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天 落 者  作者: 吉吉
第1章 異世界転落
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初めての依頼

「セイブンさんはいるか?」


 セイブンさんの店に着いたオレは、近くにいた店員に声をかける。そういや日本にいる時は、普通に店員に声をかける事も躊躇ってたなぁ。人間変われば変わるもんだ。


「会長ですか? あの、会う約束はしてあるのでしょうか?」

「あぁ、ヨシキが来たって伝えて貰えばわかると思う」

「わかりました、少々お待ちください」


 そう言って、店員は奥に走って行く。程なくしてセイブンさんとロンソーさんがやって来る。


「お待ちしてました。どうぞこちらへ」

「無事冒険者カードは手に入れられましたか?」

「あぁ。一悶着あったが、なんとか手に入ったよ」


 2人に案内され、雑談をしながら奥へと入って行く。階段を降り、地下の一室へ入ると、そこには広めのしっかりしたテーブルがあり、上に白いシートが被せてあった。

 そして、そこには博識そうな爺さんがいた。なんでも素材の鑑定スキルを持っているらしい。鑑定スキルか……いいな。もし手に入るなら欲しいもんだ。


「こちらへお願いします」


 セイブンさんに言われたので、オレは蟻の魔物をテーブルのシートの上に出す。すると、爺さんは早速鑑定し始める。


 そして、鑑定が終わる。やはり普通に出回っているものよりも軽く硬く、体の部分はある程度の柔軟性があるので衝撃を吸収してくれるだろうという結果が出た。やはり防具に向いているようだ。

 逆に足の部分は柔軟性が無いので、槍の柄や杖に、頭は体より硬いのでより強固な防具に、顎は更に硬いのでナイフなどにと、前にセイブンさん達が言ったのと同じ結果になった。

 価格は、普通の蟻の魔物より希少性が高く、素材の質も上で更に大きさもあるので、5倍の金貨20枚となった。


 光の魔石もなかなか純度が高く、いい品質とお墨付きをもらった。希少性もかなり高く、こちらは親指の爪ほどで金貨50枚。


 これだけで、70枚ーーオレの感覚だと70万くらいか。これだけあれば、しばらく困らないな。まぁ、盗賊のとこからもらってきたお金がまだかなりあるんだが……。


 さて、あとはどうしようか。明日は朝依頼を受けて、夕方には終えたい。そして可能なら明後日から大迷宮に潜ってみたいが……。

 そうだな、今日は明日からの準備に費やそう。そうと決まれば、早速買い物だ。


 オレはセイブンさんから金貨の入った袋を受け取った後、店の中を見せてもらうことを告げる。すると、ロンソーさんが案内を買ってでてくれた。そして、セイブンさんは、店の商品を半額で売ってくれると言い出した。


「いや、そんなことをして貰うわけには……」

「だってまだ私たちは恩返しをしていませんから。まぁ私たちは商人ですから、こんな事ぐらいしか出来ませんが……」


 オレは恩返しのことなんかすっかり忘れていたんだが、そう言われては断るのは失礼か。オレはその好意を受け取ることにした。そしてまた何かいい素材が手に入ったら買い取ってもらえるように頼んでおく。セイブンさんはそれを快諾してくれた。


 と言うわけで、ロンソーさんに案内されて、店の中を見て回ることに。このお店は3階建で、上の階に行くほど置いてある物の値段が高くなるそうだ。1階は携帯食や丈夫な服、手軽な武器防具など。2階は1階よりも高価な魔力の篭った武器や防具や道具類で、3階はさらに強いものがおいてある。ちなみにミスリル系の武器も3階に置いてあるそうだ。


 とりあえず上から見て行くか。3階へ行くとたしかに強い魔力を宿している武器や防具、道具類が置いてある。が、どうやら魔霧の渓谷で倒した魔物達の魔石の方が魔力が強いようで、おそらく自分で作った方が強いものが作れるだろう。

