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天 落 者  作者: 吉吉
第1章 異世界転落
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救出と変化

対人戦のグロ描写があります。苦手な方はご注意を。

 静かだな……。


 そういえば、夜に魔霧の渓谷に来たのは初めてか。そんなことを思いながら、木々の上を移動していく。

 オレは今、光の魔石を求めてさまよっている。探しているのは、ライティングウッドと呼ばれる木の魔物で、普段から光を放ち、周りを明るく照らしている不思議な木だ。

 魔霧の渓谷が、夜でも薄ら明るかったのは、この木のお陰らしい。


 もっとも、近くにあったのは成長してないものばかりで、魔石も使い物にならないくらいの小さいものしか無かった。小さいうちは、地中の養分だけで成長し、成長すると光で魔物をおびき寄せ、そのまま捕食するという植物なのだが、魔物を捕食することによって魔石が大きくなるらしい。まぁ、危険も大きくなるわけだが……。


 そんなわけで、オレはより明るい方へと移動している。なるべく魔物に遭遇しないように木の上を移動していたのだが、鳥系の魔物には普通に襲われてしまった。まぁ、当然といえば当然なのだが、ハリケーンイーグルという竜巻を纏って超高速で体当たりをしてくる鳥の群れに襲われた時は危なかった。

 最初は身体強化を駆使しても防戦一方だったが、徐々にそのスピードに慣れ、なんとか全滅出来た。風系の魔石や素材が大量に手に入ったから良かったとしよう。


 そんなわけで、魔物を倒し、素材を回収しながら明るい方へと向かい、やっとたどり着いた。そこには十数体の魔物の死体と、その魔物の死体を照らしている光る大木があった。


 かなりの巨木で、5階建てのビルぐらいの高さだろうか?幹もかなり太く、全体的にずんぐりした印象の木だ。その幹自体が光を放っている。そしてその木の枝が獲物を探すようにウネウネと動いている。うん、気持ち悪い。


 確かこの木は魔力に反応すると書いてあったな……。オレはウインドボムを木に向かって放つ。と、無数の枝が伸びて来て、ウインドボムと衝突、ほとんどの枝はバラバラになったが、残った枝がウインドボムの魔力を吸収してしまった。


「遠距離攻撃は難しいか」


 しかし、近づいても大丈夫なのだろうか? そう考えていると、幹の一部が怪しく明滅し始める。良く見ると、握りこぶしぐらいのサイズの白い鉱石のようなものが高さ2mぐらいのところについていて、そこが明滅しているようだ。

 すると、ふらふらと蟻の魔物が近づいて来た。そして幹の近くまで行くと、伸びて来た枝に串刺しにされ、そのまま魔力を吸われた後は、離れた場所に投げられてしまった。


 あの光で魔物をおびき寄せているのか? しかし、オレが見てもなんともないところをみると、魔物のみに効果が有るのだろうか? まぁ、考えても分からないから、とりあえず置いといて、どうするかを考えないと。


「うーん、あのぐらいのスピードならなんとかなるか?」


 枝のスピードを見て、なんだか行けそうな気がしたので、とりあえず近づいてみる。すると枝がオレに伸びてくる。オレはそれを躱し、切り落とし、魔法で燃やす。うん、スピードは対処できないほどでは無い。しかし、数が半端じゃない。切って燃やした分だけ増えているような気がする。次第に捌ききれなくなって来て、周りを囲まれそうになる。


 オレは距離を置こうと後ろに下がるが、枝は追いかけてくる。咄嗟に気配と魔力を消して、近くの木の上に飛び乗る。やはり魔力に反応しているのか、枝は目標を見失ったようにさまよった後、戻っていった。


「やっぱり厳しいか」


 ただ、魔力を感知してるのは本当そうだな。そして、目標となる魔石はさっき光っていた部分だろう……。とりあえず、手の届くところに魔石があって良かった。幹の中心や木の上の方だったら、無理だった。おそらく、魔物をおびき寄せるために、あのような位置にあるのだろう。


 オレは身体強化の魔法を使い、そのまま魔力を隠す魔法を使う。こうすることで、魔力を使いながら感知されないことも可能なはずだ。そうしてから、ゆっくりと近づいていく。うん、大丈夫だ。そして、魔石の前まで行くと、一瞬で魔石の部分を円錐状に切り取り、魔石を取る。


「ふぅ、上手くいったか」


 まぁ、そんなに戦ってないけど、緊張感があったせいか少し疲れた。オレは、魔法を解除する。


 と、一斉に枝が襲ってくる。


「なっ!」


 慌てて回避、距離を取りまた魔力と気配を消す。


「馬鹿な、魔石を取り外したのに、まだ動けるのか?」


 確か魔物は、魔石を取られれば動けなくなるはず……。もしかして植物の魔物だから、違うのか?


