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天 落 者  作者: 吉吉
第1章 異世界転落
36/87

混乱と新技

 冒険者の2人に話を聞いているうちにお昼時になったので、食事休憩の為に少し道を外れた開けた場所に馬車を止めることに。周りは草原で、膝ぐらいまである草が風でなびいている。良い景色だ。


 ロンソーさんたちは、親子孫の3人で食事をするようだ。冒険者たちも自分たちで食事を用意しているみたいだ。雇い主と雇われたものが一緒に食事というのも難しいのだろうか? と、


「あの、ヨシキ様もこちらへどうぞ」


 とミリィが呼んでくれる。そういえば、人数が増えているが、食糧は大丈夫なのか? 盗賊から調達した食糧を出した方がいいだろうか?そう思っていた時、


「ん?」

「あのどうかされましたか?」

「ミリィ、下がってろ!」


 オレはナイフを取り出し草原の方へ向かう。オレの声に気づいたのか、冒険者たちも武器を手に取る。


 草原の揺れがかなりの速さで近づいて来る。そして、草原と同じような色と毛並みの魔物が出て来た。


「グラスボアかっ!」


 ザインがそう叫んだ瞬間、グラスボアは宙を舞う。

 あれ?魔法の威力が思った以上に強い。そして、思った以上に発動が速い。まぁ、取り敢えず先に始末するべきだな。

 オレは宙に浮いてるグラスボアの喉をナイフで掻っ切る。そして、距離を置く。返り血は浴びたくないからな。


 しばらくビクビクしていたグラスボアは、そのまま動かなくなる。うーん、小さいな。オレの腰より少し低いぐらいだ。やはり魔霧の渓谷の魔物がデカすぎたんだろうか。


「おい、今何をした?」

「あ?あぁ、魔法で宙に浮かせてナイフで切っただけだが?」

「魔法?使ったのか?」

「え?見えなかったけど……」


 どうやら発動が速いと思ったのは、オレだけじゃなかったみたいだ。そういえば、魔霧の渓谷から出た後に魔法を使ってなかったな。もしかしたら環境が変わったから、威力や速さに影響が出ているのかもしれない。


 そういえば研究所の本に、魔素濃度が高いと魔法に圧力がかかるから、魔法が使い辛いんだったか。水圧みたいなものだろうか? だとしたら、こちらの環境で魔法を使うのにも慣れていかないと、取り返しがつかないことになる。今回は防御系のストーンピラーだったから良かったが、攻撃系の魔法だったら他人を巻き込みかねない。


 冒険者たちは、かなりオレを警戒しているようだ。まぁ、やっちまったもんはしょうがない。オレはとりあえず話を逸らすことにする。


「で、コイツは食えるのか?」

「え?あぁ、グラスボアの肉は臭みがなくて食べやすい。毛皮も草原の爽やかな香りがするから、比較的人気が高いな」


 お、いいな。草原の香りに包まれて、昼寝とかしたら気分が良さそうだ。オレは早速解体する。首を切り落とし、魔石を取り、毛皮を剥いで魔道具で綺麗にする。研究所の本にあった魔法を基にした魔道具で水と風の力で汚れや血を落とすものだ。