 だが、何か珍しいものや、良い武具をつくるヒントになるものがあるかもしれない。とりあえず見て回る事に。


 結局、気になったのは壁に飾ってあった弓だけだった。

 壁に3張飾ってあり、3つともミスリル製だ。しかし大きさと使われている魔石が違う。見てるとロンソーさんが声をかけてくる。


「弓が欲しいのですか?」

「考えてみたら、遠距離攻撃は魔法だけだからな。あっても困らないかと思ったんだ」


 オレがそう言うと、ロンソーさんは弓の説明をしてくれた。


「一番左のはミスリル製の弓で、特に効果は付いていません。真ん中の少し小さい弓は火属性の魔石を使っていまして、矢に火属性を付与することが出来ます。ただ、そうすると矢は再利用出来なくなってしまいますが……」


 なるほど、燃えるもんな。と言うと、他の弓は矢を再利用するもんなのか。


「一番右は大きさは一番小さいですが、風属性の魔石を使っていまして、矢に風属性を付与できます。効果は速度や飛距離の向上と野外で風の影響を受けにくくなります」


 やはり、風属性の弓が気になるな。オレはロンソーさんに断って、風の弓を持たせて貰う。握りの上下に魔石があり、魔力を込めると弓に嵌められた魔石が反応する。そして、弓を伝って弦に魔力が篭る。となると、弦から矢に魔法を乗せるのか。なるほど、こう言う感じで魔石を利用しているんだな。


「これは、ウインドバードの上位種のブラストバードの魔石を使っているんです」


 ちなみに価格は、ミスリルの弓が金貨50枚、火の弓が金貨70枚、風の弓が金貨80枚だ。やはり、風属性の方が利用価値はたかいだろうな。それならーー


「じゃあ、このミスリルの弓をもらえるか?」

「はい、かしこまりました。やはり、地属性と風は相性が良くないですからね」


 そういえばそうだったな。まぁいいか。わざわざ説明する必要は無いし。

 ちなみに会計は階ごとにするようだ。


「こちらは金貨25枚です」

「なぁ、半額で本当に良いのか?」


 オレは不安に思ったので聞いてみる。


「はい、私もやっと少しでも恩を返せて嬉しいですから」

「いや、だが道中の宿代も出してもらってたし、肉の買取もやってくれただろう?」

「あれは恩返しにはなっていません。グラスボアやフォレストウルフの群れから守ってもらってましたから、護衛してもらっていたようなものです」

「そう言うもんかね」

「そう言うもんです」


 ロンソーさんが嬉しそうに説明するので、オレはそれ以上何も言えなくなってしまい、結局半額で買わせて貰う事にした。しかもおまけで矢を30本も付けてくれた。大丈夫なんだろうか?


 だが、こういう真っ直ぐな人を見るとまた助けてあげたいって気持ちが湧いてくる。こういう人がオレが日本にいる時に周りに居てくれたら、もしかしたら……。


 いや、考えても無駄だな。だが、こういう人たちとは、これからも関わって行きたいもんだな。


 そういえば、アレがあったら買いたかったんだ。


「なぁロンソーさん、ここではアイテムバッグは扱ってないのか?」

「アイテムバッグですか?残念ながら今は品切れ中ですね。申し訳ありません」

「いや、ないなら仕方がない。あったら良いと思ってただけだから」

「もし、大迷宮に潜られるのでしたら、運が良ければ手に入れられますよ」


 そういえば、ザインたちもアイテムバッグが手に入ると言っていたな。可能なら狙ってみるか。


 その後、2階を見たが目ぼしいものはなく、そのまま1階へ。ここでは携帯食を(ダミーで)買っておくことにする。まだ、盗賊たちの食料が残っているが、どこかで買ったとしておかないと、不自然だろう。


