表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天 落 者  作者: 吉吉
第1章 異世界転落
35/87

商人と冒険者

「…………さて、どうしようか」


 オレは周りを見渡す。盗賊の死体が散らばっている。後ろでは女の子が呆然としていて、下では女の子の父親がキョロキョロしている。まぁ、この惨状を見れば当然か。


 とりあえず、女の子を抱えて父親の下へ降りる。


「おい、大丈夫か?」


「え? ……ええ、大丈夫です。あなたが助けてくれたのですか?」


「ああ、一応な」


 話を聞いた方が良いかもしれないが、後始末の方が先か? 女の子はまだ呆然としている。周りの気配を感じ取ってみるが、盗賊の残りは建物の中を含めて居ないようだ。


「とりあえず、中で休んだ方が良いか? 中には盗賊は居ないようだし」


「え、ええ。ありがとうございます」


 父親はまだ動揺しているのか、しどろもどろになりながらも返事をする。


 オレは女の子を抱えたまま、遺跡の中へ入っていく。父親も後ろから付いてくる。一番近くの部屋へ入り、女の子を座らせる。近くにカップがあったので、2つ水魔法で洗浄した後魔道具から飲み水を入れる。父親は入り口で突っ立っている。


「とりあえ、水でも飲んで落ち着いてろ。オレは外の後始末をしてくる」


「え、あぁ、ありがとうございます」


 父親はまたお礼を言う。オレは外に出て盗賊の始末を始める。オレが居ない方が、多分2人も早く落ち着くだろう。


 土魔法で大きな穴を掘り、そこに盗賊の死体をいれていく。魔力の反応がある時は調べて、持っていた魔道具を回収する。盗賊たちが使っていた武器も念のため貰っておこう。

 全く、これじゃあどっちが盗賊かわからないな。そんなことを考えながら作業を終える。嫌悪感は最初少しだけあったが、もう平気だ。

 オレは日本にいる時とだいぶ変わってしまったな。まぁしょうがないか……。遅かれ早かれきっとこういう事は起きただろうし、その時もしかしたらオレが死んでいたかもしれないからな。


「それよりも、問題はこの後どうするかだ……」


 このまま2人と一緒に行くのはマズイな。きっと街へ行ったら、あれこれ聞かれらだろうし、そうなればオレのことが大臣の耳に入るかもしれない。それに、この場所の事も話さなければならないだろう。そうなれば、ここに戻ってきたときに、安心して引きこもれない。


 一番良いのは、2人を気絶させて安全な場所に置いておく方法だが、2人を運んでいればかなり目立つし、そもそも2人を置いておいても安全な場所がない。


 何か良い方法はないか?目立たずに安全で、しかもこの場所のことを話さなくても良い方法は……。


 ……


 ……


 ……


 これだと強引か?いや、どのみちあの2人からこの場所や盗賊の情報は漏れるか。治安維持の関係上、黙っててもらうわけにもいかないしな。


 それでも……うん……うん。やっぱりこれしか思いつかないか。いつかは近くの街に行こうと思ってたわけだし、ちょうど良いか。考えている間に盗賊の始末が終わったので、オレは2人の元へ戻る事にした。


 が、2人は抱き合いながら涙を流していた。流石にこの状況で入っていくのは忍びないな。なんせ、大勢の盗賊に囲まれてイロイロ危なかったわけだからな。

 それなら先にやる事をやっておくか。


 オレはそっと部屋の前から移動し、奥へと向かいながら、部屋の中にある武器や防具、魔道具や食料、お金や宝石などの貴金属等、使えそうなものを回収していった。

 そして、最後に地下に降りてボスの部屋の物を回収して、最後にボス専用の食料庫を見つけて回収する。おそらく結構な高級品なんだろうな。本当は、ボスがいる時に嫌がらせで奪おうと思ってたんだが、まぁしょうがない。


 一通り全ての部屋を回って回収を終えた。結構な量があったので、時間がかかったな。2人の元へ戻ると、2人は落ち着いた表情で話をしていた。そしてオレを見ると、


「この度は本当にありがとうございました。あなたのお陰で私も娘も助かりました」


 父親は深々と頭を下げる。女の子の方も父親に合わせて頭を下げてくる。


「いや、たまたま居合わせただけだから、あまり気にしないでくれ」


「いえ、そういうわけには!私も商人のはしくれ、受けた恩を返さずにいるわけにはいきません」


 へぇ、商人は自分が得する事しか考えてないと思ってたが、こういう人もいるのか。対等な取引みたいな感じか?


