を起こしているのに対し、オレが改良した風の魔石付きのフードは、飲み水の魔道具と同じようにそれ自体が風を生み出していた。その風は暑くもなく寒くもない丁度いい温度だ。大体20°Cくらいかだろう。


「成る程、魔法で風を作ると20°Cくらいの風が出てくるんだな。そういや飲み水の魔道具もそれくらいの温度の水が出てきてたか」


 最初は冷気の魔石も付けようかと思っていたが、その必要はなさそうだ。水分補給をして再び砂漠を歩く。


 気になる場所が出てきたのは、それからすぐの事だ。大きな岩がゴロゴロしている場所に、他のより小さい岩が1つある。ぱっと見なにもなさそうなのだが、オレが気になるということは、そういう事だろう。


 高さは3mくらいで、周りを確認してみるが特に何もない。あとは岩の下か上しかないので、とりあえず上に乗ってみる。すると岩の上に地下への階段があった。どうやら魔法で保護されているようで、砂は入って来ないみたいだ。


 中へ入り気配を確認。魔法陣とボス部屋の気配はあるが、宝箱の気配はない。出てくる魔物は1mほどのポイズンスコーピオンやサンドリザード、そして2mを超える長さのサンドワームだった。


 正直2mのサンドワームはキモい。それが床をウネウネ動きながら近づいてくるのだ。正直、この地上部分の魔物が迷宮にも出てくるという設定は、無理があるんじゃないだろうか。少なくともこの層は失敗だろう。

 砂の中に潜んで獲物を待ち伏せする魔物や、砂の中を素早く動ける魔物をこんな石畳の上に出しても、気持ち悪いだけで怖くない。実際サンドワームはウネウネしているだけでかなり遅かった。


 そんな感じで怖くない魔物を倒しながら魔法陣の部屋へ着く。手に入ったのは記憶術 強 だ。なんとなくパターンでわかっていたのでやっぱりか、という感じだ。


 この層のボス部屋はやはり砂地で、出てきたのはこの層でまだ見たことのない魔物だった。鑑定するとファイアリザードと、名前だけ出てくる。いつものように、赤い魔石のような角を持つリーダー1匹を中心に左右に3匹ずつ並んで出てくる。砂の中にはサンドワームが8匹潜んでいるみたいだ。


 『茨の庭』(ソーンガーデン)で3回倒し、宝箱を開ける。中身は火の魔晶角の槍と、ファイアリザードの皮を使ったマントとズボン。ファイアリザードとワームの肉、そして、アイテムバッグ 5/5 と火の魔晶角が1本手に入った。


 そして1番気になったのが


 砂ガラスの壺

 ーー魔力を一定以上込めると、砂ガラスを生み出す


 装備品はまぁ置いておいて、ワームの肉はあまり食べる気にはならない。あのウネウネしたのを見ていると、気持ち悪くて食欲が湧かない。アイテムバッグは久し振りに手に入れたな。まぁ使わないけど。


 あとは魔晶角がそのままで手に入ったのは初めてだ。珍しいものなのだろうか? これは何かに使えるかも知れないな。


 そして砂ガラスの壺。これはポーションやマジックポーションの壺、毒壺よりも大きかった。今までの壺は、片手に収まる250mlの缶コーヒーぐらいの大きさの縦長の壺だったが、これは1.5リットルのペットボトルくらいの大きさだ。


 試しに魔力を込めてみたが、限界まで魔力を込めると、キラキラとした白っぽい砂が壺の中に生み出されていた。鑑定すると砂ガラスと出てくるので、これがガラスの原料になるのだろう。


 そうか、ここは商売の大迷宮だから、売り物になるものも手に入るということか。ポーションもマジックポーションも毒も冒険者ギルドで売れるだろうし、砂ガラスも商業ギルドで買い取ってもらえるだろう。あとは費用対効果、消費魔力と買取価格が釣り合っているかどうかだな。まぁそこら辺は大迷宮を出てから考えるか。


 もしかしたら金銭的に困ることはなくなるかも知れない、そんなことを考えながらオレは階段を下りた。




 そして15層、ここを攻略すれば次からは直接16層へ行けるようになるんだよな。あと、普段よりも強いしボスもいるんだっけか。


 気合いを入れて部屋から出ると、そこはだだっ広い場所だった。


「……は?」


 少し呆けてしまったが、我を取り戻し、あたりを観察してみる。床は石畳でどこまでも続いている。天井はかなり高く5mくらいはあるだろうか。後ろを見ると天井まで続いている太い柱があり、今出てきた部屋はその柱の中にある。


 が、それだけしか無い。ぐるっと周りを見渡してみるがほかに柱は見当たらないし、壁も一切無い。今までの事を考えると、ここは1つの大部屋のような場所でこの場所自体が無限ループしているという事だろうか?


 気配を確認してみると、魔物の気配は結構あるし、天井にもいるようだ。これは下手したら四方八方、そして上からも同時に襲われる可能性があるという事だ。


 だが、どうやらここは迷宮扱いのようで、進むべき方向ははっきりわかる。魔法陣やボス部屋の気配を感じないところをみると、おそらくまた階段があり、それを下りた先に魔法陣やボス部屋があるのだろう。


 ということで、階段があると思われる方向へ向かう。出てくる魔物は11層〜14層に出てきた魔物達だ。数はいるがそこまで密集しているわけでは無いので、瞬殺してアイテムを回収、そして進んでまた瞬殺、と言った流れで進んでいく。


 たまに上からウインドバードやデザートイーグルが襲ってくるが、そこまで手強いわけでは無いので軽く倒していく。


 やがて、魔物の気配がほとんどないエリアが現れる。直径15mほどのエリアで光の幕で覆われており、その中には魔物は2匹しかいない。これは中ボスか?