 えーと、迷宮には2週間篭れるから、3食×14日で42食分。一食分が銅貨3枚だから……。いや、大量買いすると割引があるのか。だったら。


「金貨1枚分たのむ」

「はい、銀貨5枚です」


 ここでも半額にしてもらえるのか。ロンソーさんが嬉しそうだから、ここでもつい好意に甘えてしまう。銀貨5枚で40食分ーー安いな。


 ちなみに携帯食とは、水分を抜いたかなり硬いパンと干し肉、干し野菜やドライフルーツなどがセットになったもので、そのまま食べたり、水でふやかしたりして食べるものだ。数ヶ月は日持ちするらしい。


 個人的には、パンはあらかじめ水をかけて柔らかくし、干し肉と干し野菜は鍋に入れスープにする。ドライフルーツはそのまま食べるというのが、お気に入りの食べ方だ。


 さて、ここでの買い物はもう良いか。オレはロンソーさんにお礼を言って、店を出る。


「この度は本当に、本っ当にありがとうございました。」


 今朝も屋敷を出る時に同じことを言われた気がする。が、悪い気はしない。


「近くに来たら、また寄らせて貰うよ」


 そう言って、店をあとにする。この後は魔法屋に行く予定だ。お店で魔道具を見ていて、作りたくなったものが出来たからだ。



 魔法屋では魔法に必要な道具や素材、本などがまとめて扱っている。オレが欲しいのは、魔石を粉にした魔石粉だ。これは、魔石を加工して出た小さくて使い物にならないカケラや、元々小さくて使い道のない魔石を粉末状にしたものだ。これを今回は火と風属性の物を買おうと思っていたのだが……。


「これは!そうか、こういうやり方もあるのかーー」


 店内に入ったオレが見つけたのは、魔石に直接魔法陣を刻み込んだアイテムだった。今までは、魔石を中心に配置してその周りに魔法陣を描いたものばかりだった。魔法陣にはその魔石の魔力が流れるので、属性や強さを考えなければいけない。だからオレは、その魔石を持っていた魔物の骨や皮を加工して魔法陣を描いていたのだ。


 例えば強い火属性の魔石と、弱い火属性の素材で出来た魔法陣を組み合わせた場合、強く魔力を込めると、魔法陣の素材が耐えられずに燃えてしまうのだ。


 その場合、素材を強くするか、魔石を弱くするか、金属などの素材に魔石粉で魔法陣を描くか、の対策を取らなければならないのだが。


「魔石に直接魔法陣を刻み込めば、いや、それ以上に魔石を魔法陣の形に変形させればいいのか。魔石そのものが魔法陣なら、素材として負けることはない」


 オレは新しい発見に心踊った。店員が怪しい人を見るような目でオレを見ていたが、気にならなかった。オレはその魔法陣を刻み込んだ魔石を金貨20枚で買って店を出た。なんの魔石に何の魔法陣が刻まれているかを確認もせずに……。



 かなり浮かれてオレは街を歩いていた。が、しばらくしてやっと我にかえる。


「そういえば、今日泊まる宿を決めてなかった。危ない。街中で野宿とか怪しすぎる」


 さて、どうやって宿を探すか……。そういや、昼飯もまだ食ってなかったな。時間は昼を過ぎたところか。だったらどこか飯屋でも入って聞いてみるか。日本だとネットで調べて予約もできたんだが、こっちじゃそうもいかないからな。