 オレはさらにこれに火の魔法を組み合わせて温かくして、体の汚れを落とす魔道具も作っている。風呂に入れない時に使えそうだからだ。


 あっという間に解体は終わった。が、なぜかみんなが驚いた顔をしてこちらを見ている。冒険者だけでなく、ロンソーさんたち親子も驚いているようだ。


「ん?どうした?」

「いや、お前本当に何者だ?」

「何者って、言われてもな……。何にそんなに驚いてんだ?」

「いや、早すぎだろ?さっきの魔法も見えなかったし、今の解体もあっという間だったし」


 あぁ、そういうことか。まぁ、魔法はオレにも予想外だったし、解体は3mの魔物に比べたら簡単だったからなんだが。


「まぁ、いろいろ訳ありなんだよ」


 オレはそう言って誤魔化すことにした。そして、


「この肉、今食うか?」


 そう言うと、みんなは頷くのだった。




「いやぁ、美味かったな」


 たしかエゾとかいったか。斥候の男がそう言ってくる。交代をしたようで、今はザインとイザベラが御者をやっている。


「そうか?普通だったと思うが」


 オレがそう返すと、


「普通は護衛でちゃんとした食事は食べられないのよ?大体は簡単な携帯食で済ますんだから」


 聞くと、前日は野宿だったらしい。そういえば現在位置を聞いてなかったので、改めて聞いてみると、食の街『フォード』から、商人の街『ビネス』へと向かう途中の道らしい。

 主要街道であれば、馬車で1日の距離に街か町があるのだが、この道は主要街道ではないので、距離が離れているところは野宿になるとのことだ。


 ちなみにこの国の主要街道は大雑把に言うと、TとVを重ねて横長にした感じだ。一番南に王都があり、北西に食の街『フォード』、北東に生活の街『リーフェ』、王都から北に行くと商人の街『ビネス』があり、さらに北に行くと港町『ファーベ』がある。

 ファーベの西にフォード、東にリーフェがあり、フォードとリーフェから王都へと向かう主要街道がある。


 今は主要街道を使わず、真っ直ぐにビネスに向かっているので、野宿になるがその分早く移動出来るらしい。


 こっちの質問が終わると、今度はオレが質問を受ける番になってしまった。


「なあなあ、魔霧の渓谷で何か手に入ったか?」


 肉のお陰で警戒が薄れたのか、エゾが気さくに話しかけてくる。魔法の事は聞いても答えてくれないと思っているのか、聞いてこない。まぁそれは助かるが。警戒されまくるのも嫌だが、馴れ馴れしいのも困るな。しかし、ここは我慢しておくか。


「ああ。と言っても、オレが戦った訳じゃないんだが……」


 とりあえず、3mのアリクイの魔物と蟻の魔物の戦いのことを話す事にする。その時、アリクイの魔物が残していった蟻の魔物の死骸を手に入れた事、そして3mを超える魔物がウヨウヨしていたので、早めに切り上げて帰ってきた事を話す。


 すると、今度はセイブンさんとロンソーさんが食い付いてきた。なんでも、この親子は冒険者向けのアイテムを取り扱っており、その素材になりそうな蟻の魔物の死骸に興味を持ったみたいだ。なので、次の町に着いたら見せる事になった。


 その後、何も問題はなく順調に進み、夕暮れ時に町へたどり着いた。冒険者や商人は、ギルドカードがあれば町に入るのは無料らしいが、オレだけ身分証が無いため通行税を払う事に。


 町に入ると、ロンソーさんに


「ヨシキさん、先に商業ギルドに行きましょう」


 と言われた。理由を聞くと、グラスボアの残った肉を買い取ってもらった方が良いとのことだ。この世界は微生物がいないが、魔素がその代わりをしているようで、食べ物も劣化していく。

 肉なんかは1日で味がかなり落ち、2日もすれば食べられなくなる。まぁ、冷蔵や冷凍しておけば日持ちはするので、そこらへんは日本にいた時とほぼ同じ感覚なので助かる。


 また、一般人が勝手に物を売ったりする事は禁止されているそうだ。商売のスキルや商人のジョブを持っていればいいのだが、そうでないと罰せられるらしい。

 おそらく商人の仕事を守ることと、違法な取引を取り締まる為のものだろう。


 なので、オレが肉を直接売ることは出来ないので、商人であるロンソーさんに買い取ってもらい、それをギルドで流して貰うそうだ。面倒臭いが、そういうルールなら仕方がない。本当は魔法庫の中に入れておけば大丈夫なのだが、魔力庫と偽っている以上、売らないわけにはいかない。


 だが毛皮は売りたくないと言うと、残念な顔をされてしまったが、草原の香りに包まれて昼寝をするのは譲れない。

 結局肉だけを売り、金貨5枚を手に入れた。恩返しのつもりか、ロンソーさんに利益は出てないようだが、本人がそれでいいと言っているので、ありがたく貰う事にした。


 その後、ギルドで宿を紹介してもらい宿へ向かう。

 着いた宿は少し高そうな宿で、馬車の管理や馬の世話もしっかりやってくれるところだそうだ。確かに積荷を盗まれたりしてら大変だからな。


 部屋はセイブンさんの家族で一部屋、冒険者で一部屋、オレが一部屋となった。オレは自腹で泊まろうと思ったのだが、セイブンさんに恩人にそんな事はさせられないと言われたので、ありがたく泊まらせて貰う事にした。