「そうか。だが、とりあえずそういう話は明日にしないか? だいぶ暗くなってるし、あんたらも疲れてるだろ?」


 そう言って、オレは簡単なスープとナンもどきを出した。こういう場所だと、ふっくらしたパンはあり得ないはずだからな。しかし、つい、いつもの癖で……。


「今、どこから食事を……」


 つい、普通に魔法庫から出してしまった。まぁでも、言い訳は考えてある。


「あぁ、魔力庫が使えるからな。さっき盗賊の残した食料があったんで、作ってみた。口に合わなかったら、悪いな」


「いえ、食事を用意してもらえただけで……」


 その日は、簡単な自己紹介をしただけで、休む事にした。父親の名前は「ロンソー」、娘の名前は「ミリィ」だ。食後は、見張りはオレが受け持つ事にして、早々に休んでもらった。


「さて、やるか……」


 2人が寝静まったのを見計らって、オレは行動をする開始する。



 ◻︎ ◻︎ ◻︎ ◻︎ ◻︎ ◻︎ ◻︎ ◻︎


「う、うぅ〜ん」


 ロンソーが気だるそうな声を上げながら目を覚ます。


「よぉ、目ぇ覚めたか?」


「あ、おはようございます」


 ロンソーは起き上がり大きく伸びをする。そして、ピタリと固まる。しばらくして、


「あ、あの、ここは何処ですか?」


「さぁな?オレにも分からねぇ……」


 オレたちは今、草原にある大きな岩の近くにいる。昨日の夜は遺跡の中にいたのだから、驚くのも無理はない。


「オレにも良く分からねぇんだが、昨日の夜、いきなり遺跡の床が光り出してな。慌てて駆け寄ったんだが、床に魔法陣みたいのが出てきて、気がついたらこの場所に居たんだ」


「ま、魔法陣?」


「あぁ。まぁ、そう見えただけで実際は別のモンかもしれねぇが、何か心当たりは無いか?」


「いえ、あまり魔法関連は詳しく無いので……」


 ロンソーはそのまま黙ってしまった。


 実際は、オレが魔道具で2人を気絶させて、研究所の緊急脱出路とかいてあった魔法陣を使って来たんだが。後はうまく誤魔化さなきゃな。まぁ、よく分からない、で通すつもりではあるが……。


 その後、娘のミリィも目を覚ましたので、状況を説明した。そして、この場所にいても仕方がないので、とりあえず少し離れたところにある街道の近くへと移動する。もしかしたら誰か通るかもしれないからな。


「ちなみに、この場所に見覚えは無いか?一度通ったことがあるとか……」


 一応オレは聞いてみる。しかし、2人とも首を振るだけだった。さて、どうするか。とりあえず、朝食がまだだったので、魔道具で簡単な朝食を作る。と言っても、遺跡にあった盗賊の保存食と、簡単なスープだけだが。


「ここに居てもしょうがないし、どっちかに行くか」


 目の前の街道は真っ直ぐに左右に続いている。ちゃんとした道である以上、街へと続いてるはずだ。どちらかに向かおうかと、話をしていると。


「あ、あれは?」


 ミリィが何かを見つける。よく見ると、遠くに砂けむりのようなものが見える。馬車だろうか?丁度いい、この場所を聞いて、可能ならこの2人を乗せてもらおう。と、思っていたのだが、ある程度近づいたところで、馬車は止まってしまった。


 しばらく待っていると、馬車から2人の男がこちらに近づいてくる。1人は戦士風の男で、金属製の胸当てをして腰に刺してある剣に手をかている。もう1人は身軽そうな斥候のような感じで、手にはしっかりナイフを持ちながら近づいてくる。


 あぁ、たしかにこんな場所に人が立っているのは怪しいよな。下手すれば盗賊に間違えられかねない。オレは両手を上にあげて男たちに近づく。


「こっちに戦う意思はない、話を聞いてもらえないか?」


 オレは2人に話しかける。


「後ろの2人を助けたい、できれば強力して欲しい」


 後ろの父娘を見ながら、オレは話をする。


「こんな所で何をしている」


「オレもわからねぇ」


「は?」


 素っ頓狂な声が帰ってくる。とりあえず、後ろの父娘を呼んで話をする事にする。オレ1人だとかなり怪しいからな。よく見れば、オレは全身黒尽くめだ。盗賊に見えてもおかしくない。