 オレは手頃な食事処を探して、街を歩く。と、


「あっ!ヨシキさま!」


 声がかかる。見るとミリィと母親のファムさんが居た。ミリィはどこか嬉しそうだ。


「よぉ、どうしたんだ?こんなところで」

「お母様と買い物に行くところです。ヨシキさまは?」

「あぁ、オレは今日泊まる宿を決めてなかったから、昼飯のついでに探してたんだ」


 オレがそう言うと、ミリィは「そうだ!」と言う感じのいい笑顔を作って、


「お母様、私恩返ししないと!」


 と、言い出す。セイブンさんとロンソーさんの教育だろうか?まぁ、恩知らずな人間に育つよりは断然良いだろうが。


「いや、恩返しなら今日セイブンさんとロンソーさんにしてもらったし、昨日も泊めて貰ったから大丈夫だよ」

「でも、私も助けてもらったのに、何も出来てなくて……」


 オレが言うと、少ししょんぼりした様子で言ってくる。うーん、どうしようか。するとファムさんが、


「そうですわね、2人の命の恩人なんですから、いくらでも泊まっていって下さいな」


 しかし、今日ミスリルの弓を半額にして貰っているしな。あまり好意に甘えてばかりいても……。オレが考え込んでいると、


「あの、もしかして……ご迷惑でしたか?」


 泣きそうな表情で、ミリィが言ってくる。こんな表情されては断れないな。


「それじゃあ、今日と明日、お世話になるよ」

「この街にいる間は、ずっといて頂いても良いんですよ?」

「いや、実は大迷宮に入ろうと思ってな」


 オレは明日からの予定を話す。


「そうですか、大迷宮ですか。たしかに探索するなら、かなり日数がかかりますね」

「あぁ、だから早ければ明後日から潜ろうと思ってる」

「そうですか……」

「まぁ、大迷宮から出てきたらまた顔を出すから、そんな顔をすんな」


 オレは寂しそうな顔をするミリィにそう言って、頭を撫でる。ミリィは最初驚いた様子だったが、すぐに嬉しそうな顔をする。そしてオレの手を握って笑顔を見せてくれる。


「そういや買い物に行くんだったか?邪魔じゃなければ、荷物持ちとしてついていくよ」

「良いのですか? お食事をされる予定だったのでは?」


 オレが荷物持ちを名乗り出ると、ファムさんが心配してくれる。


「途中で、屋台がなんかで買わせて貰えばそれで十分さ」

「そうですか。では、お言葉に甘えさせていただきます」


 というわけで、買い物について行くことに。途中で串焼きや、サンドイッチの様なものを買い、ミリィが羨ましそうにしてたので2人の分もついでに買って、一緒に食べる。


 その後、市場の様なところへ行き、買い物をする。流石商人のお嫁さんだ。安い所をキチンと把握していて、上手く買い物をして行く。小麦粉が大量購入で安くなると書いてあるところでは、かなり迷っていたが、オレが魔力庫に入れられると言うと即座に買っていた。


 そして、買い物も無事に終了。午前中は馬鹿の相手で疲れたから、午後のゆっくりとした時間が、とても心地よかった。そういえばエリーゼ姫ともこんな風に買い物したっけな……。


 ーー


 ーー


 ーー


 オレは何をやっている? 身分証になる冒険者ギルドのカードが手に入ったんだから、すぐに王都に行けば良かったんだよな。なのに、自分の興味や好奇心から大迷宮に潜ろうとしている。エリーゼ姫との約束があるというのにーー。


「あの、どうかなさいましたか?」

「ん? あーいや、こういう風にゆっくり過ごすのも悪くないな、と思ってな」

「それにしては少し寂しそうな感じでしたが……」


 意外と見てるんだな。それともオレがわかりやすいのか?


「ちょっと昔の事を思い出しただけだ。気にするな」


 オレはそう言って誤魔化した。ミリィも聞いてはいけないと思ったのか、それ以上は追求してこなかった。


 ……ちょっと浮かれてたんだろうか?

 強くなって魔法の威力も上がり、魔道具や武器、防具なども作れる様になり、大概のことは自力でなんとか出来る様になった。

 魔物にも負けないし、金ランクの冒険者にも余裕で勝てた。だからオレは調子に乗っていたんだろう。だから、面白そうな大迷宮に入ってみようとしたんだろう。その前にやらなきゃいけないことがあるのに……。

 ダメだな、増長や慢心には気をつけないと、人として大切なものを無くしてしまいそうだ。


 とりあえず、どのみち1週間以内に初依頼は達成しておかないと、資格が維持できなくなる。そうすると王都には入れなくなるから、明日は予定通りにするしかない。としたら明後日からどうするか……。


