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天 落 者  作者: 吉吉
第1章 異世界転落
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人助けと回復魔法

「おっ」


 6層へ降り、帰還用の水晶のある部屋から出て思わず声が出てしまった。通路の様相が一変していたのだ。


 5層までは遺跡のような石壁や石畳だったのが、ここは洞窟のような壁や床に変わっていたのだ。壁もゴツゴツとしているし、床もある程度平とはいえ、凹凸があるから歩きづらいし戦いづらいだろう。


「なんでわざわざ洞窟風にしてるんだ?」


 何か神の意図があるんだろうか? 冒険してる感じがするから嫌な気はしないが。まぁ、とにかく行くか。


 オレは魔法陣のある方向へ向かった。途中、魔物も出てきたが、ストーンバレットで瞬殺していく。何匹かホブゴブリンも混ざっていたが、やはり瞬殺。そういや最近、まともに戦闘をしていないな。別に強さを求めているわけではないからいいが。


 そういえばこの層には、鑑定のスキルが貰える魔法陣があるんだったよな。鑑定のスキル自体はもう既に持っているから、魔法陣は反応しないと思うが、念のため行ってみるか。


「ん? 人がいるな……」


 魔法陣の部屋へ向かっていると、どうやら同じように魔法陣の方向へ向かっている団体の気配がある。近づいてみると、冒険者が5人と商人が2人のようだ。冒険者は全員30歳前後で、商人は2人とも冒険者より少し若く見えるから20代半ばくらいだろうか?


 後をつけて行くと、やはり冒険者と商人たちは魔法陣の部屋へ入っていく。姿と気配を消して様子を見ていると、1人の商人が魔法陣の中に入る。が、魔法陣は反応しない。もう1人も魔法陣に入るがやはり反応しない。商人はかなり落胆した様子で、


「やっぱりまだ駄目ですか……」

「いつになったら、鑑定のスキルが手に入るのか……」

「大丈夫だって。ちゃんと訓練してればそのうち手に入るって」


 冒険者のリーダーっぽい人が商人たちを励ましている。と言うことは、この人たちは鑑定のスキルを手に入れるために来た商人とその護衛ってとこか。


 しかし、魔法陣に乗れば必ずスキルが手に入るって訳じゃ無いのか。そう言えば、1層でザインが言ってたっけ? 今のところ記憶術以外は全て手に入っているし、記憶術も既に持っていたから反応しなかったわけだから、すっかり忘れてた。それと冒険者が訓練とか言ってたな。おそらく何かしらの訓練をして、ある程度の水準以上になればスキルが手に入るんだろう。


 オレもこれから先、手に入らないスキルがあるかもしれないから忘れないでおこう。


 さて、冒険者と商人たちが部屋から離れるのを待って、オレも魔法陣に乗ってみる。まぁ反応しないと思うが……。と思ったら、


「おおっ」


 魔法陣が淡い光を放ち、何かスキルが手に入った。魔法陣自体を鑑定しても


 鑑定 ーー 様々なものを鑑定出来る


 としか出てこない。自分を鑑定してみたが、おそらく「詳細鑑定」と言うスキルだろう。さっき見たときはなかったはずだ。


 試しにポーションを鑑定してみると、使われている原材料まで詳しく出て来た。迷宮産のポーションは品質が安定してるからいいが、作られているポーションは品質のバラツキがあるらしいので、そういうものを見分けるのに役に立ちそうだ。


 さて、後はボス部屋へ行って下の層へ降りるだけだ。オレは魔法陣の部屋を出て、ボス部屋へ向かおうとしたがーー


「ん? なんだ、いきなり……」


 突然、強めの気配が2つ現れた。場所はボス部屋の近く。そのすぐ近くに冒険者数人の気配もある。突然現れた理由が気になるから、ちょっと行ってみるか。


 近づくにつれ、爆発音と金属がぶつかり合う音が聞こえてくる。既に冒険者達と交戦しているようだ。辿り着いた場所は通路の袋小路で、そこで真っ黒なミノタウロスが2体、冒険者3人と戦っていた。


