戦闘と成長
今回も戦闘とグロいシーンがあります。
「まあ、こんなもんじゃろ」
三つ目のゴブリンの群れを討伐した後、国王様は満足そうにそう呟いた。新入団員たちは嬉しそうな顔で、国王様に頭を下げている。
私もゴブリン相手なら普通に勝てるようになったので、文句はない。あまりにも早く適応できた事に少し不安もあるが、この世界で生きていくには必要なことだから仕方がない。そう割り切っている。
「ゴブリンは埋めておくだけで良いんですね?」
私は国王様に確認する。
「うむ、埋めておくだけで問題はないぞ」
私は土魔法で穴をあけ、そこにゴブリンの死体を入れていく。この世界では、土の中に埋めておくと1週間ほどで分解されて消えてしまうらしい。それは、魔物の死体でも生ゴミでも同様らしい。
ちなみに1回目と2回目の群れの時は、私が生き物の死体に慣れていなかったせいか、他の人がいつのまにか処理してくれていた。
全てのゴブリンを埋め終わると、エルさんが小さい皮袋を渡してくれた。
「これがヨシキ様の分の魔石になります」
「ありがとうございます」
皮袋を開けてみると、小指の爪ぐらいの大きさの魔石が十数個入っていた。
ゴブリンの魔石は小さすぎてそれ単体では使えないが、砕いて粉にすることによって色々使えるらしい。まぁ一個銅貨一枚にしかならないらしいが、初めて魔物を倒した記念に取っておこうと思う。
そして、私たちはお城へと帰ることにしたのだが……。
「……やはりこちらに向かって来てるみたいですね」
「そうか、どこかで迎え撃った方がいいかもしれんの」
先程察知した強めの気配が、何故かこちらに向かって来ているのだ。
「血の匂いに引かれているのか、もしくは別の方法で我らを把握しているのか……。どちらにしてもこちらに向かって来ている以上、倒さねばなりませんね、父上」
王子も倒す気満々である。一度城に戻って新入団員ではない騎士たちを呼んだ方がいいのでは?と思ったりもしたが、相手が一体なのと私の感覚で強めの気配なので、どのくらいの強いのかわからないので黙っていた。
そして、最初のゴブリンの群れと闘った場所で迎え撃つことになった。
「……オーガか、ちょっと厄介じゃの」
森の奥から向かって来ているのは、3mはありそうな巨大なオーガだった。
「はぐれですかね?父上」
「おそらく」
「はぐれといのは?」
私はわからないので聞いてみる。
「はぐれというのは、文字通り群れからはぐれた魔物でな。気性が荒すぎたり仲間意識がなかったりで群れで生活できなくなった魔物のことじゃ。大体普通よりも大きく強いことが多いの」
「なるほど……って、もしかしてマズイんですか?」
「微妙じゃのぉ。迎え撃てんこともないが、新入団員達には荷が重いかもしれんのぉ」
見ると新入団員達は少しふるえているようだ。普通の騎士達だと二人で1匹を迎え撃つようにしてるらしいが、はぐれだと3〜4人で対応するぐらいだろうか。確かに新入団員達では厳しいかもしれない。
はぐれオーガは、私たちに向かってゆっくり歩いて来て、そして
「ウガアアアァァァァ!!」
雄叫びをあげた。
「ヒィッ!」
「む、イカン!」
新入団員達はいまの雄叫びで震え上がってしまっている。
「「ウインドランス」」
国王様と王子の魔法が同時に放たれるが、オーガは多少よろめいたぐらいで構わずこちらに向かって来ている。そして、震えている新入団員に向かって拳を振り上げ、
「ウオーターバレット」
エルさんの魔法が顔面にぶつかる。流石にこれは効果があり、とっさに目をつぶったオーガの攻撃は新入団員から大きく逸れる。
「一旦さがれ!」
王子の声に、新入団員達は距離を取る。そこに、何故か剣を持って国王様と王子が突っ込んでくる。
いや、本来守るべき王と王子に守られるって、新入団員達は立場がないのでは?。
そんなことを考えているうちに、国王様と王子は攻撃を加えては離脱するというヒットアンドアウェイを繰り返し始めた。が、オーガの皮膚が硬すぎるのか、なかなか有効打を与えられないようだ。
しかし、私は何故かオーガをそこまで怖く感じなかった。普通、剣や魔法が効かない相手ならもっと恐怖を感じても良いはずなんだが……。
「ああ、そうか」
「どうしました?ヨシキ様」
「あ、いえ、なんでもないです」
独り言のつもりだったが、エリーゼ姫に聞かれてしまった。それはともかく、オーガの動きをよく見ると、あの傭兵のガンボより弱いのか。まぁ、あの人ならオーガくらい一人で倒せそうだもんな。それに、ガンボの動きはギリギリ目で追える速さだっだが、オーガの動きは余裕で目で追えるスピードだ。
そう考えたら私が戦えないわけではないと分かった。まぁ、戦うといっても魔法での援護になるわけだが。肉弾戦ではついていくのはまだ厳しいだろう。新入団員達は戦うのは無理そうなので、エリーゼ姫とエルさんについてもらう。
「ヨシキ様、大丈夫なのですか?」
「ええ、遠くから魔法で援護するだけですから」
エルさんにそう説明して、向かって左側へ回り込む。あのオーガは右腕の攻撃が強いみたいで、大振りの攻撃は全て右腕で行なっている。なので、オーガが右腕を振り上げ、拳を叩きつけた瞬間に、
「マッドバレット」
泥の弾丸が顔面にへばりつく。
「ウガァッ!」
視界が塞がれ、オーガの動きが止まる。その隙に王子が首へと斬撃を繰り出す。が、半ばまで剣が食い込んだが、切り落とすまでにはいかなかった。
首を半ばまで切られたのでおそらく致命傷だろう。しかし、だからなのかオーガは見境なく暴れ出した。視界が塞がれているのもあるのだろうが、攻撃がデタラメになった分、近づくのが困難になっている。
なのでとりあえず私は、オーガの首を狙ってウインドランスを放つ。そして丁度首の切り口に炸裂したウインドランスは、オーガの首を千切り絶命させた。
「ふぅ、なんとか戦えたか」
私がなんとか戦えて安心していると、
「お主はとんでもないな」
と国王様に言われてしまった。
「あんなに暴れているオーガの首に、一発で魔法を当てるとは、なかなか出来る事ではないぞ」
「いや、運が良かっただけですよ」
私はそう返した。
そして無事城へと帰還したが、守るべき王と王子に守られた新入団員達はかなりヘコんでいるようだった。