 オレは考え込んでしまい、セイブンさんの邸宅に着くまで、無言で歩いてしまった。そのせいで、ミリィとファムさんには心配をかけてしまった。申し訳ない。




 夕食後、部屋の中で改めて考える。とりあえず王都には入れる筈だ。そのあとはーー


 ーー


 ーー


 どうしようか。


 目的はエリーゼ姫に、生きてることと狙われているから身を隠していることを伝えることだが……。


 侵入は最終手段だ。心理的にやりたくないし、王宮である以上侵入者対策の魔法や魔道具があるかもしれない。であれば、何か合法的な理由で王宮の中に入らなければならない訳だが、それだとエリーゼ姫と2人きりで会うなんてことはかなり難しい。


 姫の護衛の仕事があれば嬉しいが、そもそも見知らぬ男を護衛に選ぶことはないか。


 あとは何か教師的な教える仕事とか……。いや、それも信用出来る人じゃなきゃダメだろう。


 手紙も考えたが、そもそも知らない人からの手紙が、そのままエリーゼ姫のところまで届くとは思えない。


 となるとやはり侵入しかないわけだが……。


 ダメだ、アイデアが出ない。いっそ、エリーゼ姫じゃなく国王様に会えればいいか?それならエリーゼ姫に会うよりも可能性がありそうだ。何かイベントとか、献上品を納める機会とかあればあるいは……。


「ふぅ」


 考えが甘いな。よく考えたら、大臣に知られずに会わずにエリーゼ姫に会う方法なんて全然無い。なんか行き当たりばったりな感じだーーいや、この世界の知識や経験が少ない以上仕方がないのか。あまり自分を責めても仕方がない。まずは情報を集めよう。


 オレは考えを切り上げて、その日は眠りに就いた。




 翌朝、セイブンさんに朝食をご馳走になり、ミリィに見送られながら冒険者ギルドへ向かう。ミリィには心配されてしまったが、大丈夫だと言って頭を撫でると少しホッとした顔をしていた。気持ちを切り替えて、しっかり依頼をこなさなければ、せっかく手に入った資格が無意味になってしまう。


 冒険者ギルドへ着くと、そこそこ混んでいたが、ピークは過ぎている様だ。

 さて、どの依頼を受けようか? できれば1日で終わり、こっちにメリットが出るような依頼があれば良いんだが……。銀ランクの依頼を見ると、


 ・グラスボアの毛皮の調達

 ・ヒートリザードの討伐

 ・ポーションの材料の調達

 ・オーク肉の調達


 などなど……


 やはり、魔物を倒す依頼ばかりだな。さて、この中で気になるのは、ヒートリザードだろうか?場所は東の岩山、距離はギリギリ1日で往復出来るくらいか。それなら、オレだったら余裕でいけるか。オレはこの依頼を受けることにする。


 依頼書を持って受付へ行くと、昨日登録した時の受付嬢がいたのでそこへ行く。


「おはようございます、早速依頼を受けてくれるんですね」

「あぁ、そういう約束だったからな」

「これはヒートリザードの討伐ですか。対策は大丈夫ですか?」

「対策?」

「はい、ヒートリザードは炎系の魔物ですが、炎ではなく熱を使います。とくに、熱線は感知しづらく当たるとかなりの火傷を負います。なので、水属性の装備をするか魔法で防ぐかしなければならないのですが……」


 なるほど、炎じゃなくて熱か。だからヒートリザードって名前か。


「あぁ、大丈夫だ」

「わかりました。討伐部位は魔石、もしくは尻尾の先端になります。魔石の場合はこちらで買い取らせていただくので、報酬は高くなります」

「ちなみに、討伐の上限ってあるのか?」

「基本的にはありませんが、あまり多過ぎても受け付けられない場合がありますのでご注意下さい。ただ、百匹以上とかにならなければそんなことにはなりませんが……」


 という事は、多過ぎた分は魔法庫にでも入れておけばいいか。そういえば気になることが。


「もう一つ聞きたいんだが、魔物の討伐理由って何かあるのか?」

「そうですね、例えばゴブリンやウルフでしたらすぐに増えてしまうので常設の討伐依頼としてあります。あまり数が増えすぎると、リーダーや上位種に進化することがありますから。こちらのヒートリザードは、最近数が増えてしまって街道で被害が出てしまいましたので、討伐対象になっています」