 オレは父娘と今までの経緯を話す。


「転移系の罠か……?」


 戦士風の男が何か思い当たりそうな事を言ってくる。


「何か心当たりがあるのか?」


「あぁ、古代文明の遺跡などでは良くあるらしいな。まぁ、そういう遺跡では魔物の群れの真ん中とか、水中深くとか侵入者が生きて帰れないところに転移させるのが普通みたいだから、お前らは運が良かったんじゃないか?」


 その話を聞いて、父娘は顔が青ざめている。とりあえず、そういう罠があるんだったら、オレがした説明も違和感は少ないか。


「事情はわかった。完全に信用した訳じゃないがな。一緒に連れて行くかは、護衛している商人に確認してからになる。それは構わないよな?」


「あぁ、無茶を言っているのはわかっている。もし無理だったら、一番近くの街を教えてもらえればそれでいい」


 オレと戦士風の男の話は終わった。あとは、護衛している商人次第ということか。オレたちは止まっている馬車に向かって行く。


「あれ?あの馬車は……」


 馬車を見て、ロンソーがつぶやく。馬車の影から男が見ているが、何故か驚いた顔をしている。


「ロンソー!?」


「あぁ、やっぱり親父の馬車か!」


 馬車の影から見ていた男が近づいて来る。ロンソーとミリィも男の方へと嬉しそうに向かって行く。


「ミリィまで……。なんでお前たちがこんな所に!?」


 2人はロンソーの父親に事情を話していく。


「親子か。運が良かったな、説明する手間が省ける」


 オレがそう言うと、戦士風の男が


「そうだな。だが、馬車が……。どうするか考えないといけないな」


 聞くと、護衛は一緒に馬車に乗っているらしい。馬車と同じ速度で外を歩いたら疲れて、護衛なんか出来ないのが理由らしいが、人が乗る場所以外は全て荷物で埋まっているらしい。

 となると、人が疲れない速度で馬車に走ってもらって、外をついていくか、近くの町で馬車を借りて迎えにきてもらうか、あとは自力で街まで歩いていくか。

 まぁ、とりあえず2人だけも乗せて貰えればいいんだが。


 すると、話をしていたロンソーたち3人がこちらに近づいて来る。


「あの、ヨシキさん。申し訳ないのですが、魔力庫に余裕はありますか?」


「ん?あぁ、多少は余裕があるが?」


「もしよければ、馬車の荷物を少し預かって貰っても良いでしょうか?」


「あぁ、なるほどな……」


 つまり馬車に乗るスペースを確保するために、オレの魔力庫に荷物を入れようということか。そうすると、オレだけここでサヨナラとはいかなくなるが……、まぁしょうがないか。オレたちは馬車の後ろへと回る。

 馬車の影で見えなかったが、そこには2人の魔道士風の女性がいた。念の為、後ろを警戒していたのだろうか?軽く挨拶して馬車の積荷を見る。


「どのくらい入れればいいんだ?」


「可能なら、ここからこのへんまで」


 だいたい馬車の1/4ぐらいか。オレは了解して積荷を仕舞う。


「へぇ、結構入るんだな」


「そうか?ていうか、普通はどのくらい入るんだ? 他人と比べたことがないから、分からないんだが」


 斥候みたいな男が聞いてきたので、オレも聞いてみる。


「うーん、多い奴は馬車一台分ぐらい入るかな。けど、使える奴自体がそんなに多くないからな。オレはだいたいこのくらいだ」


 と馬車の1/6ぐらいを示す。


「とは言っても、戦闘もしなくちゃならないから、ほとんど使ってねぇよ。大体はアイテムバッグがあれば済んじまうからな」


 と言って、腰につけてあるウエストポーチのようなものを軽く叩く。


「アイテムバッグか……」


 あれば便利か? いや、魔力庫を使えると言ってしまった以上、必要は無いか。だが魔力庫は魔力を使えばその分容量が減るんだよな。魔法庫はそんなことないんだが、一応魔力庫を使っていると言っている手前、カモフラージュで持っておいても損は無いか。いくらするかは分からないが、容量が大きいものがあったら買っておこう。