 手の中の魔石を見る。たしかに魔石だ。木の方を見る。すると、オレが切り取った穴に魔力が集まっている。魔力の流れを見ると、地中から流れて来ているようだ。よく魔力を見てみると、どうやら地面の下に大きな魔力の塊がある。おそらくそこが本体の魔石なのだろう。そして、しばらくするとオレが切り取った穴に新しい魔石が出来上がった。


「もしかして、無限に取れるのか?」


 光の魔石は手に入り辛いらしいので、もし無限に手に入るのならラッキーだ。オレは先ほどと同じように、魔力を隠して近づき、魔石を切り取っては退避するということを繰り返した。


 結果、10個程取ったところで、地下の魔石の魔力が半減していることに気づき、断念した。まあ、10個も手に入ったからいいか。もしかしたら、この木の魔力が回復したら、また取れるかもしれない。


 とりあえず、光の魔石はこれでいい。あとは、周りの魔物の死体だ。近くにある魔物の死体を確認すると、体液を全て吸い取られているようだ。しかし、新鮮なものは肉も無事食べられそうだし、そうでなくても皮や牙、骨などの素材は使えそうだ。

 そして、魔石も無事。魔力を吸収するので、魔石は残ってないと思ったが、魔石は個体だから吸収出来なかったのだろうか?せっかくだから、周りの魔物も回収していこう。嬉しいことに、ここには様々な属性の魔物がいるようだ。オレは十数体の魔物を回収して、嬉々として帰還した。



 それにしても、魔法庫の容量もかなり増えたな。いまはかなりの量の魔物と素材のストックがある。魔力の量によって容量が増えると本には書いてあったが、この渓谷の環境に慣れたあたりからかなり増えてきて、今ではどのくらい入るのかわからないくらいになってしまった。まあ、食料の買い出しには便利なので、困ることはないが……。



 それから10日ほど、オレは引きこもっていた。理由は、魔道具の製作に熱中し過ぎてしまったことと、魔物の肉が大量に手に入ったので、狩りに出かけなくても良くなったからだ。魔法庫の中では時は進まないから便利だ。


 そして、この研究所の上層には、魔法の知識や技術をまとめた書庫がいくつかあることに気がついたので、その書庫に入り浸っていたのもある。この研究所は、上の階ほど簡単な知識や技術になっており、下の階へ行くほど難しくなっていくようだ。だから地下に発表出来ないような研究があったわけだ。


 とりあえず、最初は簡単な魔道具を作るところから始めて、気分転換に書庫で本を読む。食事をしてまた魔道具を作り、本を読む。と言った充実した引きこもり生活を送っていた。


 面白かったのは、オレが使っている『魔法庫』の劣化版の魔法があると知ったことだ。普通はこっちが一般的みたいで、名前を『魔力倉庫』もしくは『魔力庫』という。

 効果は似ているが、違うのは時間の経過があるということ。つまり、食品の保存には向かないのだ。


 また、魔法庫は最大魔力によって容量が変わるが、魔力庫は現在魔力によって容量が変わるという。つまり、魔力を使いすぎると容量が低下し、仕舞ったものの容量を魔力が下回ると、仕舞ったものが出てきてしまうのだとか。魔法庫はそのような事は無いみたいだ。


 だが、魔法庫より使える人が多く、商人や荷物を運ぶ専門の仕事をしている人は魔力を使いすぎる事は少ない為、結構人気がある魔法らしい。

 また、同じ魔力だと魔法庫より魔力庫の方が入る容量が多いそうだ。オレが大容量の魔法庫を使えることは黙っていた方が良いかもしれないので、魔力庫と偽るのもアリかもしれないな。