 ミノタウロスは身体を斬られ、流血しているものの、まだ十分に闘えそうだ。逆に冒険者達はかなり流血していて、防戦一方のようだ。前衛2人がなんとか凌いでいるものの、後衛の魔道士が、どうやら足を骨折しているようで、身動きが取れないみたいだ。


 さてどうする? たしか迷宮の基本情報には、他の冒険者が戦ってる時に、許可なく横槍を入れたらダメだってあったな。だが、今はそれどころじゃなさそうだし……。


「ストーンバレット!」


 オレは大きめの岩を作り出し、そこそこのスピードでミノタウロス2体へ放つ。岩はミノタウロスの後頭部に当たるが、大したダメージにはなってないようだ。まぁ、手加減をしたからな。

 ミノタウロスがこちらに気づき、振り返ったところで冒険者達に声をかける。


「助けは必要か!」

「あ、た、助けてくれ!」


 OK、これで許可は取った。取り敢えず、このままだとマズいので、冒険者達を先に逃がすか。

 オレはミノタウロス2体に接近し、至近距離で撹乱しながら、冒険者へ言う。


「10秒後に動きを止めるから、逃げる準備を!」

「わ、わかった!」


 オレがいうと、1人が魔道士を背負い、もう1人が庇うように盾を持って2人の前に立つ。そして、


「ストーンピラー!」


 10本のストーンピラーが動きを邪魔するように地面から伸びてくる。そして、ストーンピラーに囲まれてミノタウロス2体は動けなくなる。


「今だ!」


 オレは冒険者達へ叫ぶ。冒険者達はすぐに走り出し、ミノタウロスの横を通り過ぎ、そしてオレの横も通り過ぎ、何も言わずにオレの視界から見えなくなった。


「…………マジかよ」


 助けたのにお礼の一言も無しか。気配を探ってみたが、どんどん遠ざかってるので、どうやらこのまま逃げるみたいだ。一瞬助けなきゃよかったか? と思ったが、目の前のミノタウロスから良いアイテムが出るかもしれないので、気にしないでおこう。


 さて、ミノタウロスを改めて見ると、2体とも斬られて流血している。残存魔力は半分以上はありそうだが、これだとそんなに良いアイテムは手に入らないか。


「放って置いたら自然回復とかしないか?」


 そうしたら良いアイテムが出るかもしれないーーっと、迷宮の魔物にも回復魔法って効くのか? 回復魔法でミノタウロスの身体を構築している魔力も戻れば良いんだが……取り敢えずやってみるか。


 オレは魔法庫から短い杖を取り出す。20cm程で先端には大きめの光の魔石が付いている。山田さんの研究所で作って、今まで全く使わなかったものだ。研究所で光魔法を勉強して、回復魔法も使えるようになっていたのだが、怪我を全くしなかったのと、回復魔法が使える人が少なく、使うと目立ってしまうと言うのもあって、今まで一度も使ってない。


「しかし、初の回復魔法の相手が魔物とはね……。まぁいいか。ハイヒール!×2」


 オレはハイヒールを唱える。魔法は光属性の杖で増幅され、その結果ーーミノタウロス達は全快以上に回復してしまった。


「あれ? 強すぎたか?」


 ミノタウロス達は、「ブモーッ!!」と叫び声を上げると、身体を囲んでいたストーンピラーを斧で粉砕、そしてこちらを睨みつけてきた。魔力的には 60/100 くらいだったのが、 160/100 になった感じだ。これで迷宮の魔物にも回復魔法が効くことがわかった。まぁ迷宮の魔物に回復魔法をかける馬鹿はオレくらいしか居ないだろうが……。