 その後、セイブンさんに言われて預かっている荷物を一旦馬車に戻して欲しいと言われたのでもどす。するとセイブンさんは、積荷のチェックを始める。オレが盗んでないか確認してるのかと思ったが、どうやら商人としての習慣らしい。

 宿に着いた時と、宿を出るときにきちんと毎回確認しているそうだ。確かに商人として積荷の管理は大切だ。と、そこで気がついたことがあったので、ロンソーさんに聞いてみる。


「なぁ、ロンソーさん。あんたは盗賊にとられたものとか無いのか?」

「えっ、ありますけど……」


 そう言って、黙り込んでしまった。まぁ、あまり話したくないのなら仕方がない。とりあえず冒険者にも確認したいことがあるので、部屋に向かう。


「なぁ、少し気になったんだが、もし冒険者が盗賊に襲われてそれを返り討ちにした場合、盗賊の持っていたものを貰っても問題はないのか?」

「あぁ、基本盗賊の持ち物は出どころがわからないものが多かったりするからな。ギルド主体の討伐だったら話は別だが、個人で襲われた際には問題は無いはずだぞ」

「そうか、ありがとう」

「なんかいいもんでもあったのか?」

「いや、確かにあったが、それが罪になるなら不味いと思ったんで、確認させてもらっただけだ」


 そう言って立ち去ろうとしたら、エゾに肩を掴まれた。


「で、何があったんだ?」

「あー、防御用の魔道具を持っている奴が何人か居たんで、ちょっと貰ってきたんだが……」


 そう言って、オレは数個の魔道具を出す。本当は遺跡にあったもの根こそぎ貰って来たんだが、それを話すわけにはいかないので、誤魔化しておく。


「あぁ、これは飛び道具や弱い魔法を防いでくれる奴だな。矢や魔法の不意打ちを防ぐのに良く利用されてる。そんなに高くは無いが、セイブンさんなら買い取ってくれると思うぜ」

「そうか、ありがとう」


 オレはそう言って、部屋を後にする。そのままロンソーさんに会いにいくと、部屋にはセイブンさんが戻っていた。


「なぁ、ロンソーさん。盗賊にとられたものって、これで間に合うか?」


 オレはそう言って、一枚のコインを出す。金貨100枚に相当するそれは、


「これは、ミスリル銀貨……」

「あぁ、あの時かさ張らない物だけちょっと頂いてきたんだが、足りそうか?」

「え、ええ、十分過ぎる程なんですが……。良いのですか?」

「あぁ、オレも貰っているし、多いようだったらミリィの為に使ってあげてくれ」


 オレがそう言うと、ミリィとセイブンさんが改めてお礼を言ってくる。


「ありがとうございます」

「息子と孫を助けて貰ったばかりか、こんなに良くしてもらえるなんて……」

「いや、あんたらは被害者だろ?別にオレが損してるわけじゃ無いからな」


 そう言ってオレは、部屋を後にする。あの人たちは真っ当な人みたいだからな。そう言う人たちには幸せになってもらいたいものだ。


 自分の部屋に戻ってきたオレは、特にすることがなかったので、いつもの癖で考え込んでしまった。こういうときは何故かどうしても悪いことを考えてしまう……。

 1人になり、周りの人間から解放されて頭に浮かんだのは、


「オレは何をしてるんだろう……」


 という言葉だった。散々嫌な目にあって来ているのに、何故他人に優しくしているのだろうか。


 あの時、盗賊がミリィを襲っているのを見た時、何故俺は助けたんだろう。平穏な暮らしを望んでいるのだったら、見て見ぬ振りをすることも出来たはず。


 エリーゼ姫のこともそうだ。必ず帰ってくるという約束も、この世界では守られないこともあるだろう。なのに何故オレは約束を守ろうとしているのだろう。


 さっきのミスリル銀貨も、言わなきゃわからないのに、何故あげたんだろう。


 自分で自分の行動がわからなくなる。オレは何がしたいんだ?自分がただのお人好しにしか見えなくなる。ただ、流れに流されているだけのような気がしてくる。


 ……


 ……


 ……


「ふぅっ」


 ネガティブな考え方は昔から変わらないな。

 とりあえず、考えを切り替えよう。ミリィを助けたことも、エリーゼ姫との約束を守ろうとしていることも、別に後悔はしていない。ただ、日本にいる時から、物事が上手くいかなかった。そして、こっちの世界に来た後も上手くいかなかっただけだ。だから人と接するのを辞めて、引き籠りたいと思ったんだ。