 被害が出ると、やはり討伐対象になるのか。


「色々とありがとう。それじゃあ、行ってくる」

「あの、お仲間は?」

「いや、一人で行くんだが……」

「えっ?大丈夫何ですか?」

「あぁ、対策もあるから大丈夫だ」


 そう言ってギルドを後にする。やはり冒険者でも、ソロだと目立つか。かといって、パーティを組んだり、どこかに入ったりはしたくないからな。とりあえず行けるところまでソロで行こう。



 その後、無事にギルドカードで門を通過し(少し緊張した)討伐依頼の岩山へ向かう。徒歩で4時間程だが、人目がないところではストーンピラーで高速移動をする。周りが牧草地や畑だったのが、ただの草原になり、そのうち土や石だらけになり、最終的に岩山へとなっていく。体感で1時間ぐらいで着けた感じだな。


 早速気配を探してみると、あちらこちらにいる様だ。数は50匹を超えている。


「岩山の入り口でこれなら、奥にはもっといるんじゃないか?」


 とりあえず適当に討伐しておくか。オレは一番近くのヒートリザードへと向かう。いた、体長1mぐらいのトカゲだ。コモドドラゴンをオレンジ色っぽくした感じだろうか?

 ヒートリザードはオレを見つけると威嚇の声を上げる。そして口を大きく開けると口の中、というか喉の奥の方に魔力が溜まっていき、そして熱線が出る。それを横に動いてかわして近づき、ストーンピラーで打ち上げ、喉をナイフで掻っ切る。いつものパターンだ。そして討伐部位の尻尾の先端を切り、空いている袋の中へ入れて魔法庫へ。


「しかし、熱線は本当に目視しづらいんだな」


 魔力を見れば一目瞭然だが、普通に視認しようとすると、「空気が少し歪んでいる」といった感じがする程度だろうか。そういえばこういう魔法は無いのか? 無ければ魔道具を作ったらかなり厄介な攻撃になりそうだが。


 その後、50匹を倒して昼休憩にする。さて、午後も討伐するか、それともーーやはり魔道具を作っておこう。もしかしたら必要になるかも知れないからな。


 まずはミスリルの弓、これに前に魔霧の渓谷で倒したハリケーンイーグルの魔石を組み合わせる。この魔物は元々風を纏っているので、矢に風を纏わせるのに適しているはずだ。


 早速魔石を加工し、握りの上下に取り付ける。魔石に刻んだ魔法陣はウインドランス、風の槍だ。弓を引き、魔力を込めると、矢にウインドランスの効果が乗る。そして放つと、岩に穴が空いた。が、1発で矢がボロボロになってしまった。んー、なんかイマイチだな。


 試しに普通にウインドランスを使ってみる。先ほどより少し小さいが岩に穴が空く。弓矢を使う意味はないか?


 今度は遠くの岩に向けて矢を放つ。軽く放ったのに100mぐらい飛んだ。今度はウインドランスを使ってみると、100mも行かずに消えてしまう。魔力を強く込めれば100mは行きそうだが、矢を使った方が楽に遠くに攻撃出来るようだ。矢の消費はあるが、遠くを狙うなら弓矢は十分に使えるな。


 その後、さっき手に入れたヒートリザードの魔石と、持っていた鍋やフライパンを組み合わせて、魔力を込めれば熱を持ち、コンロ無しで調理できる調理器具を作った。


 そうこうしているうちに、結構時間が経ってしまったので、帰路ににつく。街に着くと夕暮れよりまだ早い時間だった。冒険者ギルドへ行くと比較的空いていて、朝の受付嬢がいたので、せっかくなのでそこへ行く。