 考えているうちに、ミノタウロス達が斧を振り下ろしてきたので、後ろへ飛び、すぐに魔法を放つ。


「ストーンバレット!」


 が、魔石に当たったストーンバレットは、キンッ! という音と共に弾かれた。


「オイオイ、ボス部屋のミノタウロスは一撃だったんだぞ」


 仕方ない、取り敢えず1体ずつ倒すか。オレはナイフを構え、ミノタウロスへ向けて走る。振り下ろしてきた斧を横へ躱して懐へ入る。そしてストーピラーで胸元の魔石目掛けて飛び、ナイフを突き刺す。流石に魔石は耐えられず砕け散る。

 着地と同時に横へ飛び、もう1体の攻撃を躱す。すかさず懐へ入ろうとするが、ミノタウロスは既に斧を振りかぶっている。なのでストーンピラーを斧の石突へ当てて動きを止め、その隙に魔石を破壊する。


「ふぅ、少し焦ったな」


 自分でやったとはいえ、少し手強かった。そういやさっき、最近まともに戦闘してないとか思ったけど、もしかしてフラグだったのか? だとしたら、これからはあまり変なことは考えない方がいいな。


 さて、それじゃあドロップアイテムを確認するか。1つは肉の塊だ。鑑定してみると、


 黒牛の霜降り肉 ヒレ

 ーー黒牛の肉の中で一番柔らかい高級部位 6kg 鮮度 良


 おぉ、ヒレ肉だ。ヒレ肉は初めてだからこれは嬉しい。今度サーロインと並べて、なんちゃってTボーンステーキをやってみるのもいいかもな。そして詳細鑑定のお陰か重さと鮮度がわかるようになっている。悪くならないうちに、魔法庫へ仕舞っておこう。


 さて、もう1つのアイテムだが、これは……魔石か? 真っ黒い卵型のアイテムだ。鑑定してみると、


 黒牛の卵

 ーー黒牛が生まれる卵 魔力を込めると黒牛が生まれる 卵の食用不可 魔力0%


 ……


 ……


 ……?


 うしのたまご?


 えーと…………さすが異世界。この世界では牛は卵から生まれるんだな、知らなかった。そして卵の食用不可ということは、卵のままでは食べられないのか。魔力0%というのは、おそらく100%になったら牛が生まれるんだろう。うん、改めてさすが異世界! 取り敢えず仕舞っておこう。


 さて、後はボス部屋へ行くだけだ。サクッと倒して次の層へ行こう。



 ボス部屋へ入ると、いつものように魔力が集まって魔物の形になっていく。出てきたのは、


「げっ!」


 オークが5匹だ。よくファンタジーものだとオークが女性を襲うという話があるが、この世界のオークも同じで子を成すために女性を襲うそうだ。それ以外にも、家畜、つまり牛や馬のメスを襲うこともあり、性欲が溜まっているとオスの家畜や人間の男を襲う事もあるらしい。


 それを思い出した途端、鳥肌が立ってくる。そして、あの盗賊のボスに襲われかけた記憶が引き出されてくる。オークを見ると、豚の顔に太った体、着てるのは皮の腰巻き一枚。間違いなく森などで会いたくないヤツだ。瞬殺しよう。


 オークは皮膚の弾力が強く脂肪も厚い為、ダメージが通り辛いというので、やはりいつも通りに魔石を狙っていく。ただ、先ほどの黒いミノタウロスの魔石が硬かったので、威力を上げていく。


  ストーンバレットを5個出し、魔力を込めて更に圧縮していく。すると、ストーンバレットが少しずつ光沢を放ってくる。更に魔力を込めると完全に金属のようになった。そういえば、地属性は魔力次第で鉱物も操れるんだったか。だとしたら、魔力で鉱物を生み出せてもおかしくはないか。言うなれば、「メタルバレット」という感じだろう。

 オレはオークが動き出す前に魔法を叩き込む。


「いけ、 メタルバレット!」


 威力と速度を上げたメタルバレットは、オークの魔石を貫通し、壁に穴を開けて行った。


「ん? もしかしてさっきの黒いミノタウロスよりも硬くないのか? 」


 相変わらず、瞬殺するとまた5匹出てきたので、今度はストーンバレットで攻撃する。すると、思った通りに魔石を破壊出来た。それを繰り返し、5回倒したところで、宝箱が出てくる。出てきたのは