 そう考えてるうちに、馬車に乗る準備が整ったので、オレたちは馬車に乗る。準備と言っても、床に柔らかい布を引いて座りやすくしたぐらいなのだが。


 御者席には、いつのまにかさっきの斥候っぽい男と、魔道士風の女性が座っている。そして馬車は出発する。


「一応自己紹介しておくか。俺はザイン。冒険者グループ『ゼット』のリーダーだ、よろしくな」


 と、戦士風の男が自己紹介を始めた。冒険者か……。商人を護衛しているから傭兵かと思ったが違ったのか。

 そのザインの自己紹介を皮切りに、みんなそれぞれ自己紹介していく。


「私はイザベラ、治癒士よ」


 治癒士……魔道士じゃなかったのか。確か治癒士は珍しい筈だ。回復魔法自体が使える人がそんなに多くなかった筈だし、大体は町の治癒院で働いてるからな。


「ちなみに、御者席にいるのが、エゾとリザ、斥候と魔道士だ」


 なるほど、やはり斥候だったのか。魔道士はそのままだな。


「ワシは商人のセイブンです。ロンソーの父でミリィの祖父です。この度は息子と孫を助けて頂きありがとございました」


 セイブンと名乗った男は、深々と頭を下げる。なんというか、人の良さそうな感じだな。ロンソーもそうだったが、この親子は真っ当な商人っぽいな、多分だけど。


「ロンソーです。今回は盗賊に連れ去られたところを、こちらのヨシキさんにたすけてもらいました。もしあのままだったら、わたしも娘もどうなっていたかわかりません。本当に感謝しています」


 と、ロンソーもこちらに頭を下げてくる。こう感謝ばかりされていると、なんか居た堪れない気持ちになってくるな。気恥ずかしというか……。


「あ、あの、ミリィです。あの、その、助けてもらいました」


 と、だいぶ言葉を濁しながら、そしてこちらをチラチラ見ながら話す。まぁ、しょうがないよな。まだ若い女の子が、あんな状況を赤裸々に説明できるわけも無いし。

 が、その言葉の意味を察したのか、治癒士のイザベラが


「……そう、大変だったのね」


 と言いながら、ミリィをしっかりと抱きしめる。ザインも、そしてロンソーもセイブンも察したのか、何も言わずに黙っている。

 ミリィは、最初抱きしめられた意味が分からなかったようだが、暫くすると、ぐすっ、ひっくと小さく嗚咽を漏らしながら泣き始めた。


 ……


 ……


 少しの間、ミリィの嗚咽だけが響いていたが、


「すいません、もう大丈夫です。イザベラさん、ありがとうございましたら」


 と、ミリィは少し赤い目をしながら笑顔で言った。もし、この場に男しかいなかったら、この娘は不安や恐怖をずっと内側に抱え込んでいたのかもしれないな。この場に女性がいてくれて良かった。


 そしてミリィが落ち着くと、今度は皆の視線がオレに向けられる。そうだよな、オレだけ何も言わないって訳にはいかないよな……。オレは考えていた設定を話すことにする。


「オレはヨシキだ。まぁ、怪しいのは十分承知しているんだが、ちょっと話せないことが多い。そこは了承してもらいたい」


 そういうと、皆、とくに冒険者の2人からかなり訝しげな視線が向けられる。


「わかった。俺ら冒険者でも話せないことはあったりするからな。ただ、なぜ盗賊のアジトに居たかは話してもらうぞ」


「あぁ、わかった。オレは理由があって魔霧の渓谷に向かったんだが、その時、魔力の使いすぎを警戒して荷物を近くの洞穴に隠したんだ。だが、数日後に戻ってみたら、荷物が無くなっていた。だから近くの盗賊に盗まれたかもしれないと思い、森の中を彷徨っていた。数日彷徨っていたんだが、たまたまあの遺跡の近くに来た時に女の子の悲鳴を聞いた。向かってみると、女の子が盗賊に襲われかけていた。だから助けた。まぁ、こんなところだ」


 とりあえず、用意していた設定を話し合える。怪しいところは多いだろうが、しょうがない。


「ふーん。で、その荷物の中に大切なものでも入っていたのか?」


 ザインが聞いてくる。たしかに重要なものでなかったら、数日も森で彷徨うなんて事はしないからな。


「あぁ、いくつかの魔道具と、そしてオレの身分証だ」


 そういうと、みんなは呆れた顔をしてオレを見た。


「あのねぇ、身分証は普通肌身離さず持っているものでしょう? 何をやっているの?」


 怒られてしまった。だがここに来て、頭の回転が早くなってきたようだ。次々と言い訳が頭に浮かんでくる。


「まぁ訳ありでな。ひと月以上連絡が無ければ、オレの身分証と居場所を示す魔道具を回収してもらう予定だったんだ。魔霧の渓谷の中じゃ、魔道具が上手く作動しないみたいだからな」