「お疲れ様でした。無事に討伐出来ましたか?」

「あぁ、ありがとう。討伐出来たよ」

「ではギルドカードと討伐部位をお願いします」


 オレはギルドカードと、尻尾の先端50個が入った袋を出す。


「えっ!」


 受付嬢は取り出した袋の大きさを見て驚く。


「あの、何匹討伐したんですか?」

「50匹ぐらいだった筈だが」

「ヒートリザードを50匹ですか!?しょ、少々お待ちください」


 受付嬢は慌てて、後ろにいる上司みたいな男へ話をする。周りにいた冒険者達も、受付嬢の声を聞いて集まってくる。そして、上司みたいな男がこちらへ来る。


「ちょっと確認させて貰います」


 男は袋を開けて、尻尾の確認を始める。そして、


「……ま、間違いなくヒートリザードの尻尾で今日討伐されたものです」


 あぁ、なるほど。カサ増しとかでインチキしてないか確認したのか。そういうことする奴はいそうだな。


「あの、ヒートリザードの肉は持ち帰ってきては……いないですね」


 オレの荷物を見て、男はがっかりしていた。


「ん? あるぞ。魔力庫があるからな。まぁ、数は5匹程だが」


 本当は50匹あるが、あまり収納量が多いことがバレると面倒臭そうなので、少なく言っておく。


「あのっ、買い取らせてはもらえませんか?ヒートリザードの肉は結構人気があるんですが、量が出回らないので困っているんです。それに皮は熱に強いので、防具にも使えるので……」


 聞くと、肉はなかなか脂がのっていて、しかも肉自体も熱に強いので焼いても硬くなり過ぎないという。だから、人気があるのだとか。普通の肉は焼きすぎると硬くなってしまうからな。これはいいモノを手に入れた。


「そうだな、オレが世話になっているところにも肉と素材を持って行きたいから、4匹分なら売るが?」

「ええ、わかりました。それで構いません。それでヒートリザードはもう解体の方はされてますか?」


 そういや今回は解体してなかった。魔道具作りに夢中だったからな。


「いやしてないな。もしかして、ギルドで解体してくれるのか?」

「はい、解体も受け持っていますが、そうなると解体料を頂くことになりますが……」


 今から自分で解体するのも面倒だし、セイブンさん家へ持っていくのにそのままってわけには行かないか。


「ちなみに料金はいくらぐらいだ?」

「そうですね、ヒートリザードだと一体銀貨2枚ですね。買取り金額は1匹金貨5枚です」


 えっと確かグラスボアが肉だけで金貨5枚だったな。素材込みでそれと同じぐらいか。まぁ、大きさ的にグラスボアより小さいから、なかなかの値段なのか? まぁ、それでいいか。


「わかった、じゃあ解体も5匹分頼む」


 そういうと、男の職員に買い取りカウンターへと案内された。そこでヒートリザード5匹を出す。男はオレの持ち帰る1匹分を先に解体するように頼んでくれ、そしてまた受付カウンターへと戻ってくる。


「では、こちらが今回の依頼達成の報酬と買い取り分のお金になります。ヒートリザードの討伐1匹あたり銀貨5枚ですので50匹で金貨25枚、買い取り分が4匹で金貨20枚、そこから解体料5匹分金貨1枚を引いて、合計金貨44枚です」

「ありがとう。ちなみに、銀ランクって普通はどのくらい稼いでいるんだ?」

「そうですね、普通は1日で金貨1枚〜5枚ぐらいですかね。多くても10枚位でしょうか。ですから銀ランクが1日で金貨44枚稼ぐのはかなり凄いことですよ?」

「そんなもんなのか……」

「でも金ランクの冒険者を軽く倒せるんですから、このくらい不思議ではありませんね」

 

 そう言って、受付嬢は笑いかけてくる。オレはギルドカードとお金を受け取り、カウンターを後にする。


 なんとか初めての依頼は無事終了したな。あとは解体された素材を持ってセイブンさん家へ戻るだけか。そう思って買い取りカウンターの方へ向かおうとした時、ニタニタと笑っているゼットのメンバーと目が合ってしまった。



お読みいただきありがとうございます。

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