 オーク肉

 ーー豚肉に似ている上質な肉 40kg 鮮度 良


 魔晶石 5/10

 ーー魔石が更に結晶化したもの。魔力を蓄えることが出来る。魔力を使い切っても無くならず、再度魔力を込めて使うことができる。


 魔晶石 5/10

 ーー魔石が更に結晶化したもの。魔力を蓄えることが出来る。魔力を使い切っても無くならず、再度魔力を込めて使うことができる。



 おっ、魔晶石が2つか。これでまた色々なものが作れるな。オークの肉はいままで食べたことが無い。というか豚肉自体、こっちにきてから食べてないか? もしかしたら王宮にいるときに食べたかもしれないが。


 まぁ、戻ったら食べればいいか。トンカツも久し振りに食べたいしな。さて、次の層へ行くか。




 7層に降りてきてすぐに、魔方陣とボスの部屋を探す。どうやら魔法陣の場所はボス部屋と反対方向みたいだ。当然、魔方陣の方へと歩き出す。


 道中に出てくる魔物も強くなっていて、ホブゴブリンやゴブリンウォーリア、アーチャーも頻繁に出てくる。普通のゴブリンは6層から出てきてない。まぁどのみち瞬殺なんだが。


 やはりと言うか、オークも出てきた。6層で5層のボスのミノタウロスが出てきていたのでもしやと思ったが、思った通りに出てきた。ただミノタウロスの時と違って、オーク自体がボスの時より強くなってはいなかったので、ミノタウロスの時は何か特別な事があったのかもしれない。


 そういえば、突然黒いミノタウロスが現れた理由を探し忘れてた。あの時は黒牛の卵の事で頭が一杯で、他のことを考える事が出来なかったからな。まぁ、しょうがないか。



 さて、魔法陣の近くまで来たが行き止まりだった。床には魔力反応がある。一応他にないか確認してみると、少し戻ったところの壁にスイッチを発見。警戒しながら押してみると、壁の一部が開く。


「おっ、こっちが魔法陣へのルートか?」


 そう思ったのだが、中は幅1m奥行き2mほどの小部屋だった。もちろん宝箱も無い。仕方なく、行き止まりの床の魔力を反応を踏むと、壁が開き岩の大玉が転がり出てくる。


「またこれか!」


 ここは天井が低く飛び越えられないので、慌てて来た道を戻ろうとするが、そこでさっきの小部屋の意味を理解する。


「そう言う事か!」


 小部屋に逃げ込み岩の大玉をやり過ごす。ふぅ、昔映画で見た、どこぞの考古学者みたいだな。焦ったが、それもまた楽しいと思ってしまう。再び行き止まりまで戻ると、やはり通路がある。奥へ進むと、思ったとおり魔法陣の部屋へとたどり着く。その魔法陣を鑑定すると



 乗馬術 ーー 馬に上手に乗れるようになる



 乗馬術か……。馬には乗った事が無いんだが、あれば役に立つ時があるか。そう思い、オレは魔法陣の上へ乗る。そして魔方陣がひかり乗馬術が手に入った。


 そういや2層では御者術だったな。 得られるスキルに偏りがあるのだろうか? あ、2層といえば今日はザイン達と別れてから一度も休憩を取ってなかったな。途中から冒険が楽しくなって忘れてた。多分丸1日以上経っている。


 まぁこの部屋には魔物は来ないみたいだし、他の冒険者も来ないだろうから、丁度いいか。オレは魔法庫から簡易宿泊場所を取り出し、部屋の隅へ置く。そして、簡単な食事を取ってからその中で休む事にした。


「なんか、今日は楽しかったな」


 卵の事とか驚いたこともあったが、最後は楽しかった。明日も楽しいと良いな、そんな事を思いながら、オレは瞼を閉じた。







お読みいただきありがとうございます。

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