 そういうと、冒険者の2人は理解したようだ。実際魔霧の渓谷では、作動しない魔道具があるというのは事実だ。魔素濃度が高い影響らしい。


 これで納得してもらえればいいのだが。オレの考えた『どこかの組織の魔霧の渓谷調査員』という設定に……。


「話の内容は筋が通っているが、やっぱり怪しいぞ」


 ザインがそう言ってくる。やはり、無理があるか? すると、ミリィが擁護してくれる。


「で、でも、私を助けてくれましたし、それに、盗賊たちもたくさん殺してましたよ?」


 この世界の人にとって、盗賊を殺すというのはあまり衝撃的ではないのか。平然とたくさん殺してたと言っているし……。


「でも、そうやって相手を信用させて、内側に潜り込んでくる手口もあるのよ?」


 イザベラがそういうと、ミリィは黙ってしまった。まぁしょうがない。


「あぁ、だからオレのことは信用しなくて構わない。今回は偶然が重なってこんな感じになっているが、最初からあまり他人に関わるつもりは無かったからな」


「ですが、私は助けて貰った恩を返さないと……」


「そうじゃな、ワシも息子と孫を助けて貰った恩を返さねばならん」


 ロンソーとセイブンの親子が言ってくる。この2人はやはりお人好しだな。この2人だったら、家族が捕まった場合、すぐに身代金を払いそうだ。もしかして、だから盗賊に捕まったのかもしれない。

 まぁ、それはいいとして、恩返しと言われても何かしてもらうことはあるだろうか?今思いつくことといえば……。


「あー、じゃあ情報を貰えるか?オレはちょっと世間の事情に疎くてな。色々分からないことがあるから、教えて貰えると嬉しい」


「情報ですか? お安い御用ですよ。商人は情報が命な所もありますからね」


 オレが言うと、ロンソーは嬉しそうに返してくれた。


「それじゃあまず身分証なんだが、どうやったら、再入手出来る? 元々いた場所には、今すぐに戻れないんだが」


「それでしたら、どこかの街の住民権を獲得するか、傭兵か冒険者になってギルドカードを発行してもらうしかないですね。市民権を手に入れるのは大変ですが、傭兵や冒険者でしたら犯罪者登録されてなければなれますから」


「犯罪者登録?」


「ええ、犯罪を犯して捕まると、その人の魔力の波長が犯罪者データに登録されます。すると、あらゆる場所でそのデータを共有できるようになります。場合によっては、街に入ることを拒絶されたり、仕事がなかなか見つからなかったり、見つかっても肉体労働だけでお金や商品を扱う仕事はさせてもらえなかったり」


 これは、日本でいうところの犯罪履歴がいろんな場所で共有されるってことか。それは気をつけないとな。だが、うろ覚えだったがギルドカードが身分証になるということが確認できた。


「もし、住民権が欲しければ、ワシの所で雇っている事にして、発行してもらっても良いぞ?」


 セイブンさんがそう言ってくれるが、用が済んだら研究所に戻るつもりなので辞退させてもらう。となると、冒険者か傭兵かになるのだが、どちらがいいのか分からない。取り敢えず、メリットとデメリットを聞いてみる事にした。


 ……


 結局、冒険者の方が良いことがわかった。傭兵はデメリットが多いのだ。

 傭兵の仕事は、商業ギルド主体の盗賊の討伐や商人の護衛、警護だ。そのどれもが人数が必要な仕事で、だから傭兵は皆どこかの傭兵団に所属しているのだ。偶にフリーの傭兵もいたりするらしいが、それは傭兵団が潰れたり追い出されたりした時だけらしい。たしかに護衛や警護を1人だけに任せるようなバカはいないだろう。


 冒険者は、パーティーを組んでいるのがほとんどだが、簡単な魔物の討伐や採取系の仕事、迷宮の低階層での素材集めなど一人でやっている人もいるらしい。

 まぁ定期的に仕事をしなければ、資格が剥奪になるというデメリットもあるのだが……。


 という事で、取り敢えず冒険者に登録してみることにした。研究所に戻った後だったら、資格剥奪になっても問題はないだろう。


 そうしてオレは、冒険者から情報を集めることにしたのだった。



お読みいただきありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