 他にも上層の書庫には、一般的な魔道具の作り方の本もあったので、それらも作ってみる。年をとってからは全くやっていなかったのだが、昔はプラモとか日曜大工とか、工作系が好きでしょっちゅう作っていた。だからか、やり始めたらなかなか止まらない。


 素材は魔石と、それと同じ属性の骨や牙など、とりあえず手に入りやすいもので作ってみた。あまり研究所内の素材を使いすぎると、いざ必要となった時に足りないとかありそうだからな。


 それにしても、土属性の魔法は面白かった。この属性は個体を動かすことができるのだが、骨や牙、さらには魔石も変形させることが出来た。流石に2つのものを融合させるということは出来なかったが、分割や変形をさせられることで、かなり自由な形を作ることができた。本当は魔力をかなり消費するらしいが、オレはかなり魔力が増えているようで、苦にならなかった。


 山田さんの研究によると、高濃度の魔素環境に居ることによって、魔力容量が劇的に増えていくらしい。それと、上層の本には効率的な魔力容量を上げる訓練も書いてあったので、とりあえず覚えておく。というか、最近本を読むスピードがかなり早くなったとともに、本の内容を覚えること、そして思い出すこともかなり確実に出来るようになっていた。スキルに『速読』とか『記憶術』とかがあるのだったら間違いなく取得しているだろう。


 そんなわけで、10日ほどの間に光と闇の魔道具も完成し、研究所の本も全て読んでしまった。


 光と闇の魔道具は、陰陽師の太極図のように勾玉型で2つで1つの丸を作るように製作した。闇属性の魔石で、こちらの魔力を少なく見せ、気配を抑える。光属性の魔石で、見た目を茶髪茶眼に見せ、顔の印象があまり残らないようにする。


 そして、強く魔力を込めることによって、魔力と気配を消し、周りの景色と同化するという効果も付けた。これで、盗賊とかに見つかり辛くなるだろう。

 ちなみにこの魔道具だけは、倉庫にあったミスリルを使わせて貰った。


 あとは実際に使えるか試してみないと。いざ使ってみて効果がありませんでした、では危険だからな。丁度夜だったので、オレは光の魔石の補充も兼ねて、久しぶりに夜の渓谷へ繰り出した。



 結果、魔物には気づかれづらくなっていて、強く魔力を込めると魔物はオレのことを見つけられなかった。不意打ちも成功したので、効果は十分だ。


 光の魔石は、魔力があまり回復していなかったので、5個しか回収しなかったが、光属性の木はもしかしたら使えるかもしれないと思い、太めの枝を10本ほど貰ってきた。


 そして、周りに魔物の死体がいくつかあったので、回収した。一番大きかったのが、ストーンワームと呼ばれる魔物で直径1.5メートル、長さ10メートルもあった。魔石も人の頭ぐらいあり、これでまたいろんなものを作れそうだ。


 研究所へ帰還したオレは今後のことを考える。魔道具は出来たが、今すぐに王都へ向かっても良いのだろうか?

 そういえば、身分証が無いので王都には入れない筈だ。侵入するという手もあるが、あまり犯罪行為はしたく無いし、国王様にも迷惑がかかるかもしれない。


 ……確かそんなに大きくない街だと、通行税を払うだけで街に入れた筈だ。そこでなんとか身分証を作れれば、王都にも入れるか。


 えーと、前に見た本の内容を思い出す。多分スキルのお陰だろうが、前に見たものを思い出す事もかなり容易になっている、有り難い。

 確か、冒険者や傭兵になればギルドカードが貰えて、それがあれば身分証の代わりになるんだったか。今のところ思い付く方法はそれだけか……。


 とりあえず、その方向で行動してみよう。最悪、あまりやりたくは無いが王都に侵入という手も残っているし、いざとなったらまたここに戻って来れば良いわけだし。

 とりあえず、冒険者や傭兵みたいに戦いに慣れて、それから、服装や装備もそう見えるものを用意した方がいいな。


 そう思い、オレは明日から準備をすることにした。しかし、その時はすっかり忘れていたのだ。この魔霧の渓谷の魔物は、地上の魔物に比べて遥かに強いということを…………。



 ◻︎ ◻︎ ◻︎ ◻︎ ◻︎ ◻︎ ◻︎ ◻︎


 この場所に来てから、およそ一ヶ月が過ぎた。オレは準備としてさまざまなものを作った。アリクイの魔物の皮が今のところ一番丈夫でよく伸びるようなので、倒して戦闘用の服を作った。


