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天 落 者  作者: 吉吉
第1章 異世界転落
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勧誘と観察

「ふぅーむ……」


「どうした?ソロンの旦那、難しい顔をして。なんか失敗でもしたのか?」


「いえガンボ、そういうわけでは無いのですか……」


 私は訓練場で傭兵たちの訓練を見ながら考え込んでしまっていたようだ。


(ヨシキ様が天落者だという事はなるべく口外したくない。本人がそれを望まず、普通に生活する事を望んでいるから。だが、しかし、天落者である以上何か力を持っているはず。それを知りたいし、可能なら私の配下……いや、仲間として迎え入れたい……)


「……ガンボ、この前見学に連れてきた男の人を覚えてますか?」


「あ?あぁ、あの頼りなさげな……確か料理人だったっけ?あの男がどうしたんだ?」


「実はあの人を私の仲間に加えたいと思っていまして」


「はぁ?正気か?あんな男を仲間になんてなに考えてんだ、旦那?」


「いえ、ちょっと理由がありましてね……」


「なんだ、それは?もしかして俺にも言えねぇ事なのか?」


(うーん、あまり広めてヨシキ様に嫌われるのは避けなければならない。しかし、ガンボに嘘をつくのも心苦しい……)


 私は考えた末、ガンボにだけ打ち明けることにした。


「実は……」





「マジか!!へぇ〜、あの男がねぇ……」


「くれぐれも他言無用でお願いしますよ。嫌われたりしたら、大変なんですから」


「わかってるよ、旦那。しかし、あの男が伝説の天落者ねぇ。どう見ても戦闘向きな感じじゃないだろ。だとしたら生産系のスキルを持ってるんじゃないのか?」


「それが分からないんですよ。調べたところ『適応能力』って言うスキルを持っていたんですが、それが何に適応する能力なのかが分からないんです」


「ふーん、じゃあそいつの情報を集めるしかねぇな。そいつが何を一番上手くできるか、それがわかれば能力もわかるかもしれねぇからな」


 ガンボの言うことには一理ある。確かに何も知らずに手をこまねいているより、まずどんな能力か知ることが先決ですね。


「そうですねぇ、それであの人の能力を生かせる環境を整えて誘ってみれば、こちらに来てもらえるかもしれませんからね」


 そういえば、相手の望んでいるものを提供するのが商売の基本でしたね。こんな大切な事を忘れるとは、少し舞い上がり過ぎていたでしょうか?


「で、あいつは普段何をしてるんだ?」


「そうですね、王宮にいるときは調理場にいるか、図書館で本を読んでいるか、ですね。少し前までは魔法の練習もしていたみたいですが、今は町の外に出て魔法の練習をしているみたいです」


「ほぉ……」


 珍しくガンボが嬉しそうな顔をしていますね。


「んじゃ、王宮の中の情報はソロンの旦那に任せるぜ。俺はザールに言って、町の外での魔法の練習を監視させておく」


「え?ええ、良いですけど、珍しくやけに乗り気ですね?」


「当たり前だ。魔法の練習をしてるって事は、魔法職の可能性もある訳だろ?もし、スゲェ魔法とか使えるようになったら戦ってみてぇじゃねぇか」


 相変わらず、強い人と戦うのが好きな人だ。昔から変わっていない。


「あまり無茶しないでくださいよ」


「分かってるよ。あくまで魔法職でスゲェ魔法が使えたらの話だ」


 私はガンボと別れ、訓練場を後にした。


 取り敢えず、当面のやる事は決まりましたね。配下に言って、もっと情報を集めなければ……。



 ◽︎ ◽︎ ◽︎ ◽︎ ◽︎ ◽︎ ◽︎ ◽︎


「ふぅ、やっぱりめんどくさい事になったなぁ……」


 私は木の枝に腰掛けながらため息を吐いた。


 今いる場所は、大臣とガンボが話をしていた場所から100mほど離れた木の上だ。何か大臣が良からぬ事を考えてそうだったので、森の探索で手に入れた能力をフル活用して観察していたのだが、思った通りに面倒くさい内容だった。


 しかし、


「嫌われたりしたら大変って、まだ嫌われてないと思っていたのか……」


 しつこい上に下心見え見えで近づいて来たら、普通に嫌われると思うんだが……。


 とにかく、明日からはしばらく色々自粛しなければ。攻撃魔法も基礎魔法の練習だけにして、料理も新しいものを控えていこう。


 それにしても……


「今の能力だけを見ると、まるで暗殺者かスパイだなぁ」


 私は、自分の手に入れた能力に少し戸惑うのだった。



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