 …………もしかしてオレは上手くいかないことから逃げていただけか?もしかして、そういう理不尽と戦えば良かったのか?

 いや、日本にいる時は精神的にも疲れ果てていたから無理だ。

 じゃあ今はどうだ?いまは盗賊が持っていたお金もある。理不尽な暴力に立ち向かう力も手に入れた。

 盗賊と戦った時に、うまくいかない事に憤って、運命や宿命をブチ壊してやると思ったのも事実だ。


 じゃあオレは理不尽な奴や不愉快な奴らをぶちのめして生きていけばいいのか?自分の邪魔をする奴らを蹴散らしていけばいいのだろうか?だがそれは違う気がする。


「あぁ〜、駄目だ。頭の中がぐちゃぐちゃだ」


 訳が分からなくなってきた。自分で自分がわからない。このままだと気が狂いそうだ。


 ……


 オレは気分転換を兼ねて、部屋を出る事にした。


 とりあえず体を動かそうと思い、宿の裏のスペースに来た。ここは泊まった冒険者が体を動かすのに使ったりするらしいから、使わせてもらう事にした。


 やることは、まず魔法の速さと威力の確認だ。とりあえず、今日使ったストーンピラーで確認してみる。魔霧の渓谷にいた時と同じように使ってみると、倍以上のスピードで魔法が発動する。これはあのグラスボアが宙に浮く訳だ。

 そこで、面白いことを思いついたので、試してみる。危険だから身体強化も強めにかける。


 ……


 これは、意外とつかえそうだ。あとは、他にも……。


 ……


 しばらく魔法の実験をしていると、人が近づいてくる気配がする。見ると、ザイン達冒険者組だ。


「よぉ、何やってんだ?」

「あぁ、なんか考え事してたら頭ん中がこんがらがってきてな。なんかムシャクシャしてきたから身体を動かしてた」

「へぇ、そうか」


 そう言うとザインは、オレを笑いながら見たあと、


「俺と試合をしないか?」


 と言ってきた。


「なんでだ?」

「理由は特に無いな。強いて言えば、俺らも身体が鈍らないように毎日訓練しているから、偶に違うやつと戦ってみたいと思ったってところかな」


 訓練か……。まぁ、丁度今思いついた魔法の使い方を試してみるいい機会だ。


「因みに魔法は使っていいのか?」

「あぁ、周りに迷惑がかからなきゃいいぞ。あと、訓練の枠を超えなければな」

「じゃあ大丈夫だ、かなり地味な魔法だからな」


 オレがそう言うと、ザインは訝しげな目を向けるが、それ以上は聞いてこなかった。戦えば分かると思ってるんだろうか?ザインはオレから3mほど離れたところで剣を構える。オレもナイフを両手に構える。


「それじゃ、いくぞ!」


 ザインは間合いを詰め、切りかかってくる。オレはナイフを構え、避けるような動きを見せる。が、大きく動く必要もなく、ザインの剣はオレの右側へ流れる。


「クソッ!」


 ザインが悔しげな声を上げる。

 距離や位置が上手く合わせられないな。まぁ、少しずつ調整していくか。

 ザインは切り返すように横薙ぎの一撃を放ってくるが、力がこもってないので、ナイフで簡単に弾く。その隙にオレはナイフを突き出すが、ザインは後ろへ飛ぶ、が、バランスを崩す。オレはさらに前へ踏み込むが、突きが来たので後ろへ躱す。

 体制を整えたザインがまた切りかかってくるが、今度は左へバランスを崩し、そこへ斬りかかると、また後ろへ飛ぼうとする。が、今度はうまく後ろへ飛べず、オレのナイフが近づくと空いている左手で殴ってくる。