 蟻の魔物より硬い魔虫がいたので倒して防具を作ってみた。この魔虫は刃が通らなかったので、落とし穴に落として、火魔法で倒した。ちなみに作ったのは、胸当てと籠手、靴もアリクイの魔物の皮と合わせて作ってみた。


 武器は、あの蟻の魔物の顎が軽くて硬くて使いやすそうなので、刃渡り20〜30cmぐらいのナイフを複数作っておく。念のため、シャドーウルフの牙でも闇属性のナイフを4本作ってある。


 他にも、それぞれの属性の魔法を込めた魔道具も作ってみた。魔力を込めるだけで、その魔法が発動するというシンプルなものだ。それを色々な魔法を込めて作った。形は使いやすいように指輪型か腕輪型だ。

 作ったら、実際に使えるか試してみて、改良点があれば改良する。そんな日本に居た頃には考えられないほど、充実した生活を送っていた。


 山田さんの手紙に書いてあったが、たしかにここは地球より自由に生きられそうだ。それも、この場所を山田さんが用意してくれたからだ。本当にありがとう、山田さん。

 オレは何度目かわからない感謝を山田さんにした。


 さて、そろそろ食事にして、その後はまた調味料を調達してこようか。あれから一月経ったので、調味料がかなり少なくなっている。そういえば、最近は魔道具作りが楽しすぎて、盗賊の様子を見ていなかったな……。多分大丈夫だと思うが。


 調味料の調達ついでに、オレは盗賊の様子を見に行ってみることにした。ついでに、魔道具の効果も人間にあるかどうかも確認できたらしてみよう。


 管理室で様子を確認すると、食料庫には人は居ない。そして、外の様子を見てみると、馬車がこちらに向かって来ているようで、盗賊たちは皆外にいるようだ。丁度良かったので、オレは転移室から食料庫へと転移する。


「ん?」


 違和感がある。前よりも遠くの盗賊の気配が感じられるし、気配もハッキリしている。オレがレベルアップしているのか、魔素が薄くて遮るものがないからなのか。


 取り敢えず、調味料を調達して、周りの気配を感じてみる。どうやら、遺跡の前の広場に集まっているようだーー様子を見てみるか。


 魔道具に魔力を込めて入口へと向かう。すると、


「イヤァァァーーー!」


 若い女の悲鳴が聞こえる。慌てて入り口から様子を見ると、


「エリーゼ姫?」


 いや、年や恰好は似ているが違う。一瞬見間違えてしまったが、14歳ぐらいの女の子が盗賊たちに囲まれてにじり寄られている。


「娘には手を出すなぁ!」


 声がした方をみてみると、30代の男が盗賊に腕を掴まれながら、必死の形相で叫んでいる。口から血を流しているところをみると殴られたのだろうか?


「ホントにいいんですか、ボス?」


 下卑た笑いを浮かべながら、盗賊の1人が言う。


「ああ、必要なのは父親の方だ。娘は好きにしろ」


 ドクンッ


 心臓の鼓動が一際強く跳ねる。


 見ると盗賊のボスと、その隣に……、


「ガンボ…………」


 さらに鼓動が跳ねる。


「俺はこっちを楽しませてもらうかな?」


 ボスは父親の近くに行くと、その尻を撫でる。


「ヒイッ!」


 父親は硬直する。ガンボは興味がないのか、仁王立したまま動かない。

 娘の方は泣きながら

「イヤ、イヤ……」

 と呟いている。


 ……


 ……


 どうする? 見捨てるか? それとも助ける?


 頭に昔の記憶が蘇る。

 小学生の頃、虐められてる子を助けて、逆に自分がリンチを受けた記憶だ。今回も助けたら、オレが襲われる事になるんだよな。


 魔物と戦う時よりも、嫌悪感が心の中から溢れてくる。それと同時に、嫌な思い出が頭の中をよぎる。


 今までいろんな人にイジメや差別を受けて来た。人生が上手く行かなかった。だからオレは自殺をした。


 それでも死なずに、この世界に来て、それでもう一度やり直してみようと思った。でも結局、大臣に言い寄られ、盗賊に襲われ、馬車に置いていかれ、落とし穴に落ちた。


 結局、オレは普通に生きることができないことを悟って、だから、大人しく引きこもろうとしていたのに……。


 なのに、なんで……なんで!