 光の幕の中へ入ると、2匹の黒いミノタウロスが待ち構えていた。そしてその先に下へ向かう階段がある。


 2匹のミノタウロスはオレを見つけるやいなや突進して来たので、前の戦いの教訓からすぐにメタルバレットを放ち魔石を破壊する。


 が、ドロップしたのは茶牛の肉と茶牛の卵だった。そういや11層の冒険者達が戦った時も、茶牛の肉だったな。黒牛の肉はレアなのだろうか? そういやあの時は、かなり傷を負ってたからわざと回復させて倒したんだったな。黒牛の肉が出たのはその影響だったんだろうか? それなら次に出てきた時に試してみるか。


 階段を下りると、そこはいつもの大迷宮の構造だった。ちゃんと壁があり、通路があり、魔法陣とボス部屋の気配もある。


 魔物も階段を降りる前と同じで、11層〜14層に出てきた魔物達だ。しかし砂のないところでウネウネ動いているサンドワームや、水のないところでビチビチ跳ねているバレットフィッシュはどうにかならないんだろうか? そんな魔物達を倒しつつ魔法陣の部屋へ行きスキルを手に入れる。



 空間縮小 ーー 魔力により空間を狭くする。狭くなる面積と持続時間は魔力による



 ……? 空間を狭くするって、なんの役に立つんだ? はっきり言って、空間拡張と空間固定があればいいと思うんだが……。使い道のよくわからないスキルだが、まぁそのうちいい使い方を思いつくだろう。


 そしてこの層のボスはなんと金のミノタウロスだった。金色のミノタウロスが1匹と黒いミノタウロスが6匹、そして茶色いミノタウロスが6匹のミノタウロス軍団だ。


 金色のミノタウロスはハルバードを持っており、黒いミノタウロスはデカい斧、茶色いミノタウロスは棍棒を持っている。これは普通だったらどれか一撃でも食らえば戦闘不能だろう。というか普通の冒険者達はこういう相手に対して、どう対処するんだろうか? 今度ザインあたりにでも聞いてみるか。


 とりあえず、『茨の庭』(ソーンガーデン)を使ってみる。黒と茶色のミノタウロスはそれで倒せたが、金色のミノタウロスはダメージがない。どうやらかなり防御力が高いようだ。


 なので今度は『茨の庭』(ソーンガーデン)を、範囲を狭くして金色のミノタウロスのみを対象にすることにした。効果範囲を広げるために使っていた魔力を減らして、その分の魔力を、硬度をあげるために使ったのだ。


 そのおかげで、すぐに金色のミノタウロスも倒れて消える。そして3回ミノタウロス軍団を倒すと、宝箱が現れる。


 中にはまず、金のハルバードと金のマントが入っている。鑑定すると、これは両方とも魔法に対して強いようだ。ただ、金色というのはオレの趣味には合わない。


 あとは金の角と金の皮、これは金色のミノタウロスの素材だろう。そして金牛の肉ーーなんか、これはかなりヤバい代物な気がする。どう見ても黒牛よりも高価な肉だ。これはとりあえず他人には見せないでおこう。


 あとは聖水の壺、これは魔力を限界まで込めると聖水を生み出すものだ。聖水は身体の内外を清めるもので、毒や身体の異常を回復してくれるものだ。毒液をかけられたらその部分にかければいいし、毒霧などを吸い込んだ場合は飲めばいい。が、強すぎる毒には効きが弱く病気などには効果が無い。


 そして保存リュックだ。これもアイテムリュックの保存版で、アイテムリュックより容量は少ないものの中に入れた物の時間を止めて保存できるリュックだ。もちろん保存バッグよりは容量は多い。


 一通りアイテムを確認したあと、魔法庫に仕舞って階段を降り、16層の水晶の部屋へたどり着く。ここまでくれば、次からは16層から始められる。それじゃあ16層を少し覗いて一休みしてから地上に戻るか。


 部屋の外へ出てみると、そこは岩山だった。周りを見渡しても岩山ばかりで、木や草は一切見当たらない。魔物の気配もあるが、どうやら今までの層の魔物よりかなり強いみたいだ。


 と言うわけで、ザッと確認したところで休む事にする。15層では冒険者達の気配は一切無かったので、冒険者達がオレが休んでいる内にこの層に辿り着くことは無いだろう。なので水晶の部屋の中で休む。


 唐揚げが食べたい気分だったので、ウインドバードの肉を使って唐揚げを作る。そして、熱と水の魔道具で身体と服を洗いサッパリしてから眠りにつく。そして、起きてから地上へと戻ったのだが……




「ーーっ!」


 入り口の部屋にいた職員がなぜかこちらを見て驚いた顔をしている。そして、


「ぶ、部長ー!」


 大声をあげながら、走って行ってしまった。


 また、何かやってしまったんだろうか?












お読みいただきありがとうございます。

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