 なるほど、剣だけが武器では無いか。蹴りとかも警戒した方がいいな。そう考えていると、ザインはかなり恨めしそうな目でこちらを睨んでいる。


「おい、ザイン!どうしたんだ?遊んでんのか?」


 エゾは冷やかしているが、女性2人は不思議な顔をしている。


「だったらお前が戦ってみろ!死ぬほどやり辛いぞ!」


 ザインが怒鳴り返す。すると、エゾが前に出てきたので、ザインは後ろへ下がる。


「言っておくが、オレはスピードならザインには負けないからな」


 そう言ってエゾはこちらに突っ込んでくるが、盛大にコケて、顔面から地面にダイブする。すぐ起き上がり、文句をいおうとするが、その前にオレのナイフが迫る。慌てて後ろへ下がろうとするが、またコケる。起き上がると青筋を立てて切りかかってくるが、右へバランスを崩し、慌ててバランスを取ろうとするが、更にバランスを崩す。


 そして、オレが近づくとバランスを崩したままナイフを振るうが、全く力が入ってないので、オレがナイフで弾くとそのまま倒れてしまう。


「チクショー!何なんだよ!」


 倒れたまま、罵声を浴びせてくるが、オレは距離を置いたまま様子を見ている。


 その後またザインに変わり訓練は続いたが、結局まともに一太刀も振れずに訓練は終了した。


「ありがとな、いい練習になったぜ」


 オレがそう言うと、2人は不機嫌そうな顔をしながら


「あぁそうかい、そいつはよかったな!」

「役に立てて何よりだよ!」


 オレは不機嫌な声を聞きながら部屋に戻った。2人には悪いが、結構スッキリしたな。残り2つの魔法の使い方は、また今度練習すればいいか。



 ー ー ー ー ー ー ー ー


「で、2人とも何をしてたの?」

「なんかいつもと全然違ったじゃん」


 イザベラとリザから言われ、俺は更に不愉快になる。わかってる、俺から訓練を持ちかけたんだから、文句を言う筋合いがないことは。だが、まさかあそこまで一方的に遊ばれるとは思わなかった。


「アイツの魔法だよ」

「あんな使い方なんてアリかよ!」


 俺が言うと、エゾも文句を言ってくる。全くだ。あんな魔法の使い方をした奴なんて今まで会ったことがない。

 だが、イザベラとリザは分からないらしく、


「全然魔法を使っている様には見えなかったのだけど……」

「闇属性の阻害系の魔法かな?」

「違う、おそらくストーンピラーだ」

「「は?」」


 2人は声を揃えて言う。やはり周りには解り辛い様に魔法を使っていたのか。俺は2人にわかるように説明する。


「え?ピンポイントで足の下に?」

「あぁ、そうだ。だから剣を振ろうと踏み込むたびにバランスを崩しちまうんだ」

「俺なんかいきなりつま先の前にだされて、思いっきりコケちまったぜ」

「あぁ、それで顔面ダイブしたんだぁ〜」


 リザに言われて、エゾは睨み返す。俺も後ろへ下がる時に踵を引っ掛けられたからな。まだ、足の真下ならなんとかなるが、ああも足裏の内側や外側ギリギリにやられるとまともに立ってられなくなる。だが、それを警戒しすぎると、今度は踏み込みが甘くなり力が込められなくなる。すると、今度は簡単に弾かれてしまう。


「まさか、ストーンピラーがここまで厄介な魔法になるとはな」

「ていうかエゾは地属性使えるんだから、真似すれば?」

「馬鹿言うなよ。相手の攻撃を読みながら、ピンポイントで相手の足裏に瞬間的に魔法を発動させるんだぞ!一体どんだけ修行すればあんなことが出来るようになるんだよ!」


 確かにエゾの動きにも合わせられると言うことは、エゾよりも素早く魔法を使えると言うことだ。それだけならまだ出来ない訳じゃないが、相手の動きにしっかり合わせてピンポイントに魔法を使うとなると、普通じゃ不可能だ。


「全く、アイツは何者だよ……」


 とりあえず報告だけはしておくか。少なくとも、敵にならなければ良いんだが……。








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