 なんで、どいつもこいつもオレの邪魔をする!?


 なぜ、普通に生活できない!?


 なぜ、大人しく生きることも出来ない!?


 結局見捨てても、後悔するだけじゃないか!


 段々と怒りが込み上げてくる。嫌悪感やストレスがどんどん怒りへと変わっていく。これが運命っていうやつなのか?宿命とかいうものなのか?


 だったら、だったら!


「運命も宿命も、邪魔するものは全部ブチ壊してやる!」


 オレは身体強化の魔法にありったけの魔力を込め、少女の隣に移動すると、少女を抱えて遺跡の上に飛び乗った。


「な……」


 ……


 ……


 ……


「な、何者だ!」


 なんだ、反応が遅いな。バカにした感情が出てくる。腹の中は怒りでかなり熱い。まぁ取り敢えず、ここにいれば女の子は大丈夫だろう。あとは、オレがコイツらを、人を斬れば良いだけだ。


 つーか、よく考えたらこいつらは人間って呼んでもいいのか疑問が出るな。平気で人を斬れるし、集団で女の子を襲おうとするし、欲望のまま行動するなんてほとんど動物と一緒じゃないか?


「お前ら!侵入者だ、やっちまえ!」


 やっとボスの声がかかる。どうせ、やらなきゃやられるわけだし、八つ当たりついでに遠慮なく行くかーー。オレは蟻の顎から作ったナイフを両手に装備する。そして、遺跡から飛び降り、盗賊を迎え撃つ。が、


(遅い? そして弱い!)


 対人戦が初めてだから少し気構えていたが、魔霧の渓谷の魔物に比べて遥かに弱い。スピードもハリケーンイーグルに比べると雲泥の差があるし、数がいてもライティングウッドの枝の攻撃のほうが遥かにやり辛い。これは、魔法を使う必要はねぇな。


 オレは次々と盗賊の首を()ねていく。首を狙ってしまうのは、魔物との戦いの癖だな。あっという間に、盗賊たちの数は半減した。と、


「お前、強えな!」


 ここでガンボが、滅茶苦茶嬉しそうな顔でいきなり乱入してきた。確か、強いやつと戦うのが好きだったんだっけ? たが、わざわざコイツに合わせてやる必要はねぇ。オレは一瞬で間合いを詰め、魔力を込めた蹴りをガンボの腹に放つ。


「ガッ……」


 強すぎたか……。ガンボは後ろで武器を構えていたボスにぶつかり、そのまま一緒に10m以上吹き飛んだ。その隙に後ろから盗賊が攻撃してきたが、気配で丸わかりなので難なく躱し、首を()ねる。


 と、魔力の変化が起きたのでその方向を見ると、魔道士が魔法を放とうとしている。しかも、女の子を狙っているのか? オレは遺跡の上に移動する。と同時に魔法を放ってくる。ファイアアローか。でも遅いな。

 オレは武器をシャドーウルフの牙から作ったナイフに変えて、魔法を斬る。魔法はナイフに吸収されて消える。ライティングウッドがやっていたことを、闇属性の吸収の効果を使って再現してみたのだが、上手くいったようだ。まぁ、ファイアアローぐらいなら食らってもほとんどダメージはないだろうが……。


 魔道士はかなり驚いた顔をしていたが、それでも懲りずに魔法を放ってくる。そしてほかの魔道士や盗賊たちも魔法を放ってくる。どうやら、勝てないと見て撤退する為に時間稼ぎしているようだ。

 全滅させてもいいが、女の子と父親がいるから、あまり深追いはしない方が良いな。そういえば、父親はどうした? オレは飛んでくる魔法を捌きながら、辺りを見渡す。どうやら遺跡の陰で頭を抱えてうずくまっているようだ。連れ去られてないなら良い。


 暫く魔法が飛んできていたが、それが収まると辺りから盗賊たちがいなくなっていた。気配を探してみると、かなり急いで移動しているようだ。ガンボとボスは馬車にでも乗せたのだろう。気絶していたっぽいからな。


 こうして、オレの初の対人戦は終了した。後に残ったのは、盗賊の死体と捕まっていた父娘だけだ。




 …………さて、どうしようか。





お読みいただきありがとうございます。

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